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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワードで理解するイノベーション・マネジメント(9) ドミナント・デザイン (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワードで理解するイノベーション・マネジメント(9) ドミナント・デザイン

永田晃也 技術経営、科学技術政策

15/12/22

 今回は、「ドミナント・デザイン」という語を取り上げます。「ドミナント」は「支配的」と訳されますから、この語は「支配的デザイン」と書かれることもあります。要するに、市場に支配的な影響力を持ち、固定化、標準化されたデザインのことを言っています。デザインという語は、ここでは製品の基本設計を意味しています。

 ドミナント・デザインという語が、イノベーションを理解する上で重要なキーワードとなるのは、その成立の前後で、イノベーションの性質が大きく異なることが明らかにされてきたからです。
 ウィリアム・アバナシーとジェームズ・アタ−バックという2人の研究者は、1978年に発表した論文の中で、産業が流動期、移行期、固定期という3つの段階を経て変化していくことを示しました。
 流動期というのは、産業発展の初期段階で、製品のコンセプトも定まっておらず、多様な製品が市場に投入され、競合している時期です。この段階では、プロダクト・イノベーションが活発に行われます。
 やがて、多様な製品の中から、1つの製品がドミナント・デザインとしての地位を獲得すると、確立された製品コンセプトの上で、製品の機能・性能を向上させることが重要になります。また、製品の普及が急速に進展する時期に当たるため、企業の戦略的な焦点はプロダクト・イノベーションからプロセス・イノベーションに移っていきます。これが移行期です。
 さらに、プロセス技術が確立し、プロセス・イノベーションの発生頻度も減少していくと、プロダクトとプロセスの関係が安定する固定期を迎えます。この時期は大規模な設備投資が行われ、生産性は向上しますが、画期的なイノベーションは発生しなくなります。
 アバナシーは、この現象を「生産性のジレンマ」と呼びました。これが、ジレンマと呼ばれるのは、ドミナント・デザインの成立前後を通じて、生産性の向上とイノベーションの創出を同時追求することが困難な状況にあるからです。

 アバナシーらは、多くの製品分野に関する事例研究を行い、この現象を記述しています。例えば、自動車については、ガソリン・エンジン、エンジン前置きなどの技術的な仕様を採用した基本設計がドミナント・デザインとなり、移行期には移動式組立ラインによる大量生産方式というプロセス・イノベーションが導入されました。
 こうした研究をアバナシーらが行った当時、米国の自動車産業は成熟した固定期にあり、イノベーションが生まれにくい状況にありました。アバナシーらは、この状況を打開する脱成熟は、製品のサブ・システムのレベルでの革新によって可能になることを示唆しましたが、そのような脱成熟を後に成し遂げたのは、日本の自動車メーカーだったのです。

今回のまとめ: ドミナント・デザインとは、市場に支配的な影響力を持つ製品の基本設計を言い、その成立前後では、イノベーションの性質が大きく異なります。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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