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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 仮説ドリブンが武器になる(2) (経営戦略、イノベーション、サービス経営/山口英彦)

仮説ドリブンが武器になる(2)

山口英彦 経営戦略、イノベーション、サービス経営

15/11/20


前回は仮説ドリブンとは何かについてお話しました。今回は、良い仮説とはどういう仮説か。どうやったら筋のいい仮説が思い浮かぶかをお話します。

大学院の学生と戦略の議論をしていると、頻繁に「私の仮説では・・」という発言を耳にします。しかし、我々が日常的に使う「仮説」は、多くの場合はただ「私はこう思う」というのを仮説という言葉に置き換えただけで、残念ながら戦略立案に使える代物ではありません。

優れた仮説とは何か。3つ条件があります。

1つめの条件は、明確な根拠があることです。まだ実証作業の前の仮説ですから、証明できていなくて問題ありません。ただ「どうしてそう思ったのか?」と問われた時に、即座に根拠を言えるくらいの確度がないと、いざデータを集めてみた時に外れるリスクも大きくなります。以前実際に使っている人と話をしていたら、こういう発言があって、だとすると他の消費者は同様に考えているだろうと思った・・という風に、自分が仮説を思い浮かべる根拠となった情報が重要です。根拠となるリアルな情報がないままに自分の頭の中だけで組み立てた仮説は、外れているか、当たっていても価値が乏しい確率が高いです。

2つめの条件は、ちゃんと検証ができ、結果を表現できることです。例えば「保守的な組織文化がイノベーションの妨げになっている」という仮説は、具体化ができておらず、検証や資料での表現が極めて難しい仮説です。何を持って「保守的な文化」とみなすのか、保守性とイノベーションの阻害の因果関係をどうやって確認するのか、またそれをグラフや図でどう描写するのか、難しいことだらけです。
逆に言うと、良い仮説というのは、仮に正しいことが確認できたら、どんなグラフや図で表現するかまでイメージできている必要があります。さらに言うと、作るグラフや図がわかっていれば、どういうデータを集めれば検証できるのかも見えているということです。従って、仮説が思い浮かんでいる人は、余計な情報収集に時間を使うことがありません。

最後の条件は、経営判断にとって価値があるか、です。
これには2つの観点があって、まず1つは意思決定を下すのに不可欠な問いに答えているか、です。例えば、経営陣が新製品開発に投資すべきか否かを判断したい時に、「製品開発部門の従業員満足度は高いかどうか」は答える必要のない問いです。戦略立案をしている人が製品開発の現場をインタビューしていると、ついそういった問題意識を持ってしまうことがありますが、仮に満足度が低いとしても、製品開発を進めるべきか否かには直接関係しませんし、必要ならば製品開発を進める意思決定をした後に、対策を考えればよいことです。
仮説が経営判断にとって価値があるか否かのもう1つの観点は、斬新さです。さきほどの「新製品開発に投資すべきか」を判断する例だと、例えば「既存製品は競合ブランドとの価格競争に陥っている」という仮説を証明しても、それが多くの人が既に実感しているのであれば、経営判断にとって価値はほとんどありません。これが仮に「販促方法の工夫次第で価格競争を回避できている」と、関係者の認識を覆す主張であったり、あるいは「既存製品では満たされていない潜在需要が100億円は見込める」と、関係者のぼんやりした認識をはっきり数字で示した主張であったりすれば、斬新性があるわけです。

以上が、優れた仮説の3つの条件ですが、それではどうしたら筋のいい仮説を思いつけるのでしょうか。
幾つかコツはあるのですが、私が一番重要だと思っているのは「気持ち悪さ」を看過しない習慣です。「気持ち悪い」という表現は良い意味でして、「従来思い描いていたロジックでは説明がつかない。何か別のロジックが働いているのではないか」と直感することを意味します。
例えばメーカーの売上データをまとめていると、一部のエリアだけ、ある商品の売上が急に伸びているのがわかったとしましょう。「へえ、この秋の商戦、頑張っているな」という感想で終わってしまってはダメ。重要なのは、その商品だけが急に伸びていることと、一部のエリアだけが伸びている点を「気持ち悪い」と感じて、もう少し掘ってみようと思えるか。
あるいは顧客や取引先に話を聞きに行ったときに、想定したことと違う反応が出てくることがあります。その時に「この人は特殊な考えの人だ」とみなしてスルーせずに、「あれ、今の話は何か気持ち悪いな」と認識して、背景を探りに行けることが重要です。
気持ち悪さを感じたら、机の上で考え込まずに、誰かと話してみるのがいいでしょう。日頃からアイデア出しに付き合ってくれる人がいれば、その人とディスカッションしてみるのがいいですし、現場に近い人にインタビューに出かけるのもお薦めです。話しているうちに自分の頭が整理されて仮説が進化したり、話し相手から新しいヒントをもらえたりして、とてもすっきりします。そういう経験を何度か経ると、もはや「気持ち悪さ」を看過できない、そしてそれを解消した時に知的な興奮が楽しみで仕方なくなります。そんな姿を目指してみましょう。

分野: 経営戦略 |スピーカー: 山口英彦

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