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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 企業の海外事業課税に係る問題(日本編) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

企業の海外事業課税に係る問題(日本編)

平松拓 企業財務管理、国際金融

15/10/08

前回、アメリカでは企業が高率の法人税を回避すべく、海外関係会社への所得移転や低税率国企業の買収を通じて本拠地の移転を行っており、またその結果、海外に巨額の資金が滞留して母国(アメリカ)で活用されないことが問題になっているという話をしました。

法人税率が30%台とアメリカ同様に先進国の中で相対的に高い日本でも、企業が低税率国に関連会社を設立したり、海外企業の買収を行う動きが盛んになっています。その点ではアメリカと同様の問題が提起されても不思議はないといえますが、実際のところはどうでしょう?

まず、一般的な見方として、米企業は発想が合理的で、税金を一つの「費用」として割り切って考える傾向があるのに対して、日本企業はそこまで合理的には考えておらず、譬えループ・ホール(隙間)があった場合でもそれ程積極的に利用しない、という見方があります。これがどこまで妥当するかは別として、これまでの日本の有名企業については、巨額の利益を上げながら国内ではほとんど法人税を納めていなかったアメリカのGEやグーグルのような極端な事例は聞いたことがありません。

しかしながら、日本企業においても国際税務戦略の重要性についての認識は強まる一方で、実際に日本の税務当局の発言や文章からは、租税回避の事例が増加していることについて相当強い問題意識が感じられます。また、租税回避が目的ではないとしても、日本企業が広く海外事業を行っている限り海外で所得が発生する訳で、それを配当の形で日本に還流させなければ海外に滞留してしまいます。実際に、2008年の段階ですが、日本企業が海外に留保している利益の総額は12兆円に及ぶという報告もあります。こうした点では、程度の違いはあれ日本もアメリカ同様に、企業の海外活動に関連した税制上の対応という問題に直面している訳です。

以前採り上げたことですが、最近の安部政権が法人税改革に取組み、実際に税率の引き下げを行っているのは、こうした対応の一環として考えることができます。その点でアメリカに一歩先んじていると考えることができますが、さらに、関係会社に滞留する海外所得を国内に配当として還流させる際の税制上の対応についても、アメリカに先んじている面があります。この点についてやや技術的になりますが、以下に基本的な説明をいたします。

まず、法人税の国際的な所得に対する課税の考え方には「居住地主義」と「源泉地主義」の2つがあります。前者は「海外に展開する自国企業の所得は国内で発生しようが海外で発生しようが母国政府が課税(全世界所得課税)する」という立場で、後者は「企業の国籍に拘わらず所得の源泉地の政府が課税(テリトリアル課税)する」という立場です。アメリカは前者の立場から、米企業が海外で稼いだ所得に対しても課税対象とし、その所得が配当金として米国内に支払われるまでは繰延を認める一方、米企業が配当として受取る際には、「外国税額控除方式」で現地政府により徴収された分は税額からの控除を認めるものの、35%の法人税を課しています。この結果、法人税率の高いアメリカを避けて申告された米企業の海外所得には、アメリカ国内に還流させるより海外に滞留させるというインセンティブが働いています。

これに対し日本は、以前はアメリカ同様「居住地主義」に基づき、日本企業が海外所得の配当金受取を行う際、「外国税額控除方式」による課税を行っていました。しかし2009年の税制改正により、「国外所得免除方式」への切り替えを行い、日本企業が海外で稼いだ所得を日本に配当として還流する場合、外国政府により徴収された金額を税額から控除するのではなくて、当該受取の95%を益金不算入、即ち、配当のほとんどを非課税としました。この結果、日本企業にとって、海外における事業所得をそのまま海外に滞留させるインセンティブが消滅しました。経済がグローバル化する中で、法人税については各国とも自国産業の競争力低下を回避しつつ、自国から海外へと資金の流出を招かないような制度構築に腐心しています。2009年の改正は、税収の落ち込みを覚悟しつつも国内への資金還流の円滑化によって国内での投資の活性化や雇用の増加を図った、大胆な改革と言うことができます。

まとめ:OECD加盟国のほとんどが「国外所得免除方式」に移行しつつあるとはいえ、従来から国際税制面ではアメリカ同様「居住地主義」的な考え方を取ってきた日本が2009年の制度改正で「源泉地主義」的な考え方に近い「国外所得免除方式」を採用したことは、基本的な考え方に固執するのではなくて、現実に即して柔軟な制度改正を行ったということで、評価できると思います。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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