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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 財務の機能について2 (企業財務管理、国際金融/平松拓)

財務の機能について2

平松拓 企業財務管理、国際金融

15/10/29

前回、財務の機能とは「株主にとっての企業価値を中長期的に向上させるために、投資・資金調達・資本還元に関わる意思決定を行うこと」と説明致しましたけれど、今回は「株主にとっての企業価値を向上させる経営とはどういうことか」ということを考えてみたいと思います。

突然ですが、皆さんがある企業の役員であったとして、来期の計画について融資をしてくれている銀行や株主に対して説明に行かねばならないという場面を想像して下さい。

まず銀行から考えてみましょう。銀行に説明する場合、来期がどの程度の利益水準であれば許してもらえると考えますか。勿論、経済環境や前期の利益水準、競合他社の状況など様々な要因によっても違ってくる訳ですが、ここでは単純に銀行が融資をした見返りの確保ということで考えてみて下さい。一般に財務会計的には5つの段階の利益、即ち①売上総利益、②営業利益、③経常利益、④税引前当期利益、⑤税引後当期純利益―――がありますが、営業利益が黒字であれば許してもらえるでしょうか。それとも経常利益の黒字が必要でしょうか。或いは税引後当期純利益が黒字、更にはそれ以上の成績でなければ許してもらえないでしょうか。

こうした質問をすると、比較的多くの人が銀行については「経常利益が黒字」と正しく答えます。
次に、株主を対象として説明する場合はどうでしょうか。この場合も同じ選択肢から考えてもらうわけですけれども、セミナーなどでこの質問をすると、約半数が銀行の場合と同様に「経常利益の黒字」が必要と回答し、残り約半分が「当期純利益の黒字」と答え、その他と答える人は若干名という分布になります。

この問題に答えるために、それぞれの段階の利益が意味するところを考えてみましょう。最初に来る「売上総利益」は、売上高から原材料費や労賃など、商品の生産やサービスの提供のための直接的な費用を控除したもので、そこから更に本部関係、人事や経理といった間接的な費用を控除したものが「営業利益」です。この営業利益は、企業が自社の設備など資産を用いて自社で行う事業活動から得られる利益という性格を持ちますが、同時にこれを原資として資金提供者、即ち銀行や株主などへの見返りと税務当局へ税金の支払が行われます。つまり、営業利益が黒字というだけでは、必ずしも誰に対しても十分な配分が行えることを示してはいません。この点、「営業利益」から銀行など債権者への配分である支払利息を控除したものが「経常利益」ですが、この経常利益が黒字だということは、銀行への見返り、即ち利子の支払は行えるということを意味するので、銀行には何とか許してもらえる利益水準と考えることができます。

ところが株主についてはこの段階ではまだ見返りが確保されていません。次の「税引前当期利益」は、経常利益に一時的に損益を調整したもので、そこから税務当局に対する配分である税金を控除したものが「税引後当期純利益」になります。したがって、「当期純利益」が黒字であれば、債権者に加えて税務当局に対する配分(税金の支払)も確保されたことになりますが、株主への見返りの確保には至りません。株主への見返りは「税引後当期純利益」そのものであって、これが配当金としての支払、或いは企業内部に留保されて企業の資産価値を増大による株価上昇、即ちキャピタル・ゲイン通じて株主へ配分されることとなります。つまり、当期純利益の黒字は株主に何らかの配分はあるということを意味するに過ぎず、それだけでは株主に許してもらえる見返り水準である保証はなく、株主が期待する見返り相当の黒字額が確保されることが必要ということになります。即ち、この場合の正解は「その他」です。

では、その株主が期待する見返りというのは、銀行の融資の場合と比べてどう違うでしょうか。この点については、リスクとの兼ね合いで考えなければなりません。即ち、銀行が企業に融資した場合、元本については基本的には期日に企業から融資した元本と同額の返済が受けられます。これに対し、株主の場合は投資の元本を取り戻すためには株を売却することになりますが、上場企業に限らず、株価は業績等に応じて変動するので、実際に回収できる元本金額は当初の投資元本金額から上下するのが普通です。さらに、上に述べたように、株主に対する見返り確保は、銀行など債権者に対する見返り確保よりずっと必要な利益のハードルが高く、さらに、企業が倒産した場合には、債権者が部分的にしろ元本の回収ができる場合でも、株主にとっての元本が全く回収できないことがあり得ます。

このように、株主は債権者よりも高いリスクを負っているため、株主に対する見返りとしての投資収益率は債権者に対する見返りとしての利子率よりも高いのが普通で、当期純利益の黒字額もそれに応じた水準が必要ということになります。つまり、株主を重視する経営を行うということは、企業経営者が高い利益ハードルを引き受けることになります。このハードルをクリアするためには、経営者はリスクを回避するのではなくて、コントロール或いはミニマイズしながら高い収益率の見込める投資案件に積極的に臨む必要がある訳で、それだけ高度の意思決定が求められることになります。そして、この高度の意思決定のための技術を学んでもらうのが、ビジネス・スクールにおける「財務」関連の講義ということになります。

まとめ:株主にとっての企業価値を向上させるためには、基本的には株主の期待する投資収益率を上回るような当期純利益を確保することが必要になります。その実現のためには、企業経営者はリスクを回避するばかりではなくて、コントロール、ミニマイズしながら良好な投資案件に積極対応する必要があるわけですが、そこでの意思決定に必要な技術を学んでもらうのがビジネススクールの財務系の科目に他なりません。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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