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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 財務の機能について1 (企業財務管理、国際金融/平松拓)

財務の機能について1

平松拓 企業財務管理、国際金融

15/10/28

私がビジネススクールで担当しているファイナンシャル・マネジメントは、日本語で訳すると「財務経営」とか「経営財務」と訳される財務関連科目の一環です。今日は、その「財務」の機能について考えてみたいと思います。

私は「ファイナンシャル・マネジメント」の最初の授業で、「財務とは何か、会計や経理等とはどのように異なるのか、そして財務の持つ本質的な機能とは何か、そこでの論点」などについて話をしていますが、みなさんは、財務・会計・経理をどのように整理して理解しているでしょうか?

まず「会計」から始めると、「会計」を英語では"account"とか"accounting"と言いますが、"account"は動詞としては「説明する・報告する」という意味があります。広辞苑では、「会計」について、「企業の財政状態、経営成績を取引記録に基づいて明らかにし、報告する」となっています。つまり、説明するということです。私の講義の中でも、「会計」とは、「様々な人の意思決定に有用な企業の財務業績の情報を提供する、或いは財務業績を説明すること」と説明しています。
次に、「経理」を広辞苑で調べると、「会計に関する事務、或いは納め整えること」となっています。つまり、「取引を金銭的に記録の形で整える」と言い換えることができるかと思います。私の講義の中では、「売上を伸ばし利益を獲得するための活動を金銭的に記録・把握すること」、これが経理の役割という風に定義しています。
最期に「財務」ですが、広辞苑では「財の運営についての事務」と説明されています。企業に当てはめると、「企業という価値を持つ財、或いは企業の持つ財の管理・運営を担うこと」ということになりますが、その目的は、「企業の価値を維持拡大すること」と解釈出来ます。実際に私の講義の中でも、「企業価値を中長期的に向上させるために投資・資金調達・資本還元、つまり投資を行い、そのための資金調達をし、資金を提供してくれた人に対して見返りを還元すること」と説明しています。

ここまでは講義の中でも特に議論になることはありませんが、私が「では、ここで言う『企業の価値』、財務機能をもって向上させる『企業の価値』とはどんなものだろうか」と問いかけをすると、これに対してはあまり積極的な反応はないものの、「このコースの中で『企業の価値』とは、株主・或いは株式投資家にとっての中長期的な価値のことであり、経営者にその観点から適切な意思決定を行わせるのが財務の機能と定義している」という形で限定すると、受講者の中から「顧客や従業員、取引先や地域社会といったその他のステーク・ホルダーにとっての企業価値はどうなるのか?」などと疑問が提示されることがあります。

日本の企業経営者は永らくステーク・ホルダーの中でも、従業員・顧客・取引銀行等を重視して、株主についてはあまり重視して来なかった歴史があり、また、それが日本的経営の特性として積極的に捉えてきました。その点でこうした疑問を持つのは無理からぬところです。また、広く社会一般でも、株主にとっての企業価値の向上というと、短期的に株価の上昇を図るという意味で、むしろ中長期的に従業員など他のステークホルダーにとっての企業価値を棄損するという誤解が存在しています。

しかし実際には、株主にとっての企業価値を重視することと、他のステーク・ホルダーに配慮することは必ずしも矛盾しません。中長期的な企業価値の向上、言い換えれば中長期的な株価の維持・向上を図るためには、安定的に利益を増やすために従業員や顧客に対する相応の配慮が欠かせないことは明らかですし、それは取引先や地域社会についても同様です。

実際に、講義の中で、「現時点で同じような規模・業績を持つ同業の2社だが、1社は従業員満足度がもう1社より高い、或いは1社はもう1社よりも顧客満足度がより高いといった場合を想定して、どちらの株価が将来的により高いであろうか」という問いかけをすると、ほぼ例外なく従業員満足度が高い企業であり、顧客満足度が高い企業だという答えが返ってきます。つまり、ビジネス・スクールで行われる財務の講義については、企業経営者が株主を重視することで、必要なリスクをとりながら積極的な企業経営を行うことが必要だという思想が背景にはあるのですが、このことにについて社会一般にはまだ認識の不足しているところがあると思います。そこを補って理解度を高めることが、ビジネス・スクールで財務関連の授業を担当する教員の役割であると考えています。
纏めるならば、ビジネス・スクールのファイナンシャル・マネジメントの講義の中では、財務の機能を「企業価値を向上させるために投資・資金調達・資本還元に関わる意思決定を行う」と定義していますけれども、その背景には「企業経営者が株主をより重視することで、必要なリスクをとりながら積極的な企業経営を行っていくのが必要だ」という考え方があるということです。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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