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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 日経のFT買収 (企業財務 M&A/村藤功)

日経のFT買収

村藤功 企業財務 M&A

15/09/24


今日は、日本経済新聞がFinancial Times(FT)を買収したことについて話します。
Financial Timesと言えば、アメリカのWall Street Journalと並ぶ世界の二大経済紙です。日経よりも世界的に有名ですので、日経によるFTの買収は非常に驚かれました。

日経はFTを、£844mm(約1600億円)で買収しました。その結果、日経+FT連合が生まれ、世界の新聞通信社業界に大きな変化が生じています。まず、これまでの状況を確認しておきましょう。

オーストラリアの新聞王であるマードック率いるニュースコープが、イギリスのクオリティペーパーと呼ばれるタイムズを81年に買収しました。さらに2007年には、Wall Street Journalを5900億円で買っています。世界規模のメディア帝国を築きあげようとしているマードックについては、関連する本も多く出版され、一時は日本で買収を仕掛けていたこともありました。

一方、ソロモンブラザーズのトレーダーであったマイケル・ブルームバーグが、2009年12月にマグロウヒル社からビジネスウィークを買収しています。ブルームバーグはトレーダーとしてロイターやダウジョーンズのマーケットデータを用いていましたが、サービスに不満を覚え、改良サービスを自ら提供しました。すると彼が提供したサービスが大ヒットして、ブルームバーグは大成功をさめました。

その結果、現状のトップ3は、日経FTとニュースコープ、ブルームバーグとなっています。もともと日経の紙媒体の新聞販売数は世界一です。紙媒体であれば、日経が273万部であることに対して、FTは22.5万部程度でした。ところが最近では電子版が伸びてきており、紙の新聞には広告が集まりにくくなっています。電子版では、日経が43万部であることに対して、FTは50万部です。したがって今回の日経によるFT買収は、デジタル化という戦略に則ったものと考えられます。

これまでも日経とFTはいろいろなかたちで協力してきており、良好な関係を築いていました。しかし、その購入価格は果たして妥当なものでしょうか。メディア業界では、事業価値を調整後営業利益の10~15倍、平均で12倍と評価することが普通です。もっともアマゾンドットコムがワシントンポストを買収した際には、17~18倍と評価しました。ところが今回の日経のFT買収では、事業価値を調整後営業利益の35倍と評価したと言われています。アマゾンドットコムによるワシントンポスト買収の二倍を、日経は支払ったのです。日本企業は高く買って安く売るのがとても得意なことで知られていますので、困ったことに世界中からそういうものだと思われているようです。

ピアソンはこれまで、教育とニュースの二つの事業を行ってきました。今回、ニュース部門であるFTを売却し、そのお金で教育事業を強化しようとしています。一方で日経は、国際化とデジタル化を目指しています。今回のFT買収は、その動きに沿ったものです。

日本の新聞は日本に良いことを書きますし、イギリスの新聞はイギリスに良いことを書きます。それが当たり前です。しかし日経が買収したからといって、FTが日本の新聞となったわけではありません。日経は、FTの編集権の独立を維持することを強調しています。FT側も、日経であれば自分たちの自由を認めてくれると考えたようです。とすれば、さきほどの買収価格の高さがやはり気になります。日本の新聞になるのであれば高くても意味がないこともありませんが、イギリスを中心とするグローバル新聞であり続けるのであれば、そんなに高いお金を支払う必要がどこにあったのでしょうか。

今日の話をまとめます。
日経がピアソンより、FTの株式100%を£844mmで買収することになりました。日経はFTと組んで、グローバル化とデジタル化を推進しようとしています。新聞通信業界ではトップに躍り出て、これからニュースコープやブルームバーグと競争することとなります。しかしFT編集権の独立を維持する方針ですので、FTがイギリスのグローバル新聞であり続けることに変わりありません。買収価格が高すぎたのではないかという疑念は拭えません。

分野: 財務戦略 |スピーカー: 村藤功

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