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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワードで理解するイノベーション・マネジメント(5)公共財 (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワードで理解するイノベーション・マネジメント(5)公共財

永田晃也 技術経営、科学技術政策

15/08/25

 イノベーションに関する経済学的な分析において提起され、使われてきた用語の中には、イノベーション・マネジメントの課題を深く理解する上でも役立つものが少なくありません。いくつかの重要な用語を取り上げていきたいと思います。今日、ご紹介する「公共財」は、最初の例です。

 例え話から初めてみます。ある商船会社が、自社の船舶を運航させていた航路に危険な岩礁地帯があるため、その近くの岬に灯台が必要だと考えていました。その商船会社が自ら巨費を投じて灯台を建設すれば、自社の船舶の安全を確保できるわけですが、しかし同時に、競合他社の船舶も灯台がもたらす安全という便益を受けることができるし、自ら灯台を建設した会社は、それを排除することができないのです。そのため、この商船会社では、競合他社が灯台建設に踏み切り、その灯火がもたらす便益にただ乗りできるようになる機会を待つことにしました。ところが、その航路に船舶を運航させていた全ての商船会社が、フリーライダーになろうとする機会主義的な態度に出たため、遂に灯台は誰にも建設されず、その岩礁地帯での海難事故が絶えることはなかったのです。

 公共財とは、この灯台のような財を言います。一般的には公共財は、次に述べる2つの性質のうち1つ以上に当てはまるものとして定義されています。
 1つは、この灯台の灯火のように、複数の企業や人が、その便益を同時に受けることができるという性質で、これを消費の「非競合性」と言っています。
 もう1つは、この灯台の灯火のように、そのために投資を行った企業や人以外の第三者が、対価の支払いをせずに便益を受けることを排除できないという性質で、これを消費の「排除不可能性」と言っています。

 このような「公共財」の概念が、何故イノベーション・マネジメントの課題を理解する上で重要かと言うと、技術、ないしその本質である知識も公共財的な性質を持っているからです。この点は、ケネス・アローという経済学者が1962年に発表した論文の中で指摘しました。
 新しい技術を創出するためには、巨額の研究開発費を要することがありますが、開発された技術は容易に第三者に伝わり、模倣される可能性があります。それを防ぐために開発者は知的財産権によって技術を保護するなど、様々な方法を採るわけですが、例えば特許を取得したとしても、競合によって権利を迂回する類似の技術が発明されることは避けられないでしょう。つまり、技術は開発者以外の第三者が対価を払わずに使用することを排除し難い財であり、同時に複数の企業や人が使用することができる財であるということになります。

 この問題にいかに対応するかが、イノベーション・マネジメントの最も重要な課題の一つです。また、このような性質を持つ公共財に対する投資は十分に回収されないため、企業のみの投資では社会的に望ましい水準よりも過少になる可能性があります。そのような場合、政府や公的機関が技術開発の担い手となることが期待されます。つまり、技術の公共財的な性質は、科学技術政策にも課題を提起することになるわけです。

今回のまとめ:技術の公共財的な性質は、そこから得られる利益をいかに回収するかという課題を提起するものです。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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