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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 株式と社債2 (企業財務管理、国際金融/平松拓)

株式と社債2

平松拓 企業財務管理、国際金融

15/08/07

トヨタ自動車AA型種類株

前回、株式と社債の特徴・種類についてお話しする中で「種類株式」について触れましたが、今年の6月の株主総会シーズンにかけて話題となったのが、トヨタ自動車による「AA型種類株式」発行の提案です。今回、この提案内容から、トヨタ自動車の狙いについて考えてみましょう。

先ずこの種類株式は、予め決められた利回りの配当金が支払われるという点で、株主総会等での議決を経て始めて配当金が支払われる普通株式や多くの優先株とは異り、社債に近い性格を持っています。社債の中でも、配当金の支払が普通社債など一般債権に劣後しますので、劣後債に近い性格といえます。また、その利率が初年度の0.5%から5年目の2.5%迄0.5%刻みで上昇し、平均では約1.5%になりますので、トヨタのような信用力のある企業が発行する5年物の普通社債よりも高利回りであり、その点でも劣後債に近いと言えます。

また、この種類株は譲渡制限が付いている点が特徴的です。それ故に上場され得ず、譲渡は相続などの場合に限られます。ただ、5年経過すると、①普通株式に1:1で転換する、②そのまま種類株として保有を続ける、③発行価格で買取請求をする―――という選択をすることができます。この①の普通株への転換は、通常の優先株式などでも見かけますが、③の発行価格で買い取って貰える―――という点では元本保証と考えることができるので、期間5年の社債の性格を持ち合わせていると考えられます。

もう一つ特徴的なのが、この種類株式には議決権が与えられることです。この点は種類株式としては例外的で、普通株式としての性格を備えています。通常はこうした種類株式への議決権の付与や普通株式への転換権は、既存の普通株主の権利の希薄化を招くということで抵抗がありますが、トヨタはこのAA型種類株の発行後に同数の普通株式の自己株取得を行うとして、この懸念を解消しています。

さらに、残余財産分配請求権については、普通株式より優先され、社債等の一般債権より劣後するという点で、典型的な劣後債や優先株式と同様の性格を備えています。

こうして見ると、このAA型種類株は、株式と社債の中間的な性格を有する劣後債や優先株とそれ程変わりませんが、譲渡制限と議決権、この2つが重要な特徴となっています。つまり、トヨタ自動車はこの種類株式の発行によって、何時でも売却可能な普通株式の株主に換えて、一定数、最低5年間に亘って株主総会における議決権を維持し続けるような投資家を獲得しようという狙いを持っていることが分かります。実際にトヨタ自動車は公表資料の中で、AA型種類株式発行の背景・目的は、「中長期視点で研究開発を行い企業価値を高めるために、中長期保有を志向する株主層を開拓することである」と、明らかにしています。

トヨタ自動車がこうしたことを考える背景には、近年の株主構成の変化によって、株主の意向と企業の中長期的な価値追求、この2つが相容れない状況が生じかねないという危機感が考えられます。従来、企業は相互持ち合いによる安定株主のお陰で、それ程株主の意向を気にせずに中長期視点で経営が行えたのに対し、バブル崩壊以降の金融資本市場改革の中で「持ち合いの解消」が進み、その結果、日本企業の株主として内外の投資ファンドなど比較的短期保有の投資家のシェアが高まってきました。こうした投資家が短期的視点から投資リターンを求めると、研究開発など中長期の視点に立った経営が行いづらくなると考えている訳です。

今回の提案に対して、一部の海外の機関投資家は、「安定株主が経営の規律を失わせる」として反対を表明したようですが、結局株主総会では定款の変更が承認され、発行が可能となりました。「物言わぬ安定株主から物言う株主へ」「株主との対話重視」を目指して進められている現在の株式市場改革ですが、個々企業の中には強い懸念を抱いている所も多く、今回のトヨタの種類株の提案は、新たな流れを作り出す可能性もあると考えられ、要注目です。

分野: 会計 国際ロジスティクス |スピーカー: 平松拓

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