QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 分業のメリット (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

分業のメリット

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

15/07/27

 今日は、分業について御話します。一人暮らしより二人暮らしの方が分業が出来て楽です。料理が得意な人が二人分の料理を作り、苦手な人が皿洗いをすれば良いからです。まず、料理は一人分作っても二人分作っても手間はあまり変わりません。これを「規模の経済」と呼びます。大きな規模で仕事をすれば小さな規模の仕事よりも効率的だという事です。それから、料理が苦手な人が自分で作るよりも得意な人に頼んだ方が美味しいものが短時間で出来ます。皿洗いも二人分であれば食器洗い機を買うだけのメリットがあるかもしれません。これも「規模の経済」と言えるでしょう。

 では、何をやっても有能な人は凡人と分業する事にメリットがあるでしょうか。規模の経済は無いということにして、数値例で考えてみましょう。3時間で料理を30個作り、次の3時間で皿を30枚洗うAさんと、4時間で料理を10個作り、次の2時間で皿を10枚洗うBさんがいるとします。
 Aさんは、料理も皿洗いもBさんより得意ですが、皿洗いの速さはそれほど変わらない一方で、料理作りの速さは格段に違います。こうした場合には、Aさんが主に料理を作り、Bさんが皿洗いに専念するという分業により、二人ともハッピーになれるのです。
Aさんが4.5時間で料理を45個作り、1.5時間で皿を15枚洗い、Bさんが6時間で皿を30枚洗うとします。二人の労働時間は変わらず、合計の料理は5個増えています。あとは分配の問題です。
 まず、Aさんが30個食べ、Bさんが10個たべ、残った5個をどう分けるか相談すればよいのです。分業によって、二人ともハッピーになるのです。
 一方で、メリットをAさんとBさんでどのように分け合うかという問題が出てきます。分配の問題で喧嘩になって、分業が出来なくなってしまうかも知れません。今一つは、Bさんが持つ不満です。料理を作る担当の人は、料理が上達して一流レストランのコックさんになれるかも知れませんが、皿洗いを担当する人は、皿洗いが上達しても給料の高い仕事には就けそうもないからです。

 以上のような家庭内の分業と似たような事が、国家間でもあり得ます。貿易による分業です。日本と米国を比べると、日本は国土が狭いため、コメを作るのは得意ではありませんが、自動車を作るのは得意です。一方、米国は国土が広いためコメを作るのは得意ですが、自動車を作るのは日本ほど得意ではありません。それならば、日本人がもっと自動車を作り、米国人がもっとコメを作り、交換すれば、お互いに今より豊かな生活が送れるはずです。これが自由貿易を進めようという考え方で、その一例がTPPです。
 経済学者は、一般に自由貿易に賛成です。しかし、自由貿易やTPPに反対している人がいるので、交渉はあまり進展して来ませんでした。反対しているのは、日本でコメを作っている人と米国で自動車を作っている人です。
 日本の農家の人が、日本の自動車会社か米国の農場で働く事が出来るならば良いのですが、それは難しいでしょう。米国の自動車会社の社員が米国の農場や日本の自動車工場で働く事もやはり難しいでしょう。一方で、日本の失業者で工場労働の経験がある人と、米国の失業者で農業経験のある人は、仕事にありつける可能性が高くなります。日本と米国の消費者は、いずれもコメと自動車が安く買えるようになります。差引すれば、両国とも利益が大きいのですが、利益を受ける人と損失を被る人の間の調整が出来ないとなかなか国と国との条約は結べないのです。日本の自動車会社と米国の農家から税金をとって、日本の農家と米国の自動車会社に配るという事ができれば良いのでしょうが、実際には簡単なことではありません。
 途上国の場合には、国益の観点からハイテク産業などを保護しようとする場合があります。ハイテク産業は先進国の方が圧倒的に強いでしょうから、自由貿易にすれば国内のハイテク産業はすべて倒産してしまうでしょう。そうなれば、将来にわたってハイテク産業を先進国に握られてしまいます。そうした事を避けようという事は、当然考えるわけです。
そのため、途上国がハイテク製品の輸入を制限しようという気持ちもわかりますよね。

 ところで、今の日本の場合には反対しているのは農業です。ハイテク産業でも将来有望な産業でもありませんから、国益という観点からは農業を犠牲にしても自動車産業などの輸出が伸ばせれば、その方が良いという判断は充分にあり得ます。しかし、農業は政治力が強いので、政治家が選挙を意識して農業の開放に消極的になっているのです。政治家の方々も、国益だけを考えているわけではない、ということですね。

まとめ:分業は、お互いの利益になります。自由貿易による国際分業も、両国の利益になります。しかし、国内の弱い産業が自由貿易に反対するため、交渉は簡単ではありません。自由貿易をめぐる議論の本質は、国内の強い産業と弱い産業の利害対立なのです。



分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ