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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > カルテル (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

カルテル

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

15/07/22

 今日は、カルテルについて御話しします。ある製品を作っている企業が数社の大企業だけであり、しかもその製品は値段が上がっても需要があまり減らないという場合について考えてみましょう。数社が話し合って生産量を減らして値段を吊り上げることで皆の利益が膨らみます。これが「カルテル」です。数社ともが大きな利益を上げられる素晴らしい手段なのですが、実際にはあまり巧くいかない場合が多いのです。一つには、日本の法律がカルテルを禁止していることが挙げられますが、それ以外にも大きな理由があります。それは、「他の企業が生産を減らし、自分だけが思い切り生産する」というのがどの会社にとってもベストだからです。したがって、生産を減らす契約にサインはするけれども、こっそり契約以上の量を売りに出すということを皆が考えるわけです。「カルテル破り」という行為です。カルテル契約を破っても相手にバレなければ良いのですから、こっそり破って自分だけ儲けようと考える企業は多いでしょう。しかし、多くの企業がカルテル破りをするとカルテル契約の意味がなくなってしまい、価格は下がってしまうのです。

 カルテル破りを説明するための面白い方法があります。ゲーム理論という分野があり、その中に出てくる「囚人のジレンマ」というものです。カルテル破り以外でもよく使われるので、説明しておきましょう。

  二人で一緒に悪い事をした場合で、二人の共犯者が別々の部屋で取調べを受けているとします。二人とも黙っていれば二人とも懲役1年で済みます。二人とも自供すれば、二人とも懲役5年になります。一人だけ自供して今一人が黙っていると、自供した方は無罪放免、黙っていた方は懲役8年になります。さて、私が共犯者の一人だったらどうするでしょう?相手が黙っていたか自白したかわかりませんが、それでも私は自白するかしないか決めなくてはなりません。そこでまず、相手が黙っていた場合について考えてみましょう。私が自白すれば、私は無罪放免ですが、私も黙っていると、二人とも懲役1年です。私は自白した方が得です。では、相手が自白したとします。私が自白すれば、二人とも懲役5年ですが、私が黙っていると私は懲役8年になります。この場合も、私は自白した方が得です。相手が黙っていた場合、私は自白した方が得です。相手が自白した場合も、私は自白した方が得です。どちらの場合にも、私は自白した方が得なので、私は自白するでしょう。しかし、相手も全く同じ事を考えるでしょうから、相手も自白するでしょう。そうなると、二人とも自白して、二人とも懲役5年になります。二人が協力すれば、二人とも黙っていて二人とも懲役1年で済んだのに、協力しなかったから二人とも懲役5年になってしまったのです。

 「カルテル」も同じです。お互いに協力すればカルテルで皆が大きな利益を得られますが、協力しなければ皆がカルテル破りをして、誰も儲かりません。そして実際には、協力しない場合が多いのです。仲間を裏切って自分だけ儲けようという考え方をする人が多いのです。じつは、そこが問題なのです。さきほど御話した囚人のジレンマは、私が犯罪から足を洗おうとしている場合を想定していました。人生最後の犯罪についての取調べ、という前提でした。しかし、今後も犯罪を続けようと思うと、違う選択もあり得ます。今回自白してしまうと、犯罪者たちの間で「あいつは裏切り者だ」という噂が流れます。そうなると、次から誰も共犯者になってくれなくなるのです。一方、黙っていれば、「あいつは仲間を裏切らない」という評判がたちます。そうなれば、次の犯罪の時には、仲間を裏切らない悪人同士でペアを組むことが出来ます。それならば、次回以降はつかまっても二人とも軽い罪で済みます。こうした事まで考えて自白するか否かを判断する場合を、「繰り返しゲーム」と呼びます。何度も繰り返す場合には、結局は仲間を裏切らない者が得をする、というわけです。

  さて、カルテルは、法律違反ですし、裏切りも起きやすいので、なかなか難しいのですが、カルテルではなくて、ある程度の効果があり、法律違反でもなく、自分一人で出来る事があります。それは、「誰かが値下げをしたら、自分も値下げをする」と宣言する事です。私がそういう宣言をしたとしましょう。私の同業者たちは、値下げをするでしょうか?
皆さん同業者が値下げをしなければ、私も値下げをしませんから、今まで通りの利益が得られます。同業者が値下げをすれば私も値下げをしますから、お互いに売れる数は変わらずに、値段だけ下がって御互いに損をします。それならば、同業者は値下げをしませんね。安売り店の広告で、「他社が我が社より安ければ、その値段まで我が社も値引きします」という宣伝を見かけますね。あれは、お客への宣伝であると同時に、ライバルに向けて「値下げすると損だよ」というメッセージを送っているのかもしれません。

まとめ:カルテルは、維持するのが大変です。カルテルのメンバーは、「相手を裏切ることで自分が利益を得られる」という立場にあるからです。しかし、お互いが同じ事を考えると、カルテルは崩壊し、両方が損をします。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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