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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 操業停止点 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

操業停止点

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

15/07/09

今日は赤字でも操業している工場についてお話しましょう。

まず始めは「企業の費用」についてです。企業の代表的な費用というと「人件費」と「材料費」があります。生産をする為には人件費と材料費が両方かかります。しかし、生産をやめても人件費だけはかかります。1度社員を雇うと簡単に解雇出来ませんから、生産をやめても給料を払う必要があるためです。このように、生産をやめても必要な費用のことを「固定費用」、生産をするかやめるかによって変わってくる部分の費用のことを「可変費用」という風に呼んでいます。「可変費用」には、材料費の他に電気代なども入ってきます。「固定費用」には、給料の他に借入金の利子だとか設備の減価償却などが入ってきます。
具体的な数字でお話したいと思います。給料が10万円、材料費が1個あたり2万円、その他の費用はかかっていないということにしましょう。次に企業の売上について考えてみますと、販売価格が1個あたり3万円と決まっていて、景気によって売り上げ個数が増えたり減ったりするという場合を考えましょう。まず生産量、売り上げが0ならば給料の分だけ10万円赤字です。1個売れるごとに1万円ずつ赤字が減っていき、10個売れた段階で損益が0になります。この場合、損益分岐点が10個だという言い方をしますが、11個以上売れれば利益が出ることになります。この場合、売上が10個未満で赤字になっても生産を止めることは普通は考えにくいですね。1個でも作ればその分だけでも赤字が減るわけですから、赤字でも工場を動かし続けることが合理的だというわけです。もちろんその工場を閉鎖して従業員を別の工場に配置転換するという事が出来る場合にはそういうことも検討しますが、今日はそれを考えないことにしましょう。
今までは値段が決まっていて景気によって売れる個数が変化する場合を考えてきました。次は景気によって値段が変化するけれど、作ったものは必ず全部市場価格で売れるという場合を考えてみましょう。この場合も企業としてはフル生産するか全く止めてしまうかどちらかしかないわけです。企業の生産能力が15個だとすると給料は10万円、材料費は1個当たり2万円、その他の費用は0だとすると製品価格が2万円であれば人件費を除いた損益はプラスの15万円です。売上の3万円から材料費の2万円を引いて1個当たり1万円の利益になるので15個売れれば15万円の利益です。その分から人件費の10万円をもちろん引かないといけませんから最終的な利益は5万円になり、黒字です。では製品価格が2万円だとどうなるかというと、売値と材料費が同じですから人件費を除いた損益は0です。この場合人件費を差し引くと、会社の最終的な損益はマイナス10万円になります。この場合には工場を動かしても10万円の損ですが、止めても人権費分で10万円の損ですからどちらでも同じことです。ということは販売価格が2万円より少しでも高ければ赤字額が10万円より減りますから、生産を続けるべきですね。即ち工場が赤字であっても材料費よりも売値の方が高ければ生産を続けるべきだという事になるわけです。材料費と販売価格を比べて販売価格が高ければ生産し、販売価格の方が材料費よりも更に安かったらそれはもう生産をやめるしかありません。この事は生産を続けるかやめるかを考える際には固定費用の事は考えなくてよいということを意味しています。これはとても大事なことです。
生産するかどうかを決める時にはあくまでも売値と材料費がどっちがどうか、売値が材料費より高いかどうかを考えたら良いということになるわけです。よく立派な工場を建てた会社があって、景気が悪くなってきて赤字になったけどどうしようというような話がありますが、そういう会社は減価償却費とか借入金の金利が大きいですから、少し市場が悪化するとすぐ赤字になるわけです。それでもそれだけで操業を停止する必要はもちろんありません。売値が可変費用、材料費よりも高ければ生産を続ければいいでしょう。逆に売値が可変費用よりも低ければどんなに最新鋭の工場で立派なのがあってもったいないな、せっかく作ったのにと思っても涙をのんで生産をやめるのが正しいということです。

生産を続けるべきか否かを判断する時に考えるべきことは、工場の建設に巨額の費用がかかったかどうかではなくて、あくまでも売値が材料費よりも高いか安いかということだけなのです。
もちろん実際の企業経営では様々な事を考える必要がありますけれども、今日はそういう事まで考えるのはやめましょう。ここで大事な事は意思決定をする場合には今何がベストかを考えるべきであって、過去の出来事を引きずるべきではないということです。少し違う話のように聞こえるかもしれませんけど、株式投資の世界には「損切を早くしなさい」という格言があるそうです。買った株が下がると何とか損を取り戻そうとして売るべき株を売らずに持っている人が多いらしいです。そういう人が損を広げるのを防ぐために「損切りを早くせよ」というアドバイスがあるわけです。
株を売るべきか持っているかを決める時には、その株が値上がりしそうかどうかを考えるべきであって、買った時の値段より今の値段が高いか安いかということは関係ないということですね。最新鋭の工場をとめるかどうかも同じように判断すればいいということです。

今日のまとめです。

製品の価格が値下がりしてきたとして、工場が操業をとめるのは赤字になった時ではなく、売値が可変費用を下回るようになった時です。生産を止めるかどうかの意思決定に際しては、固定費用は考えなくてよいのです。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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