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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 『デザイン思考』による新しい事業創造(その1) (産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ/高田 仁)

『デザイン思考』による新しい事業創造(その1)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

15/07/02

【 今回のまとめ】
・工業社会、知識社会を経て、「創造社会」で価値を生み出す方法への関心が高まっており、それを実現する『デザイン思考』が注目されている。


・近年、『デザイン思考』という言葉を耳にすることが多い。『デザイン思考』による製品開発コンサルティングで世界的に著名なIDEOという会社のトップのティム・ブラウンは、「デザイン思考とは、デザイナーの感性と手法を応用し、技術的実現性とビジネス戦略をもって、人々のニーズを顧客価値や市場機会と合致させること」と定義している。つまり、デザイナーの持つ創造性を経営戦略に反映させる方法だという。
・ここで、一つ疑問が浮かぶのが、「デザイナーの感性と手法」とは何か?ということだ。
・そもそも狭い意味の「デザイン」とは、プロダクト・デザインやグラフィック・デザインなど、美術系の学校で教わる「機能と形を結びつける行為」を指してきた。
・しかし、『デザイン思考』におけるデザインとは、「観察対象に感情移入・共感して、自分が暮らす日常世界を他者の目で観察し、新しいアイデアを表現する構成を考えて、最終的な形に落し込むこと」である(「デザイン思考の道具箱」、奥出、2013年)。そのプロセスでは「デザイナーの感性と手法」がとても有効に働く。ユーザーの利用シーンを綿密に観察し、そこでユーザーが抱える問題の大きさや深刻さを感じ取り、それを解決するための新たな手段(単なる形の提案に留まらない)を考案して形に落し込むことは、デザイナーの得意技だ。
・IDEO創業メンバーのビル・モグリッジ(ラップトップ・コンピューターを世界で初めてデザインし、世に出した)は、「我々は動詞をデザインしている。名詞ではない」と述べている。つまり、製品そのものやサービスそのものの名詞をゴールにすると、何らかは世に生み出されるものの、それが本当のユーザーの問題を解決するとは限らない。開発者がゴールにすべきなのは、ユーザーの困っていること(=動詞に表れる)を取り除くことなのだ。(例えば、スマホという"モノ"がゴールなのではなく、外出中でもベッドの中でも、いつでも好きなときに他者とコミュニケーションを取るとか、知りたい情報に瞬時にアクセスするという「一連の動詞」を満足させることがゴールなのだ。)

・また、ピーター・ドラッカーは、「デザイン思考は、ニーズを具体的な市場における需要へと転換する」と述べている。つまり、ユーザーは自分がどんなニーズを抱えているかについて、実は正しく理解できておらず、その結果、潜在的に不便さを感じながら生活している場合が多い。そのような「存在するが目には見えない問題」を明らかにして、それを解決する手段を具体化する(製品やサービスに落し込む)ことで、購買などの需要へと結びつけ、ビジネス化する、ということを意味している。

・このような「デザイン」の力を経営戦略と結びつけるのが、『デザイン思考』という手法なのだ。

・20世紀のビジネスは、効率性の追求で利益を上げてきた。GEのカリスマ経営者だったジャック・ウェルチの「選択と集中」も、トヨタの「カンバン方式」や「カイゼン」も、ムダを限界までそぎ落として効率性と収益率を高める手法だ。そのために必要な技術が開発され、それを担う人材が育成されてきた。従って、20世紀は工業化社会とも呼ばれ、様々なモノで生活を便利にすることができた。
・その後、70年代頃から「知識」への関心が高まっていった。モノによって生活を便利にできるが、それ以上の豊かさを得るためには「知識」がカギを握る。ものづくりという行為やそれを担う組織を司って価値を創造するカギは「知識」にあるとされ、知識社会とも呼ばれるようになった。企業経営でも、知識マネジメントが重要な位置を占めている。
・一方、21世紀に入り、インターネットの普及に伴って情報伝播のスピードが革命的に早まった。その結果、独自のものづくり能力や知識の保有によって競争優位性を維持することが徐々に難しくなりつつある。
・そこで、キーワードとして注目されているのが「創造性」だ。『デザイン思考』でいうところのデザイン、つまり「観察対象に感情移入・共感して、自分が暮らす日常世界を他者の目で観察し、新しいアイデアを表現する構成を考えて、最終的な形に落し込む」という行為を、創造性発揮と価値を生む手段として活用し、経営戦略に結びつける『デザイン思考』に関心が高まっているのだ。

・デザイン思考の専門家には、「デザイン思考は0から1を生み出す。1を10にするのが技術経営(MOT)で、10を100へと拡大させるのがMBAだ」と述べる人もいる。0から1を生み出すとは、「そもそも何を作ればよいか?」という問いに対して解を与えるもので、価値創造プロセスの最初のステップで重要な役割を持つ(ここを間違えたら、その後の1を10に、10を100にする投資が全てムダになりかねない)。

・次回は、『デザイン思考』の具体的なプロセスについて解説したい。



分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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