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金融緩和

村藤功 企業財務 M&A

15/06/17


今日は、金融緩和について話します。

アメリカが、量的緩和を終了しました。もっとも、連邦準備銀行(FRB)が国債やモーゲッジ債の購入をやめただけで、過去に購入したものを売却しているわけではありません。したがって、未だ500兆円くらいの資産を持っています。FRBは、まず金利を上げて次に国債を売却し、それからモーゲッジ債を売却する予定です。そこで今問題となっているのは、いつ金利を上げるかという点です。当初は六月に上げると言われていましたが、すぐに上げない方がいいという見方もあるために、年末くらいまでに上げるのではないかと考えられています。その場合、年明けから国債を売り始め、ドルの回収を行うでしょう。世界経済が、縮小モードに入るというわけです。

一方日本では、日銀の黒田総裁による異次元の金融緩和において、2%のインフレターゲットを掲げていました。しかし原油価格が下がったために、その実現は難しいものとなっています。日銀は昨年の秋より、年間に80兆円分の国債を買い始めました。新規国債の発行額は37兆円ですので、2年分以上の国債を1年間に購入する計算となります。2013年の1月には日銀の総資産は150兆円ありましたが、いまや330兆円に達しています。日本のGDPが500兆円ですから、その6割から7割が、中央銀行の資産になっています。

それでは、これから何が起こるのでしょうか。これまでは日銀は民間銀行から国債を購入していましたが、日銀における民間銀行の当座預金のかたちで、結局はお金が日銀に戻ってきていました。したがって、マネーサプライは増えないままでした。民間銀行が国債を日銀へ売却したくないと言い出せば、日銀は通貨を発行して、マーケットから国債を購入しなければなりません。そうすると、マネーサプライが増えて、インフレが進行します。それも2%だけにとどまらず、下手をすれば50%、100%というようなハイパーインフレになるかもしれません。また、民間銀行が日銀に持っている当座預金を事業法人や個人への貸し出しに回した場合もマネーサプライが増えて、ハイパーインフレになりかねません。ハイパーインフレになってしまえば、円も株も売られる事態となってしまうでしょう。

このために日銀には、危ない橋を渡っているという疑惑があります。日銀は、2%のインフレターゲットを達成したならば、インフレの進行を抑えるために量的緩和の手仕舞いをしなければなりません。大量に購入した国債を怒涛のように民間銀行へ売り戻すことが、一つの方法です。その場合、これまでに何百兆円も購入した国債をどのようにスムーズに民間銀行へ売却するかという点が、ひとつの問題となります。家計の貯蓄は消費税の値上げ前からマイナスになってしまったため、民間銀行は家計から貯蓄してもらうことを期待できなくなりました。このため民間銀行は日銀においてある当座預金を振り替えることはできますが。これがなくなれば国債を日銀から購入するためのお金を持っていません。また、今年に日本郵政が民営化します。これまで日本郵政は郵貯や簡保の資金を背景に多くの国債を買ってきましたが、民営化後は、こうしたリスクの高い国債を売ってしまってもおかしくありません。日銀が国債を売れば金利が上がり、大量の国債を発行している政府は金利の支払いが困難になるため、政府の財政改革と日銀の金融緩和からの出口戦略は同時に実行されなければなりません。

こうして皆が国債を買わなくなった場合、誰が代わりに買ってくれるのでしょうか。ユーロの金融緩和の際には、マイナス金利やユーロ安の見込みのため、海外の投資家が日本の国債を少々買ってくれました。しかし海外の投資家に買ってもらっているところでインフレが進んだら、円安を招き、海外投資家は損をします。損をしないように海外投資家からも早めに日本国債が売られ、金利が上がる可能性があります。円はドルと違ってたいした国際通貨ではないので大して期待はできませんが、仮に海外投資家にある程度買ってもらえたとしても、金利を払えなくなれば、デフォルトとなります。デフォルトが起こると、IMFのような国際機関がやって来て、財務省をなおざりにして経営を始めます。緊縮財政で年金や健康保険の政府負担も、削減されるでしょう。国民が社会福祉削減反対といってプラカードを持ってデモをしても無駄です。先にいい生活をしたキリギリスの癖に債務不履行という現実を見ろといわれます。まさしく、ギリシアで見られるような状態になるわけです。

このように日本経済は、危ない方向に進みつつあります。表面上は、株が上がったり円安で貿易が少し良くなったり、2%インフレが見えてきたりと、良い方向に進んでいるように見えます。しかし欧米の中央銀行が国のGDPの10%から20%しか資産を保有していないことに対し、GDPの60%から70%の資産(ほとんどは国債)を日銀が所有しており、これらをどのように手仕舞いするのか、わからない状況です。

今日の話をまとめます。
アメリカの金利引き下げやドルの縮小のタイミングが、少し遅れそうです。また国内では、日銀が設定した2%インフレターゲットの達成が遅くなりそうです。日銀は金融緩和の速度を速めて、国債を大量に購入しています。最近になって日銀は自己資本を拡充していますが、金利が少し上がるだけで国債の価値が減少するため自己資本が飛び、日銀は債務超過となります。2%インフレターゲットは達成されるかもしれませんが、その後が問題です。家計の貯蓄が赤字である現状、日銀が購入した国債を民間銀行は日銀にある当座預金の限度でしか買うことができません。またこれまで国債をたくさん購入していた日本郵政は、今年中に民営化予定です。さらに現状、金融機関に国債を購入させたらいけないという規制を国際的に話し合っている最中です。このままでは、日本発の世界恐慌が視野に入って来ています。

分野: 財務戦略 |スピーカー: 村藤功

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