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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 法人税改革2 (企業財務管理、国際金融/平松拓)

法人税改革2

平松拓 企業財務管理、国際金融

15/06/19

前回は、安部政権が今年度2.51%、来年度0.78%の法人税の実効税率引き下げを決めたということ、その狙いは直接投資の受け入れや日本企業の競争力強化のための成長戦略であったということ、その一方で日本の深刻な財政状況から、同じ法人に対する税金の枠内で代替財源の確保を図らなければならなかったということについて説明しました。今回はその代替財源を見ていこうと思います。

 財政状況さえ良ければ、特に代替財源を確保しなくても、純粋な減税を大規模に行えますが、GDPの200%もの政府債務を抱える今の日本の場合はそうした余裕は無く、税率の引き下げを行うとする場合には、代替財源探しが問題になります。その代替財源の確保の仕方によって改革の性格が変わることもありますが、最近の税制改革では、個人の場合も法人の場合も所得税率を引き下げる一方で、課税ベースの拡大という形で代替財源確保が行われます。今回の法人税率引き下げも同様で、やや技術的な話になりますが、法人事業税の外形標準課税の拡大、欠損金の繰越控除の縮小、受取配当金の益金不算入枠の縮小、研究開発費減税の縮小などに代替財源が求められました。

 まず「法人事業税」ですが、これは国税ではなく地方税で資本金が1億円超の中堅企業・大企業に適用されています。「所得割」と言われる部分と、「外形標準課税部分」の二つに分けられ、所得割の部分は企業の利益に対して一定税率で課税されます。今回は、この税率を引き下げる一方、外形標準課税部分を増額することになりました。この外形標準課税部分は企業の利益ばかりでなく賃金、それから資本金などに一定割合で掛けられます。つまり、所得割分の税率引き下げによって、黒字の大企業、中堅企業には減税になりますが、外形標準課税部分の増額によって赤字企業など、あまり利益の上がっていない中堅企業・大企業がその部分を負担することになります。二番目の「欠損金の繰越控除の縮小」については、通常、企業は利益に応じて法人税を払いますが、逆に損をしたときにマイナスの税金を税務署から受け取れる訳ではありません。その代わり、翌年以降一定期間に計上する利益から、過去に出した損失金額の一定限度を差し引くという形で税金が軽減される制度があります。嘗て大銀行が不良債権問題の処理で巨額の損失を出した後、しばらく大きな利益を出しながらも税金を払ってなかったということが問題になったことを覚えておられるかも知れません。今回、控除可能な期間が延長される一方、控除できる金額の限度が損失額の8割から5割に減額されることになりました。次の「受取配当金の益金不算入枠の縮小」は、従来、企業が保有している株式から受け取る配当金について、持分が25%以上の出資先企業からの分は非課税、25%未満の分については半分だけ非課税ということになっていました。これは、子会社支配などを目的とした投資については課税面で配慮する一方で、運用目的の場合には通常に近い形で課税するという発想からきています。今回、この非課税となる場合の持分がの25%から1/3以上に引き上げられ、また、持分が5%未満の場合には従来の5割でなく8割が課税されることになりました。最後の「研究開発減税の縮小」については、従来、研究開発費の一部、試験研究費といわれる部分が法人税額から30%控除できましたが、それが25%に縮小されました。

 これ等が、今回の法人実効税率引き下げのための代替財源となった訳ですが、この結果、法人税率引き下げによる減税額1兆3千億円余りに対し、1兆1千億円程度がリカバリーされることになり、2千億円程度が財界の求めるネット減税ということになります。
こうした増減税の組み合わせの効果を考えると、高収益大企業を中心に黒字中堅・中小企業が恩恵を受ける分、赤字大企業・中堅企業がその分を負担する形になっています。一方、同じ赤字企業でも、圧倒的に数の多い赤字中小企業にはほとんど影響が及んでいません。同時に、成長戦略の一環としての税制改革であるにも拘らず、研究開発減税の縮小などは成長抑制的な面を持っています。こうしたことを考え合わせると、確かに成長促進的な部分を含んではいますが、「成長戦略」としての性格がそれ程鮮明ではありません。そもそも、「課税ベースの拡大」という発想には、公正な税負担の思想に基いて、「担税すべき主体に広く課税する」という思想があるべきですが、こうして見ると「税収確保」が優先し、代替財源の確保が比較的抵抗の少ない所にしわ寄せされた面があることは否めません。今回は、「成長」と「財政安定化」の綱引きの中、時間的な制約もあり止むを得ない面もあったかと思われますが、「骨太の改革」で安部政権が約束した税実効税率20%台に向けて、法人税改革はこれからも続くはずです。今後、よりはっきりと狙いに沿った改革を実現することが期待されます。
 
 まとめ:今回の法人税改革では、代替財源としての外形標準課税の拡大などの内容と一体として見た場合、時間的な制約もあった故か、「成長戦略」としての色彩がそれほど鮮明とは言い難い面がある。改革は続くはずなので、今後に期待したいと思います。

分野: ファイナンシャルマネジメント 国際経営 |スピーカー: 平松拓

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