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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 日本の株価について2 (企業財務管理、国際金融/平松拓)

日本の株価について2

平松拓 企業財務管理、国際金融

15/06/26

前回は、最近の株価回復の基本的な背景として、アベノミクスによる金融緩和と円安等を起点とした日本企業の業績回復があることを説明しました。今回はその他の要因として触れた、政府や日銀などの公的部門による直接・間接の株式市場の需給に働きかける政策について説明します。

 ここでいう公的部門による働きかけ、或いは介入にはどのようなものがあるでしょうか。
まず、直接的に需給に影響を与えるものとして、日銀が金融緩和政策の一環として2010年12月から行って来ている指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れがあります。これは、日銀が株式そのものを購入する訳ではありませんが、TOPIXという株価指数に連動する投資信託を購入することで、TOPIXに含まれる株式を購入したのと同様の需給面での効果を市場に与えることになります。日銀は従来の年1兆円程度のペースでこのETFの購入を行ってきましたが、最近、それを年3兆円程度に増やすことを言明しています。

 また、政府は2014年1月からNISA(少額投資非課税制度)を導入しました。これは、証券会社や銀行が盛んに宣伝していますので御存知の方も多いでしょうが、個人が専用の口座を通じて年間100万円迄の株式投資をした場合、その配当や売却益が非課税となるものです。日本では個人の株式保有率が米国などと比較して非常に低いことが、株価の低迷や株価が変動しやすい一つの原因となっていると考えられていることが導入の背景にあると言われています。2014年内に1.4兆円のNISAを通じた投資が行われたとされていますが、未だ枠余裕があることに加え、政府はさらに枠の拡充も考えていると伝えられています。

 更に、2014年10月からはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が年金資産運用における内外株式での運用割合を大幅に増加すると発表したことがあります。GPIFというのは嘗ては年金福祉事業団と呼ばれていた政府の外郭団体ですが、130兆円もの公的年金資産を運用する、世界最大の年金運用機関です。従来、全体の運用資産のいずれも12%ずつとしていた国内株式、海外株式での運用割合を、それぞれ25%へと倍以上に引上げた訳です。つまり、これがフルに実行されれば、日本株への投資額は約17兆円増加することになります。更に、許容される基準からの乖離幅も従来の6%から9%へと拡大させていますので、それ以上のインパクトを市場にもたらす可能性もあります。

 これ等に加えて運用資産200兆円といわれる郵貯銀行も、運用資産の一部を株式に振り分けることを検討していると伝えられています。郵貯に限らずこうした公的機関による巨額の株式市場での運用は、それに同調する投資も呼び込んで需要を大きく増加させて株価を強く底支えする効果があるとされています。

 さらに政府の対応は、間接的にも需給に影響を与えています。今や、国際間を活発に移動する短期資金の規模は、「兆円」を超えて、「京円」という単位で論じられますが、こうした巨額の資金の一部が日本の株式市場に投資資金として流入することによっても、株価は大きく変動することになります。ここまでの株価回復局面でも海外の投資家が重要な役割を果たしてきたと考えられますが、こうした海外投資家も意識して、アベノミクスの中では、2つの施策が打たれています。それ等はステュアードシップ・コードの導入とコーポレート・ガバナンス・コードの導入で、両者はいずれも英国の制度を参考に金融庁の働きかけにより導入されるものです。

 まず、前者のステュアードシップ・コードとは、生命保険会社や投資信託運用会社など機関投資家の側に、投資先企業の株主総会などに臨むに当たっての行動原則を導入するよう働きかけたものです。また、後者のコーポレート・ガバナンス・コードは逆に企業側への働きかけとして、株主の権利や取締役会の役割、役員報酬のあり方など、上場企業が守るべき行動規範の原則を掲げたもので、上場企業はこのコードを採用するか、さもなければ採用しない理由を説明することを義務付けるものです。これまで国内の機関投資家は、ともすれば企業にとって「物言わぬ安定株主」と看做され、本来の経営監視機能を果たしてきたとは言い難い面がありました。その結果、企業による株主軽視を招き、それが日本の株式市場における問題点として海外投資家より再三指摘されていましたが、これらのコードの導入により、問題点の改善を図ろうとしたものといえます。こうした動きを好感して、海外の投資資金が日本市場に追加で流入し、現在の株価を支えている面があります。

 こうした政府になど公的機関による直接・間接の株価支持があるとは言え、そのことがどれだけ株式投資のリスクを軽減しているかというと、難しい面があります。世界を駆け回る短期資金は既に述べたように巨額でボラタイルな移動を繰り返しています。少しでも高い利回りを求めて瞬時に移動します。日本の株式市場の動きと海外の株式市場との連動性も強まっていることもその一つの表れです。つまり、海外発の株価の急落といったことも十分にあり得るということを意識しておく必要があります。また、地政学的な事象などにより投資家がリスク回避的姿勢を取ると、株式市場など相対的にリスクの高い市場から、一斉に資金が引き揚げることも想定されます。要は、株式に投資するにしても様々なリスクを認識した上で、自身に見合った規模で、飽くまで自己責任で投資することが重要だという点には変わりないということです。

 まとめ:今回の株価の回復の背景には、日本経済や日本企業の業績回復に加えて、政府・日銀などの公的部門による施策が、直接・間接に株式市場の需給に影響を与えていることも反映していると考えられます。これらは当面は需給面で株価を支える方向に働くとしても、株式市場にも流入している巨額にして移動性の高い短期資金の存在を考えると、リスクの評価をおろそかにすることはできないでしょう。

分野: ファイナンシャルマネジメント 国際経営 |スピーカー: 平松拓

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