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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 法人税改革1 (企業財務管理、国際金融/平松拓)

法人税改革1

平松拓 企業財務管理、国際金融

15/06/18

 今日は、「法人税改革」についてお話をしたいと思います。消費税引き上げの問題の影に隠れ、あまり目立たなかったのですが、安倍内閣は一昨年来、成長戦略の一環として法人税改革に取り組んできています。その結果、法人税の実効税率が本年度2.51%、来年度も0.78%引下げられることが決まっています。今回と次回の2回を使って、その背景や内容について触れてみます。

 日本の法人所得に対する税金は、震災復興のための特別な税金を除くと、国税としての「法人税」、地方税としての「法人住民税」、「法人事業税」、そして「地方法人特別税」などからなります。これらを総合した実効税率は、長らく40%台にありました。それが平成23年度の税制改正により、昨年度までに34.62%という水準にまで下がってきました。今回の改革は、これをさらに引下げようというものです。

 税率を引下げる背景には、一つには財界からの強い働きかけがあります。その裏には、諸外国が競って引き下げを行っていること、その中で日本の法人税率が高止まりしていることがあります。主要国の税率で見ると、日本に比較的近いのは40%超のアメリカと約33%のフランスぐらいです。ドイツやイギリス、アジアでも中国や韓国は20%台の半ばとなっており、シンガポールに至っては17%と大差がついています。税率を下げると直接的には税収が減るため外国の政府も嫌がりそうなものですが、グローバル化が進んだ今日、海外企業の直接投資を呼び込むために引下げに動いているわけです。直接投資では圧倒的流出超過となっていることから、外資の受入を増やしたいという日本政府の立場を代弁する一方、財界としても円高やデフレの是正と共に、これまで日本企業の重荷となってきた高い法人税率をこの際何とかしたいという自身の要望も織り込んで、アジア近隣諸国並みの25%程度への引き下げを主張してきているわけです。

 アメリカでは企業がよく黙っているなと感じられるかもしれませんけれど、高い法人税率が問題にはなっています。ただ、投資促進目的などの控除が多く、実質的な税負担率は20%後半程度にとどまるという調査結果もあります。また昨今では、ゼネラル・エレクトリックやスターバックス、アップル、グーグルといった名だたる高収益企業が、税率の低いアイルランドやオランダに置いた子会社に所得を移転し、法人税をほとんど納めていないといったことが問題化しています。つまり、国際間の税制の狭間を突いて自発的に税率引き下げに動いてしまっている訳です。更に最近では、税率の低い国に本社を置く企業を買収して、そこに新しい会社の本社を置くというような、税逃れ目的が疑われるM&A案件も目立ち、税務当局も注目しています。

 日本は対GDPで200%超という世界でまれに見る大きさの政府債務を抱えており、2020年の「プライマリー・バランス」(国債の利払い経費を除いた国の財政収支)を黒字化するという目標を掲げているところでで、その税収が大幅に減るような改革を行う余裕はありません。その結果、税率引き下げによる成長か、財政健全化か、将来の財政均衡のための道筋を巡って綱引きが行われてきたわけですけれども、安倍内閣は昨年の「骨太の方針」(「経済財政運営と改革の基本方針」)の中で、成長戦略の一環として数年で実効税率を20%台に下げることを表明しました。ただ、具体的な内容はその時点では決まっていなかったため、議論はその後も紆余曲折を経ることになり、その中で経団連は、欧州では法人税率の引き下げが賃上げ、消費の活性化、企業業績の改善を経て、結果的に税収増に繋がった、という話を持ち出し、NET減税を働きかけたりしました。しかし、経済環境も違っている可能性もありますし、デフレ脱却の緒についたばかりの日本で同様の展開が見られる保証もないため、結局財源探しが本年まで続きました。結論としては、税率を引き下げる代わりに、法人に対する税金の枠内で課税ベースを拡大してほぼ代替税源を確保するという形で、今回の法人税改革が実現しました。具体的な内容については、また次回取り上げたいと思います。

 まとめ:深刻な財政問題を抱えて消費税の再引き上げを控えている我が国ですが、今回、法人税率の引き下げが実現しました。国際比で高止まりしている法人税率の引下げを通じて、直接投資の受入や日本企業の競争力強化など、経済の成長に繋げるという狙いがある訳ですが、財政の制約が強い中で、結果としては同じく法人に対する税収の中で代替財源を確保する増減税組合せという形にならざるを得ませんでした。

分野: ファイナンシャルマネジメント 国際経営 |スピーカー: 平松拓

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