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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 豊作貧乏 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

豊作貧乏

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

15/05/12

  今日は、「農家が豊作を悲しむことがある」というお話をしましょう。
もちろん、豊作を喜ぶ農家の方が圧倒的に多いのでしょうが、あくまでも経済学の理屈では、そういう事もあり得る、という事をご理解いただきたいと思います。

  最初に確認したい事は、物の値段は「売り注文と買い注文の数が同じになるように決まる」という事です。
まず、白菜についてアンケートをした所、300円なら買いたい人が8人、200円なら買いたい人が10人、100円なら買いたい人が12人いたとします。農家が2件あり、ともに今年の生産量が5個だったとします。
市場に並ぶ白菜は10個です。200円なら、買いたい人も10人ですから、買い注文と売り注文の数が等しくなります。したがって、今年の白菜は1個200円になります。経済学用語で言えば、「需要と供給が一致する価格」は200円だ、という事になります。農家が5個ずつ売りますから、収入はそれぞれ1000円です。

  翌年、白菜が豊作で、農家が6個ずつ収穫できたとします。12個がイチバに並びます。価格が100円であれば、売り注文と買い注文が一致しますので、今年の白菜は100円です。農家が6個ずつ売りますから、収入はそれぞれ600円です。豊作だったのに、昨年より貧しくなってしまいました。
3年目は凶作で、農家が4個ずつしか収穫できなかったとします。8個が市場に並びます。300円でも買いたいという人が8人いますから、価格は300円になります。農家が4個ずつ売りますから、収入はそれぞれ1200円です。凶作だったのに、収入は過去最高になりました。どうしてそんな事が起きるのでしょうか?
それは、値段が動いても買い注文の数があまり動かない、という白菜の性質から来ているのです。リンゴであれば、値段が下がれば人々はミカンを買わずにリンゴを買いますから、リンゴの買い注文は大きく増えます。しかし、白菜は値段が下がってもキャベツの代わりに白菜を食べるという人はいませんから、白菜の買い注文はあまり増えないのです。
これは、値段が下がっても売り上げ数が増えないため、収入が減るという事を意味しています。一方、値段が上がっても売り上げ数が減らないため、収入は増えます。経済額の用語で言えば、価格が動いても売り上げ数量があまり動かない事を「需要の価格弾力性が小さい」と言います。農産物の価格弾力性が小さいと、「豊作になると農家が貧しくなり、不作になると農家が豊かになる」という事が起きるのです。
値段が変わっても買い注文の数が変わらない場合には、価格弾力性が小さいく、その場合には豊作になると農家が貧しくなるわけです。

  一般に、必需品は価格弾力性が低いと言われています。たとえば昔のコメは必需品でした。コメ以外に食べるものがないので、値段が高くてもコメを買わざるを得ず、反対に値段が安くても腹一杯食べたらそれ以上は買わないからです。そのため、不作の年にはコメの値段が大きく跳ね上がり、それを見越して買い占めや売り惜しみなども起きたわけです。
今であれば、パンがあるためそれほど値上がりする事は考えにくいでしょう。しかし、今でも穀物全体は必需品です。したがって、世界的な天候不順で穀物の出来が悪いと、穀物の価格は大きく上昇しやすいと言えます。
更に悪い事に、穀物のそうした性格を知っている投機家たちが、不作の噂が流れると穀物を大量に仕入れるので、ますます値上がりする、という事も起きているわけです。
ガソリンも、必需品に近いかも知れません。通勤や買い物等で使っている自動車はガソリンの値段が高くても使わないわけに行かないからです。したがって、アラブの国で戦争があって原油の供給が少し減っただけでも、世界中の原油の値段が大幅に値上がりする事になります。投機家がいることで更に値上がり幅が大きくなる点は、穀物と同様です。
なお、経済学では「必需品」という言葉は日常用語と異なる意味で使われていますが、ここでは必需品という言葉を日常用語の意味で使っています。つまり、「消費者にとって、一定量は必要だけれど、それ以上は不要であり、値段が高くても安くても買う量が決まっているもの」という意味です。
先ほど例に挙げた白菜は、必需品とは言えませんが、豊作だと大幅に値下がりする事が知られています。これは、鍋に入れる以外に主立った使い道がないため、白菜が安くなっても需要があまり増えないためです。
白菜が安くなったら鍋料理を食べる回数が増えるかというと、それもありません。それは、白菜の値段が鍋の値段に占める比率が小さいからです。白菜が大幅に値下がりしても、他の材料が値下がりしなければ、鍋のコストはそれほど下がらないので、鍋を食べる回数は増えず、したがって白菜の需要もそれほど増えないからです。

  まとめ:白菜は、豊作だと価格が大幅に値下がりし、農家はかえって貧しくなる事があります。価格弾力性が低いため、供給量の増減によって価格が大幅に変動するためです。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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