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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 市場の失敗 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

市場の失敗

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

15/04/21

今日は、市場の役割について御話します。前回、物の値段の決まり方について御話しました。政府が決めない限り、物の値段は需要と供給が一致する所に決まる、というのが結論でした。簡単に復習しておきましょう。

ある町のキャベツ市場で王様がアンケートをとったら、売りたい人は300円なら50人、200円なら40人、100円なら30人、買いたい人は300円なら30人、200円なら40人、100円なら50人だという事でした。値段が高ければ、たとえば300円ならば、売りたい人は多いけれども、お腹がすいた人だけが買いたいので、売りたい人の方が多くなります。値段が安ければ、たとえば100円ならば、売らずに豚のエサにする農家が出て来る一方で、それほどお腹がすいていない人も買いたいと思うので、買いたい人の方が多くなります。売りたい人の方が多ければ、売り手の間で競争がおきて値段が下がって行き、買いたい人の方が多ければ買い手の間で競争がおきて値段が上がって行き、売りたい人と買いたい人の人数が同じになった所で値段が決まるのです。ここまでが前回の復習です。

今回は、政府が決めないと、物事がうまくいく、という御話をします。神様は見えないし、神様の手も見えないが、政府が決めなければ神様の手がうまく経済を動かして下さる、という意味で、「神の見えざる手」と呼ばれています。これは経済学者アダム・スミスの言葉です。経済学の難しい言葉で言えば、「市場メカニズム」という事になります。彼は2〜300年前の人で、経済学を作った人です。アダム・スミスが、「王様は経済の事に手出し口出ししないで下さい。そうすれば神様が見えない手で経済の事をうまく処理して下さいます」と言いました。これが経済学の始まりです。

それでは、神様に任せるとどのようにうまくいくのでしょうか。この街で、突然キャベツの人気が高まったとします。キャベツを買いたい人が20人増えたとすると、300円で買いたい人が50人、200円で60人、100円で70人になります。そうなると、売り注文と買い注文が等しくなるのは300円の時ですから、キャベツの値段は300円に値上がりします。買いたい人が増えれば値上がりし、減れば値下がりする、売りたい人が増えれば値下がりし、減れば値上がりする、という事です。キャベツの値段が上がったので、昨日より人間の食べるキャベツが10個増えました。人気の高まった物が沢山イチバに並ぶというのは素晴らしい事です。その分、豚のエサが減りましたが、人間に人気の無くなった別の野菜がイチバに並ばなくなるので、豚はそれを食べれば大丈夫でしょう。

一方で、王様が手出し口出しするとどのようになるのでしょうか。たとえば心優しい王様が、「人民に安くキャベツを食べさせてやりたい」と考えて、「キャベツの値段は1個100円だ」という法律を作ったとします。街の人はキャベツが安くなるので喜びます。でも、しばらくすると、がっかりします。それは、市場に並んでいるキャベツが30個しかないのに、並んでいる人が50人もいるからです。昨日までは、市場に40個のキャベツが並んでいたのに、今日は30個しかありません。値段が安すぎたので、10個は農家が豚のエサにしてしまったのです。結局、人々が食べる事のできるキャベツは減ってしまいました。

もう一つ問題があります。昨日までは、「とてもお腹がすいているから、300円出してもキャベツが食べたい」という人は、全員キャベツにありついていました。「かなりお腹がすいているから200円までなら出してもキャベツが食べたい」という人も、全員キャベツにありついていました。キャベツにありつけなかったのは、あまりお腹がすいていない人だけだったのです。しかし今日は、先に列に並んだ人がキャベツにありついています。あまりお腹がすいていない人でもキャベツにありついている人がいる一方で、とてもお腹がすいていてもキャベツにありつけない人がいます。

つまり、街の人々も昨日より不幸になったのです。農家が昨日より不幸になった事は当然です。こうして、心優しい王様の作った法律は、人民のためにならない事がわかり、すぐに廃止されました。

このように、政府が手出し口出しすると、結局はうまくいかない、ということで、なるべく市場に任せよう、というのが経済学の基本的な考え方です。規制緩和という言葉を耳にしますが、これは規制が神の見えざる手を邪魔しているから取り除こう、という事なのです。

たとえば最低賃金という制度があります。あまり安い賃金で人を雇ってはいけない、というものです。貧しい労働者の権利を守るための制度なのですが、これが本当に貧しい人の役にたっているか否かは、よくわかりません。なぜならば、会社が「そんなに高い賃金を払うくらいなら、国内の工場を閉じて外国に工場を作ろう」と考えるかもしれないからです。多くの会社が国内の工場を閉じれば、労働者たちは失業して一層貧しくなってしまうかもしれません。心の優しい王様が人民のためを思って法律を作っても、それが人民のためにならない、という話と同じことですね。

まとめ:神様の見えざる手が、経済を上手に導いて下さるので、政府は経済の事になるべく手出し口出しするべきでない、というのが経済学の基本的な考え方です。規制緩和を進めよう、というわけです。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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