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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > アベノミクスと消費者物価 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

アベノミクスと消費者物価

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

15/03/20


今回は消費者物価上昇率についてです。デフレからの脱却がアベノミクスの最大の目標の一つでしたので、本来であれば「アベノミクスによる大きな変化の一つが、デフレからインフレに変わった事です」、と言いたいのですが、そうも行きません。
アベノミクス前の消費者物価上昇率が年平均でマイナス0.3%程度であり、最近の消費者物価上昇率が消費税の影響を除くと1%を大きく下回った水準である事を考えると、誤差の範囲内と言っても良いほどです。
アベノミクスによっても物価が上がらなかった理由は、3つあります。一つは世の中にお金が出回らなかったこと、一つは景気が回復しはじめてから物価が上がりはじめるまでには時間がかかること、一つはアベノミクスとは全く無関係に原油価格が大幅に値下がりしたこと、です。
安倍総理と黒田日銀総裁は、日銀が金融を緩和すれば世の中にお金が出回り、お金より物の方が貴重になるので、物の値段が上がるだろう、と考えていたわけです。
そこで日銀は大量の国債を銀行から買い取って、代わりに札束を銀行に渡したわけですが、銀行が受け取った札束を貸出に使わず、そのまま日銀に貯金してしまったため、お金が世の中に出て行かなかったのですね。
次に、景気と物価の関係です。景気が回復すると物価が上がりやすくなります。一つには、売れない店が値引きをして無理に売ろうとするケースが減るからです。むしろ、売れ行き好調な店は強気になって、少しぐらい値上げしても大丈夫だろうと考えるようになるかも知れません。ただ、今回はこうした動きは目立っていないようです。特に消費税率が上がってからは、景気の強さが今ひとつなので、強気になって値上げをする売り手はそれほど多くないのです。
景気が回復すると、賃金が上がって、それが企業のコスト上昇になって企業が値上げをせざるを得ない、という事も起こるのですが、これには長い時間がかかるので、そうした動きは今の所、建設関係などに限られていて、全体の物価を押し上げるには至っていません。
景気が回復して、企業の売上げが増えても、すぐに人手不足になるわけではありません。不況期にヒマそうにしていた従業員が忙しく働くようになり、場合によっては残業もするようになり、それでも人手が足りない時になって、はじめて企業が新しい人を採用するわけです。
企業が採用を活発化しても、すぐには賃金は上がりません。まず、失業している人が仕事を見つけます。次に、不況期に仕事探しを諦めていた人々が仕事を探し始めます。そうした人々も仕事を見つけると、ようやく「人手不足」と言われるようになってきます。
そうなると、給料が上がると期待したくなりますが、なかなかそうは行かないのです。パートやアルバイトについては、たしかに人手不足になると、時給が上がって行きます。時給を上げないと、必要な人数が集まらないからです。しかし、正社員については、そうではありません。終身雇用なので、給料を上げても上げなくても人数は変わらないのです。
バブルの前までは、日本企業は儲かると従業員の給料を上げるのが普通でしたが、バブル崩壊後は、儲かっても給料は上げずに配当や内部留保を増やす会社が増えました。バブルの前までは、会社は家族、という雰囲気だったのですが、会社は株主のもので、社員は金儲けの道具、という雰囲気に少しずつ変わって来たのでしょう。
アルバイトの時給や正社員の給料が上がると、それが企業のコスト上昇になって物価が上がる、という理屈についても、思った以上に時間がかかります。景気が悪い時にはヒマそうにしていた従業員が、景気がよくなると忙しく働くようになります。そうなると、従業員の給料は上がっても、一人の従業員が前よりも多くのものを作るので、製品一個あたりの人件費は増えないのです。
つまり、景気が相当よくなって、給料が相当高くなって、はじめて物価が上がるようになるのです。
今回は、ようやく正社員の給料が上がり始めた段階ですので、これが消費者物価を上昇させるまでには、まだ暫く時間がかかるでしょう。

原油価格が下がると、比較的短時間でガソリン価格などが下がりますので、こちらの影響は既に大きく出ています。上がる力は時間がかかり、下がる力はすぐに効くので、なかなか物価が上がらない、という事ですね。
ところで、ニューヨークで原油が半値になったわりには、日本のガソリンは半値にまで下がっていません。ガソリンの値段は、輸入した原油の値段だけではないからです。ガソリンスタンドの社員の給料や、ガソリン税などを合計したものがガソリンの値段です。その中で、半値になったのは輸入されたガソリンだけで、それ以外のコストは以前と変わっていないのです。だからガソリンの値段は半分にはならないのです。残念なようですが、ニューヨークの原油の値段が二倍になってもガソリンの値段は2倍にはなりませんから、悪いことばかりではありません。

まとめ: 金融緩和でデフレを止めるという日銀の目論見は、資金が世の中に出回らなかったために成功しませんでした。景気が回復して物価が上がるという事はありそうですが、長い時間がかかるので、しばらく待つ必要があります。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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