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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 原油価格 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

原油価格

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

15/03/11


今回は、原油価格が大幅に値下がりしたという話です。最近、ガソリンが安くなっていることに気付いている方も多いと思いますが、その原因は、ニューヨークの市場で原油価格が暴落した事なのです。昨年の秋から冬にかけて、ニューヨーク市場の原油の値段が半分になったのです。世界中で取引される原油の値段は、ニューヨーク市場の値段を参考にして決められていますから、日本が輸入する原油の値段も大幅にさがり、それによってガソリンの値段も大きく下がった、というわけです。
原油価格の暴落は、いろいろな理由が重なった結果です。アメリカでシェール・オイルというものが安く大量に生産されるようになったこと、中国やヨーロッパの景気が今ひとつで原油の需要が減っていること、サウジアラビアが原油価格を高値に保つために減産すると思われていたのが減産しなかったこと、そしてニューヨークの原油取引に投機家たちが大勢参加していること、が主な理由でしょう。
まず、シェール・オイルの話ですが、これは原油を掘る技術が進歩して、アメリカを中心として今まで掘れない所にあった原油を掘り出せるようになったというものです。これにより、アメリカの原油の生産量が大幅に増えました。同じように、天然ガスの生産量も増えました。そこで、アメリカがアラブ諸国から原油を輸入しなくなり、世界的に原油が余るようになってきたのです。
中国やヨーロッパの景気が今ひとつパッとしないため、中国もヨーロッパも原油の需要が減っています。これも、世界的に原油が余る原因となっています。
これまでは、世界的に原油が余って値段が下がって来ると、サウジアラビアが生産量を減らして、原油の値段が下がらないようにしていました。そこで、今回もそうするだろうと皆が思っていましたが、今回はサウジアラビアが生産量を減らさなかったのです。
サウジアラビアが今までと違う行動をとった理由については、いろいろな噂話はありますが、実は、よくわからないのです。比較的広く信じられているのは、アメリカのシェール・オイルの会社を破産させようとしている、という噂です。シェール・オイルを掘るためのコストは結構高いので、原油の値段が高いときは生産が増えるけれども、原油の値段がある程度下がると赤字になって倒産してしまうのだそうです。サウジアラビアにとっては、新たに登場したライバルを早めに潰してしまおう、という考え方は、理屈にかなっているので、この噂は本当かも知れません。シェール・オイルの会社が破産すれば、ふたたびアメリカがアラブから石油を輸入するようになるでしょうし、世界的に石油の供給が減ることで石油の値段も上がるはずだからです。
ただ、原油の値段が再び上がったら、新しい会社がアメリカでシェール・オイルを掘るかもしれません。シェール・オイルは掘ると決めてから原油が出て来るまでに、それほど長い時間がかからないという話も聞きますので、サウジアラビアの作戦がどれくらい成功するのかは、よくわからないですね。
もう一つの噂は、テロリスト集団であるイスラミックステートを困らせるためだ、というものです。イスラミックステートは油田を占領しているので、原油を売った代金が資金源の一つとなっています。そこで、原油の値段が暴落すれば、テロリストの資金が減って世界が平和になるだろう、というわけです。
もう一つの噂は、かなり疑わしいですが、アメリカに頼まれたというものです。世界を見渡すと、原油を輸出している国はアメリカと仲の悪い国が多いので、アメリカはそうした国々を懲らしめようとしている、というのです。
今回の原油安で大いに困っているのがロシアです。ロシアはウクライナを巡って欧米諸国と対立していて、経済制裁の対象ともなっていますから、ロシアを困らせることでウクライナを巡る交渉を有利に運ぼう、と考えるアメリカ人がいても不思議ではないでしょう。
次は、投機家についてです。ニューヨークで取引されているのは、ドラム缶にはいった原油そのものではなくて、原油の先物といわれるものなのです。これは、たとえば年末に原油を売り買いする時の値段を今から約束しておこう、という取引ですから、原油を持っていない人でも参加できるのです。たとえば私が原油の値上がりを予想したとします。私は、Aさんから年末に原油を買う約束をします。当然、値段は今の値段です。来月になって、予想どおり原油が値上がりしたとします。私は、Bさんに年末に原油を売る約束をします。当然値段は来月の高い値段です。あとは年末にAさんから原油を受け取ってBさんに渡せば利益が得られるのですが、実際には原油の受け渡しはせず、利益だけ受け取れる仕組みになっているのです。
そうなると、株式投資と同じですから、皆が値上がりすると思えば皆が買うので実際に値上がりする、皆が値下がりすると思えば皆が売るので実際に値下がりする、という事がニューヨークの原油市場で起きることになります。
今回は、サウジアラビアが生産量を減らさないと宣言したことで、世界中の投機家たちが一斉に原油を売ったので、値段が暴落したわけです。
なお、原油の値段は、過去10年ほど高値で推移していましたが、思い出してみると、10年ほど前までは原油は結構安かったのです。10年ほど前に原油が値上がりして今くらいの値段になった時には、「こんなに値上がりして世界経済は大丈夫だろうか」と心配されていたのです。
それが今ではすごく安くなったように感じるのですから、人間の感覚は面白いものですね。

まとめ:原油価格が暴落したのは、アメリカでシェール・オイルが安く大量に生産されるようになったこと、中国やヨーロッパの景気が今ひとつで原油の需要が減っていること、サウジアラビアが減産しなかったこと、投機家が売ったこと、などが原因でした。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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