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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > マネジメント・コントロールにおける責任機関(責任センター)について②(移転価格) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

マネジメント・コントロールにおける責任機関(責任センター)について②(移転価格)

平松拓 企業財務管理、国際金融

15/03/17


前回に引き続き、マネジメント・コントロールについて話します。今回は特に、移転価格に着目してみましょう。

移転価格とは、企業あるいは企業グループ内における取引価格のことを指します。前回、企業組織における責任センターについてお話ししましたが、移転価格は企業内の組織単位として、利益についての達成責任を負う利益センターのパフォーマンスを評価する際に極めて重要な意味を持ちます。企業内での取引において、利益センターでは他の責任センターからの仕入れ価格が低ければ低いほど利益が大きくなります。逆に、販売する側の利益センターにとってみれば、販売価格が低いことは利益が小さいことを意味します。

それでは、どのような移転価格を用いることが、企業として望ましいのでしょうか。一般には、それぞれの利益センターが外部の市場との間で取引する場合の価格を移転価格として採用することが、理想とされています。もっとも企業内での取引の場合、広告宣伝費や販売促進費がかかりませんので、その分を調整した価格ということになります。こうして決められた移転価格を企業内の取引に用いれば、本来、市場を通して調達や供給をした方が収益性に優れるにも関わらず、企業内において収益性の乏しい内製化を行っている、といった事態を避けることができます。また、外部市場における取引価格で取引した結果どこかの利益センターで採算が合わなくなった場合には、その業務自体を考え直す機会につながります。自社で生産するよりも中間製品を市場で購入したり、自社で仕上げるよりも中間製品のまま市場で販売したりすることで、企業全体としての利益が上がることは少なくありません。

ところが企業によっては、内部の組織単位が外部と取引することを許していなかったり、専用性が高い商品を取り扱っているために外部調達できない、外部には販売できないといったケースが結構あります。こうした場合には、複数の外部業者への価格の照会を行ったり、外部でも取引されている類似品の取引価格を参考にしたりすることが考えられます。しかし、空の入札のようなことを何度も繰り返すわけにはいきませんし、市場において類似品が見つかるとも限りません。その場合には、売り手の製造コストに利潤率(マーク・アップ率)を乗じた、積み上げベースの価格を利用せざるを得ません。

上記以外の方法として、①利益センター間による協議や、②まず変動費用を請求して、後に固定費用や利益分など補填費用を請求するという二段階価格があり得ます。後者は通常、移転価格を両者間の協議で決める際に問題になるのが販売側の利益センターにおける固定費用と利益の上乗せ分なので、先ずは問題の少ない変動費用から請求し、事後的に固定費と利益分を請求するものです。他にも、③最終の売上から売り手と買い手の両センターがそれぞれの変動費用を除いた部分、すなわち貢献利益や限界利益を両者で配分する利益配分法があります。また、④双方の利益センターの言い値をそのまま採用し、売値と買値の間の差を本部が補填するという二重価格も考えられます。二重価格を採用した場合、双方が市場での価格や実際の収益性を誤解したままにビジネスを展開する可能性があり、その点では問題があります。ケースバイケースで、これらを工夫しつつ用いていくことが重要となります。

また、企業内でサプライチェーンを司る各組織が利益センターとなっているような場合で、それ等の間が移転価格で取引されているような場合には、それぞれの組織単位が固定費や利益を上乗せして移転価格を設定していると、最終販売部門において企業全体の貢献利益(限界利益)が見えにくくなるので注意が必要です。ここで最終部門が、仕入れ先センターとの間の移転価格を前提に外部顧客との取引を判断すると、固定費回収や利益の獲得のチャンスを逃し、思わぬ損失を出す可能性すらあります。特に企業内に遊休設備を抱えている時には、企業全体にとっての変動コストをわずかでも上回る価格で最終的に外部に販売し、固定費の回収を図ることが重要となってきます。こうした状況下にあっては、部門間でコミュニケーションを密にし、互いの状況を明らかにしなければなりません。調整がうまくいかないようであれば、これらの利益センターの上に立つシニアマネジメントが仲介に乗り出さなければなりません。

今日の話をまとめます。
企業は適切な移転価格を採用することで、利益センター化した企業内組織を簡素な形で管理し、戦略の実現や経営目的を達成することが期待されます。しかし、理想的な移転価格の設定は容易ではなく、移転価格の欠点をも意識した上で、注意深く用いる必要があります。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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