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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > アベノミクスと景気 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

アベノミクスと景気

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

15/02/20

まとめ: アベノミクスで景気が回復した事は間違いありません。その後、消費税増税により景気が悪化しましたが、これはアベノミクスの失敗ではありません。格差が拡大したという見方もありますが、失業と倒産が減った事を考えると、そうとも言い切れません。


今回は、アベノミクスで景気が回復した、という御話です。
アベノミクスの第三の矢は、景気対策ではなく、日本経済の生産力を高めようという供給側の話ですから、第三の矢のおかげで景気が回復した、という事はありません。
第二の矢は、公共投資です。アベノミクスが始まった頃は、公共投資が景気の回復に大いに貢献しました。橋や道路を作るために失業者を雇うのですから、失業者が減って景気が良くなるのは当然です。
しかし、しばらくすると、公共投資が景気を押し上げる効果は、次第に小さくなって行きました。次第に建設労働者が人手不足になり、発注しても労働者が集まらないので工事が進まない、というケースが増えて来たのです。無理に工事を進めようとすると、今度は民間企業の設備投資が人手不足で進まなくなるので、やはり景気回復にはあまり役立ちません。
このように、二年目の公共投資はあまり景気回復に役立っていませんが、一年目の公共投資が起爆剤となって景気の好循環が生じた事の効果は、今でも残っています。失業者が公共投資に雇われて給料をもらうと、壊れていたテレビを買うかも知れません。そうなると、テレビの工場が増産するために新しく失業者を雇うかも知れません。雇われた失業者は壊れていた時計を買うかも知れません。こうして次々と失業者が雇われて行くのです。

第一の矢は、金融緩和です。これについては、前回御話したように、世の中にお金を出回らせる事が出来ませんでしたが、株とドルを高くする効果がありました。これによって景気が良くなったのです。ただ、これも当初の予想と違う経過を辿ったのです。
株価が上がったので、株を持っているお金持ちが高級品を買ったのは予想通りでしたが、庶民の間でプチ贅沢が流行ったのは、予想外でした。庶民にとっては、景気が回復してから給料が上がるまで、時間がかかる一方で、輸入品が円安で値上がりしたため、生活は楽ではなかったはずです。それでもプレミアムビールが売れたりしました。「景気は気から」と言われるように、何となく景気が良さそうなムードが漂っていたために、財布の紐が緩んだのでしょう。
ドル高によって輸出が増えると思われていましたが、ドル高になってから2年経っても未だに輸出は増えていません。これは大変意外な事でした。これについては、二つの理由があると言われています。一つは、アベノミクス前の円高の時代に海外に工場を移す事を決めた企業がたくさんあったことです。そうした海外の工場が完成して生産を始めると、日本の輸出が減るので、その他の企業の輸出が増えている分と打ち消し合ってしまう、という事です。ただ、この理由は、数年経てば消えてなくなるでしょう。円高時代に計画された工場がすべて生産を開始してしまえば、それ以上は輸出は減らないからです。
今ひとつは、円高に懲りた企業が地産地消を目指すようになった、という事です。日本で作って輸出するのではなく、売れる所で作ろう、というわけです。地産地消を目指す企業が増えると、円安になっても企業は日本国内には工場を建てず、海外の売れそうな所に工場を建てる事になりますから、いつまで経っても輸出は増えないことになります。こちらの方が影響は深刻です。
一方で、非製造業の設備投資は健闘しています。本来であれば、円安によるコスト上昇などで苦しいはずなのですが、たとえば流通や物流は、新しい店舗や倉庫などが次々と建つなど好調です。

アベノミクスで景気が回復した事は、間違いないと思います。消費税率が8%に引き上げられてからは、良い経済指標と悪い経済指標とが混ざっていて景気がどうなっているのか解りにくいですが、仮に景気が悪くなったとしても、それは消費税が原因であって、アベノミクスが原因ではありません。
その場合には、「アベノミクスは景気を回復させたが、増税に耐えられるほど景気が良くなったわけではない」ということになるでしょう。私は景気に楽観的なので、「増税も何とか乗り越えた」と考えていますが、その御話は次回にしましょう。

アベノミクスで、確かに景気は拡大したかもしれないが、格差が拡大したのは問題だ、という人がいます。それについては、半分当たっていますが、半分は外れていると思います。
アベノミクスで大きな恩恵を被ったのは、株を持っているお金持ちですが、失業と倒産が減った事を考えれば、最も可哀想な人々も大きな恩恵を被ったという事になるわけです。一方で、庶民は給料が少し上がる間に円安で物価が上がり、生活が少しだけ苦しくなったといった所でしょう。繰り返しますが、消費税率の引き上げによって生活が苦しくなった分は、アベノミクスの結果ではありませんので、ここでは除いて考えています。
今回の本は、2年前に出版した本の増補改訂版なのですが、大きな変更点が3つありました。一つは当然ながらアベノミクスについて詳しく書いたことです。あとは、デフレがインフレに変わったことと、失業問題が人手不足問題に変わったことです。
デフレがインフレに変わったのは、ドル高で輸入物価が上がったからですが、今後も景気が拡大して人手不足が続くようだと、賃金が上がり、今度は賃金上昇が物価を押し上げるようになるでしょう。
これは望ましいことです。企業経営者にとっては、賃金が上がる事は嬉しくないでしょうが、物は考えようです。賃金が上がるのは、ライバル企業も同じ条件だからです。今までは、賃金が上がらなかった一方でライバル企業が値下げ競争を仕掛けて来たりしましたが、今後はライバルも値下げ競争を仕掛けて来る事はないでしょう。悪いことばかりでは無いのです。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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