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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > アベノミクスの金融政策 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

アベノミクスの金融政策

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

15/02/19

まとめ: アベノミクスの金融緩和は、目指した経路と異なる経路で景気の回復をもたらしました。世の中にお金が出回ってデフレが止まる事を目指したのですが、実際には偽薬効果で株とドルが値上がりし、これが景気を回復させたのです。


今回は、アベノミクスの金融政策について御話します。まずは前回の復習です。
安倍総理と黒田日銀総裁の基本的な考え方は、デフレを止める事が大切であり、そのためには日銀の大胆な金融緩和が必要だ、という事です。これまで日本経済は、物価が下がるデフレによって不況が続いていたので、デフレを直せば景気が良くなるはずだ、と考えているのです。
デフレが経済に悪いのは、物価が下がっている時には人々が値下がりするのを待つようになるので、モノが売れないからです。反対に、物価上昇率が金利より高くなれば人々が借金をしてでもモノを急いで買おうとするので、景気は良くなります。だから、日銀はデフレからの脱却を目指しているのです。
金融緩和というのは、日銀がお札を刷って、銀行が持っている国債を買い取る事です。銀行が受け取った現金を貸出に使うと、世の中にお金が出回ります。そうなると、世の中にあるモノの量とお金の量の比率が変わるので、モノを買うために大量のお金が必用になる、という事です。
水よりダイヤモンドの方が値段が高いのは、少ないからですよね。少ないものは高いのです。したがって、世の中に出回る物の量が変わらずにお金の量が増えると、物の方がお金より価値が高くなる、つまり物価が上がる、という事になるのです。日銀は、消費者物価指数が毎年2%ずつ上がって行くことを目標にしています。
これが、安倍総理と黒田総裁が考えていた事なのですが、実際は、考えた通りにはなりませんでした。銀行が、日銀から受け取った現金を、貸出に使うのではなく、そのまま日銀に預金してしまったため、現金が世の中に出回らなかったのです。
その理由を知るためには、どうして銀行が国債を持っていたのか、を考える必要があります。銀行の本業は、預金を集めて貸出をして、利鞘(貸出と預金の利率の差)を稼ぐことです。貸出をする方が国債を買うよりもずっと儲かるので、本当は国債など買わずに貸出をしたいのです。しかし、貸出先が無いので、仕方なく国債を持っているわけです。
そういう時に、日銀が銀行の持っている国債を買ったとしても、銀行は代金として受け取った現金を貸出に使うことが出来ないので、仕方なく日銀に預金することになるのです。
その意味では、安倍総理や黒田総裁が間違えていた、という事になります。しかし、話はこれで終りませんでした。意外な方向に発展したのです。
株やドルを売り買いしている人の中には、黒田総裁の事を信じている人が大勢います。黒田総裁が「世の中にお金が出回るからインフレになる」と言っているのを聞いて、彼等はこう考えました。「世の中にお金が出回ると、株やドルに対してお金が多くなるだろう。そうなると、株やドルがお金より貴重だという事になって値上がりするだろう。それならば、今のうちに株やドルを買っておこう」というわけです。
そうした人々が株やドルを買ったため、株やドルが値上がりしました。実際には黒田総裁は間違っていたのですが、それを信じた人々が買ったために株やドルが値上がりしたのです。その結果、景気が回復したので、結果オーライという事になりました。私はこれを、「偽薬効果」と呼んでいます。
病気の人に、「高い薬だ」と言って小麦粉を飲ませると、病気が治ってしまう場合があります。「病は気から」だからなのでしょう。これと同じように、本来は効かないはずの金融緩和でしたが、人々が効果があると信じた事によって本当に効果が出た、というわけです。
株式市場や為替市場では、皆が上がると思うと皆が買うので実際に値上がりする、という事がよくあります。皆が上がると思った理由は何でも良いのです。たとえ理由が間違いだったとしても、皆が買い注文を出せば値上がりするのです。そこが金融市場の難しい所です。
たとえば東日本大震災の後、ドル安円高になりました。日本で大災害が発生したのですから、日本の円は安くなるのが理屈なのですが、何故か「円が高くなる」という噂が流れたようです。日本の事情を知らない外国人が誤解に基づいて噂を広めたところ、多くの外国人がドル売り円買いの注文を出した、という事だったようです。

じつは今回、安倍総理が就任した時、私はドルを買いました。安倍総理が金融緩和に熱心だと知っていたからです。
金融を緩和しても世の中に出回るお金が増えない事は予想していました。私はもと銀行員ですから、銀行が貸出を増やさない事は予想出来ていたのです。理屈を考えれば、世の中に出回っているドルと円の量が変わらなければ、ドルが高くなる理由はありません。
それでも私がドルを買ったのは、黒田総裁を信じている人々がドルを買うだろうと予想したからです。彼等がドルを買えば、ドルは値上がりするはずです。彼等の理屈が正しいかどうかは関係ありません。というわけで、私はドルを買ったのです。私と同じように考えてドルを買った人も大勢いたようですから、私たちの買い注文もドルの値段を押し上げる作用をしたのでしょうね。
私事ですが、ドルが値上がりして少しだけ儲かりました。リーマンショックの時の損を取り戻しただけでしたけれども、私としては満足しています。


分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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