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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > リトアニアのユーロ導入 (企業財務管理、国際金融/平松拓)

リトアニアのユーロ導入

平松拓 企業財務管理、国際金融

15/01/28


今年の1月1日より、リトアニアがユーロを導入しました。これで、ユーロ採用国は19か国となります。リトアニアは、北欧の東、バルト海に面した国で、エストニアとラトビアとともにバルト三国の一つです。1990年にソ連から独立を果たしましたが、九州より少し大きい程度の国土に300万人弱の人口が暮らしています。一人あたりのGDPは約1万4000ドル、先進EU諸国の半分ほどです。しかし紀元1400年頃には、リトアニア大公国として現在の東ウクライナを含む広大な地域を支配していました。日本との関わりについて言えば、第二次世界大戦中に駐リトアニア・カウナス総領事館に駐在していた杉浦千畝氏を挙げないわけにはいきません。外交官であった彼は、ナチス・ドイツから逃れようとしていたユダヤ人に、日本の外務省からの指示に反してビザを発行し、海外渡航を助けたことで知られています。

リトアニアは1990年の独立の後、2004年にEUに加盟、以来、自国通貨リタスの相場をユーロに対して固定した上で用い続けてきました。しかし、2011年のエストニア、2014年のラトビアに続いて、リトアニアも今回ユーロを導入することにしました。リーマンショック後に発生した欧州経済危機以降、残念ながら統一通貨ユーロについては負の側面ばかりが採り上げられてきた感がありますが、もともとユーロは、欧州の経済を一体化することによって強化しようという高い理念の下に進められてきた欧州統合のプロセスの一環として関税や非関税障壁の撤廃といった様々なステップを踏んだ上で、尚、財・サービスの取引の障害となっている為替相場の変動を排除するために導入されたものです。1999年1月にまず11か国の採用でスタートしましたが、その結果として、それまで主要通貨の一角を占めていたドイツ・マルクやフレンチフラン、イタリアリラなどが、廃止されました。

ユーロの問題が色々と取りざたされる中で、リトアニアが今回ユーロを導入したことには何か背景がるのではないかと考えるのは自然ですが、は、デンマークやイギリスといったオプト・アウト(適用除外)の権利を与えられた一部の国を除くEU加盟国にはユーロの採用が義務付けられているという事情があります。それでは義務に従っただけかと言うと、ことはそう単純ではありません一方で、ユーロを導入するためには収斂基準と呼ばれる経済的な条件を満たす必要があり、ユーロ導入以降にEUに加盟した国の中では、収斂条件を満たしていないことを理由にユーロ導入を見送っている国も多く、また、ユーロ導入以前からEUのメンバーであったスウェーデンはオプト・アウトを認められていませんが、ユーロ導入が国民投票で否決されていることを理由に採用していません。つまり、実質的にはユーロの採用を相当の期間、見送る選択肢が存在しているといえます。

ユーロを導入することのメリットとしては、導入国の企業や個人は、為替相場の変動の影響を受けずにユーロ圏内の諸国と貿易や商品購入をすることが可能となります。一方でデメリットとして、共通通貨を用いているがために、導入国の政府は独自の金融政策を持てない他、国内産業に競争力がない場合でも為替相場の調整によって当該産業を保護することはできません。のです。そのため、財政政策に依存しがちになりますが、ユーロ導入国は単年度の財政赤字をGDPの3%以下とし、政府債務の残高をGDPの60%以内にとどめる義務を定めた安定・成長協定に縛られることになっています。欧州危機のきっかけをつくったギリシャが極端な緊縮政策と構造改革をEU内で迫られているのは、そのためです。

このようなデメリットがあるにも関わらず、今回、リトアニアがユーロを採用した理由としては、経済的のみならず、政治的にも西欧諸国と一体化するメリットの方が大きいと判断したものと考えられます。経済的には、前述の通り、EU市場とより強く結びつくことによってメリットを享受することが期待されます。リーマンショック以降、欧州経済が停滞する中でもEUに加盟したことが奏功して、リトアニアは平均して3%程度の経済成長を維持してきました。一方、政治的には、リトアニアは第一次世界大戦後にロシア帝国から独立を果たしたにも関わらず、第二次世界大戦後にはソ連に支配されるという憂き目に遭いました。既にEUへの加盟によってリトアニアは政治的に西欧諸国との連帯を選択している訳ですが、今回のユーロ導入によって、もう後戻りできないほどに西欧諸国と一体化するという姿勢を明らかにしたとも考えることができます。

今日の話をまとめます。
新年早々、バルト三国の一つであるリトアニアがユーロを導入しました。EUに加盟したもののユーロ導入に踏み切らない国もある中で、今回のリトアニアの導入の背景には、経済的なメリットはもちろんのこと、政治的な意味合いも伺えることに注目したいと思います。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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