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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > ウェアラブルデバイスの世界 (産業政策、通信政策、通信経済学/実積寿也)

ウェアラブルデバイスの世界

実積寿也 産業政策、通信政策、通信経済学

15/01/14

「グーグルグラス」というメガネをご存知でしょうか?日本はおろか、開発元である米国でも広く一般に発売されているわけではないデバイスなので、大抵の人は商品名だけは聞いたことがあるけれども、という状況だと思います。
私の場合、たまたま友人がグーグルグラスを持っていたので一度だけ掛けさせてもらったんですが、まずイヤホンを右耳に入れてから装着すると、右手をまっすぐ斜め前に突き出した辺りに、握りこぶし大の画面が見えました。実際に利用できるアプリケーションがまだあまり開発されていない状態なので、ネットサーフィンをしてYouTubeでビデオを見るくらいしかできませんでしたが、未来が直ぐそこまでやってきたという感じはしました。

さて、グーグルグラスは、インプットとアウトプットという機能だけを果たすデバイスです。グーグルグラス自体には簡単な処理能力しかないので、実際に複雑な処理を行うスマホやタブレット端末を常にポケットやカバンに入れておくことが必要です。グーグルグラスを装着したユーザーは、音声で命令したり、メガネのツルの部分を軽くタッチしたりすることで必要な作業指示をスマホに伝えます。指示を受け取ったスマホは、自身にインストールされたアプリを起動したり、あるいは常に接続されているインターネットを介して遠隔地にあるサーバーに必要な情報を問い合わせることで情報処理を行い、その結果をグーグルグラスに装備された小さなスクリーンや耳にさしたイヤホンからユーザーに返すわけです。
また、作業指示は必ずしもユーザー自身が行う必要はありません。たとえば、ビデオ映像に埋め込まれた電子透かしをグーグルグラス的な装置で読み取って、ユーザーの目に字幕や解説情報を写すというシステムは既に実用化されています。これを使えば、英語がわかる人には字幕なしのすっきりした映像が楽しめる一方、英語があまり得意でない人にはきちんとした字幕情報を届けることができますし、さまざまな国から日本を訪れる外国人観光客にそれぞれの母国語で観光情報を伝えることもできます。
こうした機能を果たすデバイス、つまり、身につけたデバイスに特定の動作を行うことで指示を出したり、あるいはデバイス自らが周辺環境を認識して、スマホやクラウド上で情報処理を行い、その結果を再び利用者の身体に直接返すという機能を果たすデバイスをウェアラブルデバイスと総称します。ウェアラブルは「身に着けることができる」「着用することがきる」という意味ですね。

さて、ウェアラブルデバイスにはスマートグラスと呼ばれるメガネ型以外のものも存在しています。まず、手首に装着するデバイスがあります。良く知られているものとしては、例えばスポーツグッズメーカーとして有名なナイキ社は、ジョギングなどのときに手首に装着することで、歩数や移動距離を計測するといった万歩計の機能に加えて、GPSと連動して地図上にジョギングルートを表示したり、心拍数や脈拍、消費カロリーを記録してダイエットに役立てたりすることを可能にするブレスレットを販売しています。スマートウォッチと呼ばれる製品群もこの仲間です。今年の9月にアップル社が発表したアップルウォッチも、時計としての機能に加えて、本体の裏、つまり、手首に密着する部分に複数のセンサーを備え、内蔵された加速度センサーなどでユーザー自身の心拍数や体の動きをモニターしています。
手首ではなく足首につけるウェアラブルデバイスもあります。例えば、スマート靴下と呼ばれる製品は赤ちゃんの足首につけるデバイスで、お母さん達がわが子の健康状態をチェックするという目的に使用されます。胸元に常時つけておき、姿勢が悪くなったらバイブレーター機能で注意喚起してくれるというデバイスもあるそうです。
こうした様々な形態を持つウェアラブルデバイスは、ユーザー自身の身体情報を含む、身の回りの情報をきめ細かにモニタリングして、高度な情報システムによって処理することで、これまでSFの世界でしかなかったような様々な有益な機能を果たし、日常生活を豊かに、かつ効率的にすることが期待されています。

先日の日経新聞には、ウェアラブル市場は年率18%伸び、2018年には世界で80億ドル、台数で1億3000万台になるという見通しが掲載されていました。
ただし、こういったウェアラブルデバイスには、いくつか大きな問題があります。
まず第一に、ユーザー自身の体に密着させることを前提にしているため、重さや大きさに制約があります。常に身に着けておくものですから、あまりに重いものや大きなものは実用的ではありません。特に、画像情報を出力する場合、鮮明な画像を提示したり表示される情報量を増やしたりするためには画面を大きくする必要がありますが、スマートグラスとして実用的なものとなるためには大きな制約があります。
また、ある程度長時間利用することが前提となりますから、バッテリーもそれなりに必要です。ウェアラブルデバイスに高度な機能を期待すればするほど、バッテリー消費も多くなる傾向にありますから、この問題はかなり重大です。とはいうものの、大きなバッテリーを内蔵すればデバイス自体が大きく重くなってしまいます。
さらに、ウェアラブルデバイスは、デバイスを装着しているユーザーの周辺環境をモニターすることも要求されます。スマートグラスの場合は、周辺の明るさに応じて表示する画像の明るさを調整する必要がありますし、イヤホンで情報を返してくる場合には周りの騒がしさに応じて自動的に音量が調整されることが望ましいことになります。ただし、そのことは、ウェアラブルデバイスを装着しているユーザーの周りにいる人たちの情報が無断で収集されてしまう危険をはらみます。グーグルグラスにはビデオ録画の機能があるので、米国の映画館では、着用したままでの映画鑑賞が禁止となりました。友人と秘密の相談をしているときに、すぐそばにウェアラブルデバイスを身に着けた人を見かけたら、声を小さくしたほうが良いかもしれません。
こういったことを考えると、いくら技術が進歩する可能性があるとはいえ、将来、ウェアラブルデバイスが私達の体のあらゆるところに装着されるようになり、例えば映画のアイアンマンのような姿で街中をうろつくようになるという事態は当面想像できません。
では、ウェアラブルデバイスの目指した世界は、技術が今よりも飛躍的に進歩した遠い遠い未来にしか実現されないのでしょうか?「そうではない」というのが私の答えです。これについては明日お話したいと思います。

今日のまとめ:身に着けて持ち運ぶ情報通信機器であるウェアラブルデバイスにはいろいろな種類・形態があり、いずれも私達の日常生活を豊かにしてくれる可能性をもっています。ただし、ウェアラブルデバイスの普及には一定の限界が存在するので、世の中の人全員がグーグルグラスを着用するような世界は当面は期待できないでしょう。

分野: 産業政策・通信経済学 |スピーカー: 実積寿也

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