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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 創業300年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか④ (リーダーシップ領域/田久保 善彦)

創業300年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか④

田久保 善彦 リーダーシップ領域

14/12/22

これまでに引き続き、拙書『創業300年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか』(東洋経済新報社、2014)について話を進めます。

前回は、企業が有する本質的な強みなり本質的な価値の源泉を「コア能力」と呼び、それをしっかり理解していることが長寿企業の一つの大きな特徴である旨を話しました。今回は、長寿企業に共通して見られる人材育成の特徴について説明します。

長寿企業の人材育成について調べていくと、一つのキーワードが浮かんできました。それは、非常に古めかしい言葉ではありますが、「徒弟制度」です。徒弟制度とは、上げ膳据え膳で技術を教えるというものではなく、お弟子さんが親方の背中を見て育つ形のシステムのことを指します。このような人材育成が、長寿企業においては非常に丁寧に、時間をかけて行われています。たとえば岡谷鋼機や竹中工務店では、新人は皆寮に入ることになっています。そこで生活をともにしながら、価値観をすり合わせたり、いろいろな議論をしたりして、自分たちが企業の社員であることの意味などを考えていきます。もしくは月桂冠では、機械化された設備で日本酒をつくっていますが、新入社員は合同合宿において昔ながらの方法で日本酒をつくるトレーニングをさせられます。長野県にあるヤマトインテックという鋳物の会社では、新入社員の職種や学歴に関わらず、まずは五年もの間、工場で製造に携わらせます。そうすると、五年が経った頃には、全員鋳物の匂いが好きになっているそうです。

このような状況下では、新入社員は先輩とたくさん会話をし、先輩のたくさんの背中を見て、やり方を感じていくでしょう。つまり、新入社員を一か所に集めて一時間くらいのセミナーを開いて終わりとするわけではなく、徐々に徐々に刷り込むプロセスを経て、その企業にふさわしい人物を作っていくのです。こうしたシステムがうまく組み込まれている企業では、同時に、単身寮や工場における長い研修、運動会、クラブ活動なども非常に盛んに行われています。実はこれらのことは、少し前の日本の企業の多くでしばしば見られたものでしたが、コスト削減という名目の元に、廃止となってしまったのです。そしてそうした企業は、現在では、社員間のコミュニケーション不足に悩むこととなっています。

このように長寿企業は、これまでの日本企業が当たり前のように大切にしてきたものを、今なお当たり前のように続けているのです。そうすると、長寿企業の一つの特徴は、今は人事制度との関係において話しましたが、大切にすべき価値観を、景気の良し悪しや売り上げの良し悪しとは別の次元でとらえている点に求められましょう。ものすごくシンプルに、ただ大切だから続ける。大切でないものはやめる。そうした一貫した価値観が前提にあり、人材育成においても生かされているように思います。300年企業ではありませんが、グーグルもまた、クラブ活動等を非常に大事にしているそうです。以上を踏まえれば、日本企業はやめなければよかったことを色々とやめてしまい、その結果、色々なところに軋みが生じていると考えることができるかも知れません。長寿企業を見習う、というわけではありませんが、こうした点も考慮に入れた上で、復活させるべき施策を復活させることがあっても良いのではないでしょうか。

分野: グロービス経営大学院 リーダーシップ |スピーカー: 田久保 善彦

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