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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 創業300年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか② (リーダーシップ領域/田久保 善彦)

創業300年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか②

田久保 善彦 リーダーシップ領域

14/12/08


前回に引き続き、拙著『創業300年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか』(東洋経済新報社、2014)の内容について話をします。創業300年を超える企業は、日本に600社以上あります。この本ではその中でも、年間の売上が50億円を超える企業を調査対象としました。今回は、その長寿の秘密を紐解いて行きます。

まず、既に日本の長寿企業に関する本がたくさん出版されていますが、それらは大別して企業の三つの側面を扱っています。第一は、歴史的側面です。日本で良い企業がつくられた理由として、日本が外国からの侵略が少ない国であったこと、江戸時代から教育水準が高くて皆が読み書きそろばんをできていたことを挙げています。第二は、文化的側面です。たとえば、日本では家の制度がために、継続そのものを非常に重視する文化がある、農耕的民族性ゆえに、コツコツコツコツ物事に取り組む事が得意である、といった風に、日本の文化に着目します。第三が、継続性です。これは先に述べた家の制度とも深い関連があるものです。一族で大事に守っている企業、すなわち、ファミリービジネスの企業であることを、長寿の理由とみなしています。

ここで、これらの諸点に納得し、理解したふりをすると、非常に大事な事柄を見過ごすことになります。その企業が、企業経営においてどのような工夫をしてきたのかという点が、一切無視されてしまうのです。そこで今回書いたほんの中では、歴史的側面や文化的側面、継続性よりも、企業経営における工夫について考察を進めました。

その結果、面白いことに気付きました。長寿企業は、とある特徴を持ったビジネスのフィールドにおいてビジネスを展開しているのです。その特徴とは、変化のスピードが遅いということです。たとえば旅館やホテルは、100年前でも200年前でも、基本的には寝床と食事を提供するくらいですので、その機能に大きな変化はありません。またお酒や和菓子も同様で、何百年前もお酒や和菓子であったことに変わりありません。建築業もやはり、今も昔も変わらずに建物を建てることを目的とした業種です。これらと比べると今のデジタル家電や携帯電話に関して言えば、提供しているビジネスの本質的な価値がコロコロ変わって行きます。これに追従して行くのは、非常に大変です。変化のスピードが緩やかであれば簡単だとは言いませんが、緩やかな分、落ち着いていろいろなことに対応していくことができるでしょう。

また、機能の変化が小さいところに集中しているという特徴も見られました。たとえばお酒や和菓子は変化が相対的に緩やかな上に、本質的な価値はあまり大きくは変わりません。ガラガラ物を変える必要がないために、長持ちしやすいのです。この点については、変化のスピードが緩やかであっても機能の変化が大きい領域と比較するとわかりやすいでしょう。たとえば自動車であれば、できた頃から自動車としての機能そのものはあまり変わっていません。しかしガソリンエンジンがハイブリッドエンジンになったり、電気自動車や燃料電池自動車が出てきたりと、変わる時には大きな変化が見られます。

わかりやすくするために、変化のスピードを横軸に、提供されているサービスの機能の変化の大きさを縦軸に取ってみましょう。変化のスピードが緩やかで機能の変化が小さいところには、お酒や和菓子、旅館が入ります。変化のスピードが緩やかで機能の変化が大きいところには、自動車やアナログ家電が入ります。変化のスピードが大きくて機能の変化が大きいところには、カメラのフィルムやレコード、フロッピーディスクといった、市場から無くなりかねない商品が入ります。このように考えれば、企業が長期にわたって存続する秘訣のひとつは、変化のスピードが緩やかな領域で戦うことのように思えるのです。

分野: グロービス経営大学院 リーダーシップ |スピーカー: 田久保 善彦

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