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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 企業の資金調達② (企業財務管理、国際金融/平松拓)

企業の資金調達②

平松拓 企業財務管理、国際金融

14/10/23


前回は、LIXILという会社を例にとって、M&Aという積極的な企業戦略と、伝統的な資金捻出方法であるキャッシュ・コンバージョン・サイクル(Cash Conversion Cycle)の短期化を組み合わせた資金調達についてお話しました。今回は、最近の資本市場における新しい資金調達と運用の組み合わせであるリキャップCBについてお話します。リキャップCBのCBとは、転換社債のことです。正式には、現在では新株予約権付社債の一種とされています。そのCB発行と、自社株買いの組み合わせのことを、リキャップCBといいます。

CBについて、より詳しく見ていきましょう。CBは、株式に転換する権利がついた社債のことで、英語でコンバーティル・ボンド(Convertible Bond)と言います。利息収入の確実性と株式の値上がりによる収益性という二つを兼ね備えた金融商品です。株が値上がりして転換価格に達した場合には、CBの購入者は一定期間内に請求を行えば株式に転換することができ、株式の配当金や売却益が期待できますただ、一旦転換権を行使すると、再び元の社債に戻すことはできません。一方、転換価格になるまで社債として持つことによって、利子を受け取ることができます。また、株価が転換価格に到達せず、償還期限まで保有した場合には、元本の払い戻しを受けることができます。こうした社債としての価値が保証されているために、結果として株価も一定水準より値下がりすることはありません。つまり、購入者にとって転換社債は、社債としての確実性と株式としての収益性の双方を期待できる債権ということができまです。

逆に、発行企業にとってみれば、これは低コストな資金調達手段となります。利率を普通の社債よりも低く発行できるからです。また、株式に転換されれば、元本の返済の必要がなくなります。その代わりに配当負担は増加することとなります。

続いて、自社株買いについて説明します。これは文字通り、企業が自社の株式を購入することですが、配当を行う代わりに、市場等で自社株を購入することで、一株当たりの企業価値を増加させ、株主に対して還元を行うものです。日本では以前は禁止されていましたが、2000年前後の規制緩和で可能になりました。株主の立場から見ると、配当金の受け取りには税金がかかりますが、株価の上昇によるキャピタル・ゲインの場合、税金はその株を売るまでかからない上に、従来アメリカでは税率が低いという税制面のメリットがありました。そのため、特にアメリカでは株主から好まれ、多くの企業が実施しています。通常こうした自社株買いは、留保利益を用いて行われますが、昨年、アップルは巨額の社債を発行して得た資金で配当や自社株買いを実施しました。

つまり、リキャップCBとは、自社株買いのための資金をCBで調達することを指します。CB発行で負債を増やす一方で、自社株買いで資本を減らします。こうすることで、リキャピタライゼーション、つまり企業の資金調達において資本と負債の構成を変えることができます。本年度に入って、カシオ計算機やヤマダ電機、東レ、日本ハムが、相次いでリキャップCDを実施しています。その背景には、株主還元と資金調達をセットで行うことになるため、企業は手元資金を減らすことなく株主還元ができるとともに、株主資本に対する利益率(ROE)を上げることができます。株主資本が増加すると、それに伴って利益も増加しない限り、ROEは低くなります。日本企業はかねてよりこのROEの低さを指摘されており、その引き上げを課題としてきました。リキャップCBは、利益の増加なしにこれを達成しようという、言わば一つの抜け道といえます。そのため、リキャップCBへ批判的な見方もあります。そもそもROEは、企業が抱える資産を有効に活用し、収入を増やすことで上昇させるべきものです。そのため、株主資本を減らすという小手先の手段でROEの上昇を実現するリキャップCBは、まやかしであると言われます。

確かにROEの改善は、本来はその資産サイドで収益力を強化する形で実現されることが望ましいとされます。ただ、日本企業の自己消費率の向上や無借金経営化が株主を軽視するものであるとして批判されてきたことを考えると、リキャップCBの発行が広まってきたのは、日本企業が株主の目線に気を配り始めてきたことを示しているものとして、まずは積極的に評価してもよいのではないかと考えます。

今日の話をまとめます。
昨今、日本企業が株主重視の姿勢に転換しつつあります。資本市場の中でもそれを反映した新しい動きの一例として、リキャップCBの発行をするところが増えてきていることを紹介いたしました。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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