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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 企業の資金調達① (企業財務管理、国際金融/平松拓)

企業の資金調達①

平松拓 企業財務管理、国際金融

14/10/22


今回と次回の二回にわたり、企業の資金調達についてお話します。一口に資金調達と言っても、借り入れや株式の発行など、様々な方法があります。最近では、投資戦略や資本還元戦略の組み合わせによる新しい資金調達が見られるようになりました。

たとえばLIXILという会社は、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(Cash Conversion Cycle)の短期化によって、内部から資金を捻出しています。LIXILは、TOSTEMというサッシメーカーとINAXという衛生陶器を作っているメーカーなどが合併してできた会社で、総合生活企業と称しています。三年前に、元商社マンで、アメリカのGE本社で上級副社長も務めていた藤森さんという方が社長に就任して以来、欧米などで積極的なM&Aを行い、急速に業績を拡大しています。LIXILの2013年度の売り上げは1兆6,000億円程度でしたが、2016年度にはそれを2兆1,000億円に拡大しようとしています。すなわち、3年間で30-%強拡大するという、積極的な中期計画を公表しているのです。その中で、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの短期化によって、2014年度中に400億円、2015年度までの合計で1,000億円のフリーキャッシュフローを創出する予定です。

キャッシュ・コンバーション・サイクルとは、出したお金が戻ってくるまでのサイクルのことを言います。具体的に言えば、現金を払って調達した原材料が、原材料在庫、仕掛品在庫、製品在庫という形を経て後に販売され、売掛金が立ち、その売掛金が回収されて現金となって帰ってくるまでの期間のことです。つまり、「企業が日常の事業を行っていく上で現金を負担する期間」と理解していただければ結構です。この間に企業が負担している現金のことを、運転資本と言います。運転資本を節減して資金を捻出する手法は、最近の企業に特別なものというわけではなく、減量経営あるいはコスト削減策の基本中の基本です。しかし、LIXILのように巨額のM&Aを派手に行っている会社が、先端的な金融商品を用いた資金調達を用いるのではなく、こうした伝統的な資金繰り手法を中期計画の中で正面に据えている点に面白みを感じます。

この背景には、以下のような事情があります。LIXILは、特に2010年以降、内外の多くの企業との合併や買収により業容を拡大してきました。その際に、生産管理のシステムなどについては、それぞれの方式を残したままであり、統合を行ってきませんでした。すなわち、一つの統合企業としての運転資本管理、特に仕掛品などの在庫管理が、今まで統一的に行われていなかったのです。したがって、合理化の余地が大きく残されていたということがあります。LIXILは、上述の形で急速な統合を行ってきたからこそ、大きな資金を捻出できる面もあります。こうした点は、再編に慎重だったこれまでの日本企業にはあまり見られなかったものです。

キャッシュ・コンバーション・サイクルの短期化の利点は、新たな借り入れと異なり、直接のコストがかからないことです。したがって、仮にうまくいかなくとも、膨張した債務が経営を圧迫するといった心配はありません。もちろん、このようにして捻出した資金であっても、どんな投資に用いてもいいわけではありません。また、キャッシュ・コンバーション・サイクルを短期化する際には、お客さんのニーズに応えられない可能性もでてきます。例えば、仕掛品在庫の削減を過剰に進めると、作業待ち時間の増加に繋がりかねません。したがって、無制限にこれを行うわけにはいかないのです。

いずれにせよ、日本企業のM&Aが非常に活発になってきている昨今において、LIXILが行ったような、M&Aという新しい戦略的な取り組みと伝統的な資金捻出手法の組み合わせは、今後も増えてくるのではないでしょうか。

今日の話をまとめます。
伝統的な資金調達手段も、目的と使い道の組み合わせ如何によっては、非常に新しい武器となり得ます。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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