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貿易

村藤功 企業財務 M&A

14/10/03


今回は、貿易収支や経常収支についてお話します。

日本の貿易収支は、輸出が輸入を上回っており、長い間ずっと黒字でした。しかし、昨年の後半から今年にかけて、ものすごい勢いで貿易収支の赤字化が進み、ついには経常収支までもが赤字となりました。日本は、戦後の経済が好調であったため、対外金融資産は世界一です。そこから貰える配当や金利などの所得収支が大きいため、貿易収支が多少赤字になっても、経常収支が赤字に転じることはないとみられていました。

日本政府は、毎年40兆円の赤字を抱えるため、それを調達するために国債を発行し続けています。その総額が1000兆円程度になっていることは、皆さんご存じのとおりです。また、政府の赤字が80兆円ほどに膨らみそうであること、2020年には赤字の総額が1500兆円になるというように懸念が膨らんでいることも、聞いたことがあるかと思います。これらはすべて国内から調達したものでしたので、いざとなれば政府が国民から税金をふんだくることで、海外に迷惑をかけることなく負債をなくすことも可能であるとされていました。ムーディーズやS&Pが日本国債の格付けを下げようとしても、国内問題であることを日本の財務省は主張したのです。

しかしこれも、経常収支が赤字という事態になると話は別です。海外からお金を借りないとやっていけない事態に、日本はこれから陥っていくのです。もし対外負債を借りてそれを返さないなど海外へ迷惑をかけることになると、97年のアジア危機の時の韓国や最近のギリシャで起こったように、IMFが突然乗り込んできて、債務不履行に陥らないように社会福祉をやめさせられることもあり得ます。このように、経常収支の赤字化は、非常に大きな問題なのです。

それではなぜ、貿易収支の赤字化が急速に進んでしまったのでしょうか。原因は、輸出が伸びない一方で輸入が増えていることにあります。円安になったら国際競争力が強まって輸出が伸びるものとみられていましたが、日本はアジアへ随分と工場を移したために、日本から輸出するものがないのです。アジアの工場から外国へ商品を売ったとしても、これらは日本の輸出品には含まれません。さらには、人口減少・少子高齢化のために、働いている人たち自体が減ってきているため、日本から外国へ供給できるものが少なくなっています。

輸入の方はどのような按配でしょうか。東日本大震災後に火力発電所が増え、そこで用いられるLNGや石油を高値で買わなくてはいけなくなっています。さらに円安が進んでいるために、輸入が非常に増える事態となっているのです。「足元を見られて高いLNGを買わされているのではないか」、「アメリカから安いシェールガスを買えるのではないか」、「ロシアから安いLNGを買えるのではないか」などと言われています。しかし現状、ウクライナ問題もありますので、ロシアからの購入には不安も残ります。以上のような構造が変わる気配は当分ないため、貿易赤字がしばらくは続くものとみられています。このままでは困った事態になりますので、何らかの手を打たなければなりません。

今日の話をまとめます。
日本の経常収支が、二半期連続で赤字になっています。所得収支という対外金融資産の収入は黒字ですが、これまで黒字だった貿易収支の赤字化が急速に進んだことが原因です。大震災後に作られた火力発電所のために石油やLNGを輸入しなければならず、また、日本企業がアジアへ工場を移したがために日本から輸出するものがなくなってしまっているのです。さらには、スマホを輸入していることからわかるように、日本の家電の競争力も落ちています。このようにしてみると、日本の貿易の赤字構造が定着してしまっているように感じられます。

分野: 財務戦略 |スピーカー: 村藤功

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