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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > イノベーション・システム(7) 米国のイノベーション・システム (その1) (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

イノベーション・システム(7) 米国のイノベーション・システム (その1)

永田晃也 技術経営、科学技術政策

14/10/01

 前回とその前の回では、日本のナショナル・イノベーション・システムの特徴と、それがどのように歴史的に形成されてきたのかを概観しました。次に、やはり2回に分けて、米国(アメリカ合衆国)のナショナル・イノベーション・システムについてお話してみたいと思います。

 はじめに米国のイノベーション・システムの特徴についてですが、政府、企業、大学といったアクターの役割について、皆さんはどのような特徴に思い当たられるでしょうか。イノベーション・システムの研究者たちは、概ね次のようなポイントを指摘してきました。
 まず政府については、米国全体としては連邦政府ですが、その役割が特に軍事、保健などの先端的な研究分野において非常に大きいということです。前にも触れたように、米国の研究開発費総額は他の国に比べると圧倒的に大きいのですが、その約3分の1は政府によって負担されています。
 米国政府は、先端的な科学技術分野で、国家的な目的を持った研究開発プロジェクトを推進してきました。このような科学技術政策は、ミッション・オリエンテッド型と呼ばれ、技術の普及に重点をおくディフュージョン・オリエンテッド型の科学技術政策と対比されてきました。しかし、ミッション・オリエンテッド型の科学技術政策も、技術の普及というフェーズと無関係なわけではなく、むしろ先端的な技術が産業部門で転用されることが指向されてきました。
 例えば、米国の国防総省には国防高等研究計画局(DARPA)という組織があります。これは、ハイリスク・ハイリターン、つまり失敗するリスクは高いけれども成功すれば大きなインパクトが期待できるような研究開発を支援するために設立された資金配分機関です。よく知られていることですが、このDARPAによって開発されたARPANETという通信ネットワークは、今日世界的に普及したインターネットの原型となったものです。

 つぎに企業の役割ですが、これについてはグローバルな市場で競争優位を持つ大企業が存在することに加え、ベンチャービジネスによる創業が活発だという特徴が挙げられてきました。ベンチャービジネスという用語は和製英語ですから、スタートアップスという英語表現を使うべきかも知れませんが、ここでは慣用に従っておきますと、今日、世界的な大企業となっているヒューレット・パッカード、アップル、マイクロソフト、グーグルといった企業も、かつてはいわゆるベンチャービジネスであったわけです。
 米国においてベンチャービジネスが活発に行われる要因については、いくつかの指摘があります。例えば、NASDAQのような公開基準の緩い株式市場が早期に発達していたという点、労働市場が流動的で技術者が企業間を移動したり、自ら創業することへの雇用契約上の制約が少ないという点です。
 また、反トラスト法による独占の規制と、特許制度による発明の保護が、ともに強力であるという点は、独自の技術以外に資産を持たないベンチャービジネスが大企業との競争の過程で生き残りやすい環境を与えた要因として指摘されてきました。
 こうした要因に加えて、近年では優れた技術を持つ中小企業の研究開発と、その成果の商用化を支援するための政策が強化されてきました。1982年にはSBIR(Small Business Innovation Research)という中小企業支援制度が創設されています。この制度に応募した企業の採択率は約20%と報告されており、かなり厳しい競争的資金ですが、それだけに採択されたプロジェクトの実用化成功率は高いと言われています。

 つぎに大学の役割にみられる特徴ですが、これについては研究活動において世界的にトップレベルの大学が数多く存在し、またそれらが活発に産業部門と連携しているという点が挙げられてきました。様々な大学の世界ランキングがメディアに取り上げられていますので、お気づきになることがあると思いますが、そこでは上位ランクの多くが米国の大学によって占められています。
 こうした世界トップレベルの大学の研究成果を、産業部門のイノベーションに結びつけようとする政策も強化されてきました。前にもお話したことがありますが、1980年にはバイ=ドール法が制定され、連邦政府の資金で大学が研究した結果得られた特許が、当該の大学に帰属させられるようになりました。大学は、その特許を企業に実施許諾し、ライセンス収入を研究費に還元させることが期待されたわけです。

 このように米国のイノベーション・システムを担うアクターの特徴的な役割をみてくると、アクター同士が密接に相互作用していることが同時にうかがえます。このインタラクションの強さが、米国のイノベーション・システムに一貫性を与えていると言えそうです。
 次回は、このような米国のイノベーション・システムの特徴が、どのように形成されてきたのかについてお話します。

今回のまとめ:米国のイノベーション・システムの特徴は、連邦政府の役割の大きさ、活発なベンチャービジネス、世界トップレベルの大学の存在と、アクター間の密接な相互作用に見出されます。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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