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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 経済成長率と景気 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

経済成長率と景気

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

14/08/19

前回、GDPの3つの作り方で同じ数字が得られると言いました。生産者にどれだけ作ったか聞く、消費者にどれだけ買ったか聞く、労働者と企業に賃金と利益を聞く、という3つですが、景気を見る上では、圧倒的に消費者に聞いて作る統計、つまり「支出面からみたGDP」が重要です。人々が物を買うから企業が物を作るのであって、人々がどれくらい物を買うかを予測する事が重要だからです。
物が売れると、企業は儲かります。また、企業が物を作るために人を雇うので、失業者が減りますし、失業者が給料を貰えば物を買いますから、更に物が売れるようになります。こうして景気は回復して行きます。つまり、景気が回復するか否かは、物が売れるか否かにかかっているのです。ですから、景気を予想する人々は、どれくらい物が売れるかを予想します。具体的には、個人消費や設備投資など、支出面からみたGDPがどれくらい増えるかを予想するわけです。
たとえば企業の設備投資を予想するには、企業の利益が増えるか、設備の稼働率が上がるか、銀行借り入れの金利はどうか、といった事を考えながら、最後は経験と勘を働かせて数字を出すわけです。輸出を予想する時には、海外の景気はどうか、為替相場はドル高かドル安か、といった事を考えるわけです。こうして其々の項目を予想して、全体を合計して来年のGDPを予想することになります。
来年のGDPが今年のGDPと比べて何%多くなるか、というのが経済成長率です。経済成長率には、二つあって、普通に計算したものは名目経済成長率と呼ばれます。名目経済成長率から物価上昇率を引いた値のことを、実質経済成長率と呼びます。
景気を考える上では、名目経済成長率はあまり重要ではありません。たとえば個人消費の金額が10%増えたとしても、消費者物価指数が10%上がっていたとしたら、個人が買う物の量は増えません。すると企業が作る物の量も増えませんから、企業は人を雇いません。そうなると、失業者も減らず、景気もよくならないわけです。
景気を考える上で大切なのは、実質経済成長率です。実質成長率が高いという事は、企業が沢山物を作るという事になりますから、人も雇うでしょうし、工場も新しく建てるかもしれません。そうなれば、失業者は減り、物が更に売れるようになるでしょう。
そこで、景気を予想する人々は、「来年度の実質経済成長率が何%になるか」という数字を予想します。景気討論会などを聞いていると、「私の予想は何%です」といった発言が多いのですが、これは成長率の予想が景気の予想という事だからです。
さて、GDPというのは、日本中でどれだけ物が作られたか、という数字ですから、実質経済成長率がゼロだという事は、去年と今年と国内で作られた物の量が同じだ、という事を意味しています。これは、嬉しくも悲しくも無いと思う人が多いでしょうが、実は悲しい事なのです。現に「ゼロ成長だから不景気だ」という言葉を聞いた事があるでしょう。
ゼロ成長だと不景気だという理由は、こういうことです。日本経済が使っている技術は、常に進歩しています。特に新しい発明は無くても、古い機械を新しい機械に取り替えただけでも、使われている技術は進歩するからです。そこで、日本経済全体としては、昨年と同じものを作るためには昨年よりも少ない労働者で済んでしまうのです。すると、その分の労働者は失業してしまう、ということになります。
では、失業者が増えないためには経済成長率が何%あれば良いのでしょうか。日本経済の場合、1%くらいだと言われています。この数字を潜在成長率と呼びます。この数字は、国によって違います。たとえば中国では7%か8%くらいだと言われています。
中国では、たとえばトラクターを使っていない農家も多く残っていますから、トラクターを導入するだけで、生産が大幅に効率化されます。つまり、同じだけの作物を作るために必要な労働力が大幅に減ります。したがって、その分だけ生産量が増えないと、失業が増えてしまうのです。
一方で、日本ではすべての農家にトラクターがありますから、古いトラクターを新しいトラクターに買い替えたとしても、生産の効率が劇的に上がるわけではありません。こうした違いが日本と中国の潜在成長率の違いとなっているのです。
日本でも、高度成長期にはたとえば農村の機械化が進んでいませんでしたから、トラクターの導入などによって効率が毎年大幅に上がっていました。当時は日本でも潜在成長率が今の中国と同じくらい高かったのです。
さて、実質経済成長率が景気にとって非常に重要である事は間違いありませんが、四半期ごとの数字は大きく振れるので、これを見ても景気の状況がわかるとは言いがたいのです。したがって、発表される四半期ごとの数字に一喜一憂せず、年度の成長率に注目するようにして下さい。
今回は以上です。

まとめ:
実質経済成長率というのは、名目GDPの増加率から物価上昇率を引いた値のことで、日本経済が前年度に比べてどれだけ多くの物やサービスを作ったか、という値です。日本では、これが1%程度であれば、失業が増えずに済む、と言われています。

分野: 経済予測 |スピーカー: 塚崎公義

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