QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > イノベーション関連統計の国際比較(その2) (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

イノベーション関連統計の国際比較(その2)

永田晃也 技術経営、科学技術政策

14/07/10

前回は、OECDの報告書に基づいて、企業によるイノベーションの実現割合を国際的に比較してみました。日本におけるイノベーション実現割合は諸外国に比して低く、その理由は日本の国内市場の大きさだけでは説明できないということを指摘しておきました。
 今回は、技術的なイノベーションを実現する上で重要な研究開発活動について比較してみます。以前お話したように、研究開発活動を把握するための統計指標は、イノベーション活動よりも早くOECDによって国際的な標準化が進められてきました。そのため、研究開発関連統計は多くの国について長期に亘って利用することができるようになっています。ここでは、文部科学省が平成25年版『科学技術要覧』にまとめたデータを引用します。

 まず、研究開発費の規模を比較してみますが、以下で引用する諸外国のデータは、購買力平価といって、各国の通貨で買うことができる商品やサービスの大きさの比率に基づいて円に換算されています。
 さて、2011年度の時点で、最も研究開発費の規模が大きい国は米国で、約45兆円に達しています。これに対して日本は17兆円で、米国の半分にも満たないのですが、日本は長らく研究開発費の規模では世界2位のポジションにあったのです。しかし、2000年代に入った頃から中国の研究開発費が急速に上昇して2009年度には日本と同レベルに達し、2010年度には日本を追い越しました。2011年度の中国の研究開発費は23兆円に達しています。
 日本に次いで研究開発費の規模が大きい国は、ドイツの10兆円、韓国の7兆円、フランスの6兆円などとなっています。

 次に、国内総生産(GDP)に対する研究開発費の比率をみてみます。これは、各国の経済規模に比して研究開発がどの程度活発に行われているのかを観測するために、使われる指標ですが、研究開発費を直接比較する場合とはかなり異なった状況が見えてきます。
 この指標では、日本が長らく世界1位だったのですが、2000年代に入ってから韓国の値が急速に上昇して2010年度に日本を追い越し、2011年度には4.0%で世界1位となっています。日本は3.7%で世界2位となっており、ドイツの2.9%、米国の2.8%がこれに続いています。
 先ほど見たように、この間、中国は研究開発費を急速に増加させているのですが、GDPも同様に急増しているため、両者の比には顕著な変化はみられず、2011年度の値は2.0%となっています。

 次に、各国の研究開発費が、どのような組織によって負担されているのかを比較してみます。
 まず日本ですが、2011年度における研究開発費の負担割合は、政府が18.6%、民間部門が81%、外国の組織が0.4%となっています。日本では企業が活発に研究開発支出を行うので、民間の負担割合が8割以上を占めているわけですが、その一方、政府負担割合が他の先進諸国に比して小さいということが政策課題として指摘されてきました。
 同じ頃の政府負担割合を諸外国についてみると、最も高い割合を占めているのはフランスの37%、これに次いで米国の32.5%、英国の32.3%、ドイツの29.8%となっています。中国と韓国の政府負担割合も、それぞれ24%、26.7%で、日本を上回っているのです。
 科学技術のための研究開発支出は、未来に対する投資としての側面を持っています。日本の政府による研究開発支出は、厳しい財政状況の中でも比較的、堅調に伸びてきたのですが、国際比較の観点に立って未来への貢献という価値を考慮すると、まだ応分の努力を行う余地が残されていると言えそうです。

 さて、政府の負担割合には課題が残されているとしても、日本の研究開発費は総額で世界3位、対GDP比で世界2位にあり、欧州諸国の水準を大きく上回っています。しかし、一方、前回みたようにイノベーション実現企業の割合では50%台に達しているドイツに大きく水を空けられ、フランスなどと同じく30%台のレベルにあります。この事態を国内市場の大きさだけでは説明できないとすれば、どう理解すべきでしょうか。例えば、研究開発を技術的なイノベーションに結ぶ付けるための効率を妨げる要因があるのでしょうか。
 研究開発関連統計は、この問題を分析する上での様々な手掛かりも与えてくれますが、ここではひとつだけ手掛かりになる指標を挙げておきます。

 これまで専ら研究開発費のデータをみてきましたが、研究者数においても、日本はかなり高いレベルにあります。2012年における日本の研究者数は84万人で米国、中国に次いで世界3位となっており、欧州諸国を大きく上回っています。ところが、研究者1人当たりの研究支援者の数では、日本は0.25人で、ドイツの0.67人、フランスの0.66人を下回ってしまうのです。この点は、日本の研究開発活動における支援体制の問題を示唆しています。

 イノベーションを促進する上での日本の課題は、無論、これだけではありません。次回からは、様々な課題をイノベーション・システムの全体像の中で捉えるために、各国のイノベーション・システムを比較してみたいと思います。


今回のまとめ:日本の研究開発に投入されている資源は、国際的にみても高い水準にありますが、研究開発費の政府負担、研究開発活動の支援体制などに課題が残されています。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ