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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > イノベーション関連統計の国際比較(その1) (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

イノベーション関連統計の国際比較(その1)

永田晃也 技術経営、科学技術政策

14/07/09

前回、イノベーションや研究開発の実態を統計的に把握する方法は、OECDによって国際的な標準化がリードされてきたという話をしました。OECDによって提起されたマニュアルに沿って、メンバー国は自国の調査を実施するよう勧告されています。それらの調査結果を合わせてみれば、イノベーションの実態に関する国際比較を行うことができるわけです。
 そこで今回から2回に分け、こうした統計調査のデータに基づいて、日本のイノベーションや研究開発の実態を国際比較の観点から概観してみたいと思います。

 前回ご紹介したように、日本では文部科学省の科学技術・学術政策研究所が、OECDのマニュアルに沿った「全国イノベーション調査」を過去2回実施しています。2006年から2008年までを対象期間とした第2回調査の結果によると、プロダクト・イノベーションとプロセス・イノベーションのいずれか、または両方を実現した日本企業は48.1%でした。
 一方、欧州諸国などでは、「共同体イノベーション調査」--Community Innovation Survey(CIS)という調査を定期的に実施しています。
 OECDは、17カ国のイノベーション調査の結果を集約して「企業におけるイノベーション」(Innovation in Firms)という報告書を2009年に刊行しています。この報告書では、CISに参加した国については、2002年から2004年を対象期間とする第4回調査結果を利用していますので、日本の第2回調査結果と比較する際には調査時点が異なる点に注意が必要です。

 さて、この報告書によると、イノベーションを実現した企業の割合が最も高い国はスイスとドイツで、いずれも56%台となっています、また、オーストリアとルクセンブルクでの実現割合は50%台で、これに次いで高くなっています。
 これに対して、日本でイノベーションを実現した企業は34.2%と報告されており、この値は諸外国の平均を下回っています。しかし、お気づきのように、この値は先ほど引用した日本の調査データとは14%ポイントも食い違っています。
 この違いは、国際比較を行うためにデータを補正することによって生じたものです。先に引用した48%というデータは、いわゆる単純集計結果であって、回答企業全体の中でのイノベーション実現企業の割合を示しており、回答企業の規模別にみた分布の偏りを補正していません。実際の企業の規模別分布では中小規模の企業が圧倒的に大きな構成比を占めているのですが、「全国イノベーション調査」の回答企業の中では、大企業の構成比がかなり大きくなっています。一方、イノベーション実現企業の割合は、中小企業よりも大企業の方が高くなっています。このため現実の企業分布に基づいて規模別のウエイトを考慮した集計を行うと、イノベーション実現企業の割合は、単純集計結果よりも低い値に補正されることになるわけです。
 技術的な方法は全ての国について同一ではありませんが、ここで参照している国際比較のための統計データでは、各国とも規模別や産業別にみた回答分布の偏りは、何らかの方法で補正されているとお考えください。
 その上で、もう少しこの国際比較データを見ると、イノベーション実現企業の割合が30%台である国の中には、フィンランドやイギリスの39%、オランダ、ノルウェー、フランスの32%があることが分かります。こうして見ると、日本の34%という値は、平均を下回っているものの、同じレベルのイノベーション実現状況にある国の中には、イギリスやフランスのような経済規模が比較的大きい国が並んでいることが注目されます。

 一般的に、多数の企業が参入している規模の大きい市場においてイノベーションを起こすことは、競合が少ない小規模な市場でイノベーションを起こすことよりも困難とみられます。ところで、このOECDの報告書にはアメリカが参加しておらず、比較可能なメンバー国の中では日本が最も大きな国内市場を抱えている国になっているのです。イノベーション実現割合にみられる日本のポジションの低さは、こうした事情を反映しているのではないかという見方もあります。
 実際、実現されたイノベーションの内容に分け入ってみると、自社にとって新しいだけではなく、市場にとって新しいプロダクト・イノベーションの実現割合では、日本は10%で最下位になっているのです。因みに、最も実現割合が高い国はルクセンブルクで27%、イギリスは19%、フランスは13%となっています。

 しかし、日本におけるイノベーション実現割合の低さは、国内市場の大きさだけでは説明できません。実現割合の高い国の中には、国内市場の規模が比較的大きいドイツのような国も含まれていますし、そもそも比較されている国の中には市場統合を行ったEUの加盟国が多く含まれているのです。
 したがって、このイノベーション実現割合の低さには、日本のイノベーション政策にとっての課題が示唆されていると見るべきでしょう。
 次回は、技術的なイノベーションを実現する上で重要な研究開発活動について、国際比較を行います。

今回のまとめ:日本の企業によるイノベーションの実現割合は、諸外国に比して低くなっており、国内市場の大きさだけでは説明できない政策課題を示唆しています。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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