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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 運転資本のコントロール (企業財務管理、国際金融/平松拓)

運転資本のコントロール

平松拓 企業財務管理、国際金融

14/06/24

前回は、運転資本は売上に応じて増減するために、事業計画策定などの際に十分な注意を払う必要があるというお話をしましたが、今回は、運転資本のコントロールについてお話します。

運転資本の大きさを左右する要因としては、売上の大きさ以外にも、業種や個々の企業のビジネス・モデル、製造或いは取り扱う商品の違いなどがあります。例えば、スーパーマーケットでは、販売はほとんどの場合現金即時払いで、しかも棚卸資産を抱える期間も短いですが、一方、仕入れは掛けで行われるため、キャッシュ循環サイクルは短く、運転資本は少額で済みます。逆に家具店などでは在庫期間が長そうで、その分運転資本が嵩みそうです。

ビジネス・モデルの違いの例としては、現金販売や現金仕入れを方針としている企業、或いは、JIT(Just In Time)システムの活用により在庫を極端に絞って、キャッシュ循環サイクルを短期化している企業などが挙げられます。パソコンをオーダーメードで販売するデル・コンピューターのビジネス・モデルでは、自社では在庫を持たずに、オーダーが入った時点で部品メーカーに対し発注するため、運転資本の負担が軽減されます。

運転資本が大きいということは、資金繰りの負担が大きくなりますし、また、収益率の低い運用が増えることになるので、その分の機会費用が大きくなります。また、直接的なコストだけではなくて、例えば在庫が増える場合には、保管費用や、陳腐化した在庫の処分費用なども増加します。また、売掛期間を延ばしたり、掛けでの販売を認める相手の条件を緩和すると、貸し倒れ件数や金額が増大するなど、間接的なコストも増すことになります。

だからといって、闇雲にキャッシュ循環サイクルを短期化させるなど、運転資本を削減すれば良いわけではありません。まず、製品在庫を圧縮すると、顧客に十分な選択肢が提供できなくなります。自動車販売で顧客の希望するカラーが揃わないといった例が分り易いと思います。また、部品や原材料の在庫を絞ると、仕入れが滞った場合に直ぐ生産停止に繋がりますし、発注の頻度を上げなければならないので、発注コストが嵩んだり、少量発注だと値引きが得られないといったデメリットがあります。売掛期間を短期化する場合は、値引き等の交換条件と組み合わせないと、顧客を失う可能性があります。一方、買掛期間を延ばすよう無理な交渉をすると、ベンダーが離れていく可能性があります。

つまり、運転資本については、それを絞ることにより生じるコストと、逆に増やすことにより生じるコストの間のバランス(トレード・オフという)により、最適な水準が決定されることになります。この最適バランスも業界により、そして個々の企業により、そして商品によっても異なってきます。

一方で、運転資本のコントロールは、角度の高いコスト削減策となることから、多くの企業は顧客やサプライヤーなども巻き込む形で、上記のトレード・オフの最適化を意識しながら、サプライチェーンを合理化するための様々な努力を積み重ねてきています。トヨタ自動車に始まったJust in timeシステムが今や多くのメーカーに当り前に見られるようになっていることなどが、その表われです。

しかし、同時に行きすぎた合理化の弊害も認識されるようになっています。極端な在庫の圧縮や、限られたベンダーへの集約化などの行きすぎが、東日本大震災やタイにおける洪水の際、日本企業への影響を拡大した可能性は否定できません。普段は認識されにくい「リスク」への備え、ということも考えておく必要があります。

運転資本のコントロール、即ち、運転資本の最適化は絞ることによるコストと増やすことによるコストのバランスで決まります。サプライチェーンの合理化はこのバランスを保ちつつの運転資本コストの軽減に有効ですが、同時に様々なリスクへの備えも必要です。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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