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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 運転資本、キャッシュ循環サイクル (企業財務管理、国際金融/平松拓)

運転資本、キャッシュ循環サイクル

平松拓 企業財務管理、国際金融

14/06/23

今回と次回の2回は運転資本の管理の話をします。
運転資本管理は地味で軽視されがちですが、キャッシュフローの管理上のみならず、仕入、在庫、販売戦略とも繋がる重要性を持っています。

皆さんは「運転資本」というと、どういうイメージを持っていますか?「資本」というからには、大きな企業の問題で、あまり身近なものではない、と思われるかもしれません。しかし、この「運転資本」、厳密には「正味運転資本」とも言ったりしますが、実は「運転資金」とほぼ同じと考えて良いのです。そう捉えると、ぐっと身近な感じがするのではないかと思いますが、「運転資本」とは企業が日々の事業を行っていくうえで必要となる資本(資金)のことです。

この場合の日々の事業とは、メーカーを例に挙げれば、原材料を仕入れて生産を行い、製品を販売すること、流通業などでは商品を仕入れて、またそれを顧客に販売するという、日常の事業のサイクルのことを意味します。原材料や商品を仕入れるためには現金が必要ですが、それは販売を行わないと回収できない、即ち、その間は資金の負担が生じる訳で、そのための資金が「運転資本」です。事業を行う場合には、それ以外にも、他に店舗を構えたり、機械設備を購入したり、或いは赤字を出せばその埋め合わせの資金も必要になったりします。しかし、それ等は日常に生じる訳ではない、或いは生じては困る訳で、運転資本には含まれません。

このことを会計に則してより具体的に言いますと、まず、企業が現金で原材料や商品を仕入れたとします。仕入れた原材料や品物は、商品として販売される迄の間、企業の中で棚卸資産として認識されます。購入に用いられた分現金の保有が減りますが、販売までは現金が回収されないので、企業に資金負担が生じているわけです。商品が現金で販売されて「棚卸資産」がなくなると、現金が回収される訳ですが、多くの場合には「掛け売り」、即ち後払いなので、会計上でいうところの「売掛金」の状態にとどまりまだ現金は入ってきません。

例えば皆さんが洋服の卸売業者だったとします。流行りそうな洋服を現金で仕入れました。それを付き合いのある洋品店に売り込み、何十着か買ってもらいましたけれども、その支払は月末ということになって、まだ、お金をもらえない状態、ということです。

この「売掛金」が回収されて初めて現金が戻ってくるわけです。つまり、それまでの間は現金が「棚卸資産」、「売掛金」に化けているわけです。反対に、仕入れについても必ずしも現金決済が行われるとは限りません。原材料、或いは商品を掛けで仕入れる場合には、現金での決済が行われるまでの間、会計上は買掛金として認識され、逆に企業にとって資金負担が猶予されている状態です。


つまり、企業にとっては、仕入れの代金決済をしてから販売代金の回収を行う迄の間、別の言い方をすれば、「棚卸資産」が立ち、それが「売掛金」として残っている通算の期間から、「買掛金」の立っている期間を差し引いた期間、資金負担が生じるのですが、この為に用いられている資金が「運転資本」という訳です。そして、運転資本の生じている期間を、キャッシュの支払から回収迄の期間という意味で、キャッシュ循環サイクルと呼びます。企業は運転資本を外部から調達しようとすれば、利息などのコストを払わねばなりませんが、一方、運転資本の運用である棚卸資産や売掛金の状態では運用益が得られる訳ではありませんので、運転資本が大きいほど、キャッシュ循環サイクルが長いほど、収益の圧迫要因になります。

こうした売掛金や棚卸資産、そして買掛金の大きさは、売上が大きくなるにつれて大きくなるのが普通です。業種や企業個々の違いもありますが、運転資本が売上の2~3割に上る企業も少なくありません。そのため、売上が急速に伸びている企業では、運転資本が急速に増加することになります。売上が急増しても、それに伴って手元に残る現金がそんなに急に増える訳ではありません。利益率は売り上げの数%にとどまるのが普通ですし、そうした企業では、往々にして設備の拡張など他にも資金の需要が生じます。その結果、企業にとって、売上が伸びている時には却って資金繰りが苦しくなりがちです。

実は倒産する企業の半数近くは黒字企業であるという調査結果もあり、その中には、売上の急増による運転資本の増加が倒産の原因となっているケースも含まれていると考えられます。つまり、企業の売上計画や予算を立てる場合、売上や利益ばかりでなく、運転資本の変化にも気をつけておく必要がある訳です。さもないと、積極的な営業努力が却って会社の資金繰りを危うくすることにもなりかねません。

最後にまとめとして、運転資本とは企業が日常業務を行う上で必要となる棚卸資産、売掛金などを賄うための資金のことですが、事業計画策定などの時に十分な注意を払わないと、資金繰り面での問題を生じることに繋がります。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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