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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 実質実効為替レート (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

実質実効為替レート

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

14/06/13

  今日は、正しい為替レートを探そう、という御話です。前回、為替レートは様々な要因で動くという御話をしましたが、その中でも最も重要なのは、購買力平価だ、という御話をしました。つまり、日本とアメリカで同じものが同じ値段になるような為替レートが正しいのだ、という考え方です。
  この考え方は、大筋では正しいのですが、実際には日本の方が高いものと日本の方が安いものがあります。たとえば自動車は日本の方が安いのでアメリカに輸出され、小麦はアメリカの方が安いので日本に輸出されている、という具合です。そうなると、輸出と輸入が等しくなるような為替レートが正しい、という事になります。
  実際には輸出と輸入だけではなく、海外旅行へ行ったり外国の銀行に預金している分の利子を受け取ったりしますから、そうしたものを全部合計した経常収支という統計がゼロになるのが正しい、という事になりそうです。
  しかし実際には、日本の経常収支は過去何十年もの間、黒字が続いています。それを考えると、もっとドル安円高になるのが「正しい」という事になります。一方で、途上国へ行くと、「何でも全部の物が日本より安い」と感じる事が少なくありません。それを考えると、今よりドル高円安になるのが「正しい」という事になります。つまり、理屈はわかっても、実際に正しい為替レートを求めるのは大変難しい、ということなのです。
  正しい為替レートはわからなくても、せめて過去と比べて今のレートがどうなのか、という事は知っておきたい、という事で考えだされたのが、実質実効為替レートというものです。名前は為替レートと付いていますが、「輸出の難しさを示す指数」だと思って下さい。
  日本は諸外国よりも物価上昇率が低いので、為替レートが一定であれば、時間が経過するとともに日本製品が外国製品に比べて割安になり、輸出が簡単に出来るようになっていきます。この指数が減って行くわけです。しかし、ドル安円高になると、日本製品が外国製品よりも割高になるので、この指数が増えて行きます。つまり、物価上昇率が低い分だけドル安円高になれば、この指数は変わりませんが、それ以上にドル安円高になると指数が増えてしまう、というわけです。
  実際の指数を計算するには、過去のある時点を100として、1%円高になったら100を101にします。外国の物価が3%上がったら101を98にします。日本の物価が1%上がったら98を99にします。この作業を毎月繰り返して行くのです。
ドルと円の関係については、アメリカと日本の物価上昇率を使いますが、それだけではありません。中国の通貨である人民元との関係も、中国と日本の物価上昇率を使って計算します。韓国やオーストラリアや、その他の貿易相手国との間も同様です。こうして計算した指数を、平均して実質実効為替レートを求めるのですが、その際には重要な貿易相手国とそうでない相手国の指数にウエイトをつけて平均します。たくさん貿易している相手国の通貨との関係を大切に考える、という事です。
  日銀が、2010年を100とする指数を発表していますから、これを見てみましょう。最近では70台で推移しています。2010年と比べると、1ドルは80円台から100円台に値上がりしています。これが主因です。ドルの値段が上がると、つまり数字が大きくなると、日本の輸出は楽になりますから、実質実効為替レートという名前の指数は数字が小さくなります。方向が反対に動くので、気をつけて聞いていて下さい。
  最近の指数は、過去30年で一番小さくなっています。これは、今の為替レートは過去30年間で一番輸出がしやすいレートだ、という事を意味しています。
  過去30年の為替レートを見ると、今よりドル高円安だった時期が遥かに長かったのですが、日本は物価上昇率が低いので、それも考えると過去に比べて輸出がむしろ易しくなっている、という事なのです。
  こうした事から、「過去の水準からすると今の為替はドル高円安の水準にあるから、ドル安円高に戻るだろう」と考える人が少なくないようです。
  しかし、そうとも言い切れません。為替レートからすると輸出が易しくなっているはずなのに、日本の貿易収支は最近赤字が続いているからです。火力発電所がフル稼働しているために燃料の輸入が増えている、という事や、日本企業が海外に工場を建てているので日本からの輸出が減っている、という事が理由として挙げられる事が多いのですが、中国や韓国の技術レベルが昔より遥かに高くなっているので、為替レート面では輸出が易しくなっていても、実際の輸出は易しくなっていない、という事も重要な理由だと思います。実質実効為替レートを計算する際には、こうした要因は考慮されていないのです。
  「貿易収支の赤字が続いているので、もっとドル高円安になるだろう」という人もいます。要するに、正しい為替レートというのは、なかなか判らないものなのです。だからこそ為替レートは時として大きく変動するのです。


まとめ: 正しい為替レートを求める事は困難です。外国と日本の物価が等しくなるのが正しいレートだ、というのは理屈ですが、いざ正しいレートを求めようとすると、難しいのです。過去との比較で為替レートが割安か割高かを計算する事は出来ますが、それで為替の先行きを予測する事も難しいのです。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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