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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 為替の変動要因 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

為替の変動要因

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

14/06/12

  ドルの値段、為替レートと言いますが、これがどのように決まるのか、考えてみましょう。最も重要なのは、日本とアメリカの物価水準が同じになるという事です。たとえば1ドルが1円だったら、アメリカの自動車や小麦やすべての物が日本より安いので、日本人が円をドルに換えてアメリカから自動車や小麦などを輸入するでしょう。そうなると、銀行にはドルを買いたい人ばかり集まって、売りたい人が来ないので、ドルは値上がりしていきます。1ドルが1万円だったら、今度はアメリカ人がドルを円に換えて日本から自動車や米を輸入するでしょうから、ドルを売る人ばかりになり、ドルは値下がりするでしょう。1ドルが100円くらいだと、アメリカ人は日本から自動車を買い、日本人はアメリカから小麦を買い、ドルの売り注文と買い注文が大体同じになるでしょう。こうした考え方を、購買力平価、と呼びます。ドルと円で買えるものが同じになる、という意味です。
  戦後、1ドルは360円でした。最近は100円前後です。これは、過去数十年のアメリカの物価上昇率が日本の3.6倍だったので、購買力平価が360円から100円に変化した、というのが基本的な考え方です。ドルの値段を非常に長い期間にわたって眺める時には、この考え方が基本となります。
  もう少し短い期間で見ると、貿易収支や経常収支が重要です。輸出が多いと、輸出企業が海外から受け取ったドルを円に換えて社員の給料を払ったりするので、ドル売り注文が増えて、ドルが安くなるのです。輸入が多かったり海外旅行をする日本人が多かったりすると、反対にドル買い注文が増えてドル高円安になります。
  日米の金利もドルの値段に大きく影響します。アメリカの金利の方が高いと、日本人が円をドルに換えてアメリカの銀行に貯金したりアメリカの国債を買ったりするので、ドルが高くなるのです。最近は、いつでもアメリカの金利の方が日本の金利よりも高いのですが、問題は金利の差です。金利の差が大きいと円をドルに換える人が増えますし、金利の差が小さいと減るのです。ドルを持っていると、ドル安円高になって損をするリスクがあるので、金利の差が小さければ円のままで持っていよう、という人が多いからです。
  アメリカの景気が良くなると、ドルが高くなります。「アメリカの景気が良くなると、アメリカの中央銀行であるFRBが金融緩和を止める。そうなるとアメリカの金利が高くなる。そうなると、円をドルに換える人が増えてドルが高くなる。」というわけです。
  市場参加者の噂や思惑も重要です。皆がドルが高くなると思うと皆がドルを買うので実際にドルが高くなり、皆が安くなると思うと皆が売るので実際にドルが安くなります。たとえば実際には米国の景気が良くなくても、「よくなりそうだ」という噂が流れると、「それならドルが高くなるだろう。今のうちに買っておこう」という人が増えるので、景気が良くなる前からドルが高くなります。
  更には、何も起きていなくても噂が流れるだけでドルの値段が大きく動く可能性が出て来ます。たとえば、バブル直前の1985年から87年にかけては、日本企業がアメリカに大量の輸出をしていて、アメリカの企業が赤字になって、アメリカ政府が怒っていました。そこで、「アメリカ政府は、日本企業がアメリカに輸出しなくなって欲しいと思っている。そのためには、もっとドル安円高にしたいと思っている」という噂が絶えず流れていました。アメリカ政府が本当にそう思っていたのかどうかはわかりませんが、そういう噂を信じた人がドルを売ったので、ドルの値段は実際に急激かつ大幅に下がりました。
  更に不思議なのは、東日本大震災の後にドルが安くなったことです。日本の輸出企業の工場が止まったり、復興のための資材の輸入が必要となったり、発電用の燃料の輸入が増えたり、ドルが高くなる要因はたくさんありましたが、ドルが安くなる要因はほとんどありませんでした。しかし、ドルは安くなったのです。「ドルが安くなる」という噂が流れたからなのですが、噂の出所ははっきりしていません。「神戸の地震の後にドルが安くなったから、今回もそうだろう」といった事だったようですが、何とも不思議なことです。
  このように、ドルの値段すなわち為替相場は、「皆が高くなると思うと皆が買うから実際に高くなる」という性質があります。その意味では株価と似ています。
  アベノミクスによる金融緩和が行なわれた時、「金融緩和でドルが高くなる」と考えた人が大勢いました。私は、その理屈は間違っていると思うのですが、とにかく多くの人がそう考えたのです。そこで、彼等がドルを買ったため、実際にドルは高くなりました。彼等の理屈が正しかったとは今でも思っていませんが、彼等が思った通りになったのです。
  余計なことですが、私もドルを買いました。理屈が正しいかどうかではなく、実際に多くの人がドルを買う事が予想されましたから、「彼等が買う前に買っておこう」と考えたわけです。為替や株で儲けるには、理屈より人々の行動を予想するべきだ、という事なのです。人々の行動を予想するのは難しいですが、今回は珍しく利益が出たというわけです。


まとめ: ドルの値段を決める要因には、購買力平価、貿易収支、経常収支、日米の金利差などがありますが、市場参加者の噂や思惑も重要です。皆が上がると思うと皆が買うから上がる、という事が為替市場では頻繁に起きるからです。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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