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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 日本の対外資産 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

日本の対外資産

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

14/05/20

家計の資産と負債について考えてみましょう。給料から生活費を引いた残りが家計の黒字で、その分だけ貯金が増える、というのが基本ですね。つまり、毎年の黒字額の合計が貯金の残高になる、というわけです。これが純資産です。持っている株が値上がりしたり値下がりしたりすると純資産は増えたり減ったりしますが、その話は忘れておきましょう。
家計の黒字赤字のほかに、大切なのは、借金で株を買う場合などです。借金も増えますが、資産も同じ額だけ増えますから、純資産は変わりません。つまり、資産は純資産と借金の合計額、という事になります。
日本国と外国の間の資産と負債についても、考え方は全く同じです。毎年の経常収支黒字の額だけ純資産が増えて行きます。日本はこれまで、経常収支が黒字でしたから、それが貯まって巨額の対外純資産となっています。2012年末の金額は296兆円となっていて、これは年間輸入額の3.6倍になります。日本人の大人一人あたり、約300万円という計算になります。負債は366兆円あります。資産は、これと純資産を加えた662兆円あります。
資産のうち153兆円は、「その他投資」という分類なのですが、これは日本の銀行と外国の銀行との間の貸借が主ですから、特別の意味はありません。残り509○兆円のうちで一番大きいのは証券投資で305兆円です。これは、外国の国債や株式などを日本の民間部門が持っている部分です。次に大きいのは外貨準備の109兆円です。これは政府の持っている外貨ですが、その多くは米国の国債など債権で運用されています。
直接投資は、90兆円あります。証券投資などに比べると少ないですが、最近急激に増えていますし、何よりも実際の経済に与える影響が大きいですから、注目度の高い部分です。これについては、後ほど御話しします。
負債は366兆円ですが、そのうち162兆円は「その他投資」で、銀行間の貸借りが主ですから、特別の意味はありません。残りの204兆円のうちでは、証券投資が181兆円と圧倒的に大きくなっています。直接投資は18兆円に過ぎません。
上に見たように、資産全体と負債全体を比べると、662兆円と366兆円ですから資産が1.8倍ありますが、直接投資だけを比べると資産が90兆円、負債が18兆円ですから、資産の方が5倍もあることになります。
直接投資というのは、外国に持っている会社や工場や不動産などの事ですから、日本人は外国に沢山会社などを持っている一方で、外国人が日本に持っている会社などは少ない、という事に成ります。これが良い事なのか否かは、判断の難しいところです。
日本企業が海外に工場を作ると、日本人を雇わなくなるので日本人の失業が増えてしまう、という心配をする人がいます。しかし一方で、外国の企業が日本に来ると、日本経済が外国企業に支配されてしまう、といった心配をする人がいます。どちらの心配も、ある程度はその通りですが、良い事もあるので、心配しすぎる必要はありません。特に、海外の企業が日本に工場を作ってくれれば、失業が減って日本経済が元気になりますから、むしろ有難いことだ、という考え方もあるでしょう。日本政府は、そうした考え方に立って、外国企業が日本に直接投資をしてくれるように、様々な働きかけをしているのです。
日本の対外直接投資の内訳を見てみましょう。地域別にはアジアが25兆円、北米が26兆円、欧州が22兆円と多くなっています。アジア向けは、製造業の比率が高くなっています。これは、賃金の安いアジア諸国で製造業が多くの人を雇って生産している事によるものです。最近では、アジア諸国の消費が伸びているので、消費地で作ろう、という動きも増えてきています。北米向けは、製造業と非製造業がバランスよく投資されています。欧米向けの製造業は、主に貿易摩擦を回避するための工場です。日本から大量に輸出をすると欧米諸国の政府から苦情が来るため、これを避ける目的で欧米での現地生産を行なっている、というわけです。欧米の非製造業は、金融保険業や不動産業が多くなっています。
中南米やオセアニア向けは、非製造業が多くなっていますが、これは資源開発のために鉱山を持っている事などが主な理由です。
対内直接投資については、金融・保険業が主で、製造業の比率は小さくなっています。製造業は日本が得意な分野ですから外国の企業が参入しにくい、という事が主因だと思いますが、長引く円高の時期には日本に工場を建てようという外国企業がいない、という事も理由の一つとなっています。また、日本の雇用慣行や企業文化などが国際的に見て特殊なので、進出してきた外国企業が戸惑う、という面もあると言われています。企業文化が欧米と日本では大きく異なりますから、終身雇用制や年功序列賃金制といった制度に進出してきた企業が戸惑うというだけでなく、従業員が悪い事をしかねない、という性悪説に立った欧米企業の社内規定に日本人職員が馴染めない、といった問題もあるようです。
消費者も、日本人は非常に厳しい目を持っているので、欧米の消費者に対応するのと同じように日本人消費者にアプローチすると、日本では成功しない、という面もあるようです。

まとめ: 日本は、過去の経常収支が黒字であったため、巨額の対外純資産を持っています。資産の多くは米国の国債ですが、対外直接投資も増えつつあります。一方で、外国から日本への直接投資は低水準にとどまっています。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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