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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 日本の経常収支 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

日本の経常収支

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

14/05/19

経常収支というのは、貿易収支、サービス収支、第一次所得収支、第二次所得収支を合計したものです。貿易収支は物の輸出から輸入を差し引いた差額のことです。サービス収支というのは、サービスの輸出から輸入を差し引いた差額のことですが、一番わかりやすいのは、海外旅行に行って外国のレストランで食事をすると、支払った代金がサービスの輸入となる、ということでしょう。貿易収支とサービス収支を合わせて貿易・サービス収支と呼びます。それは、貿易収支とサービス収支は、似ているからです。
自動車会社の社員であれレストランの社員であれ、日本人が働いて、その結果として外国人がいい思いをして、その代金を支払ってくれるのが日本の輸出です。反対に外国人が働いて日本人がいい思いをして、その代金を支払うのが輸入です。
貿易収支は、以前御話したように、赤字です。日本の製造業が海外に工場を建てるケースが増えていること、原子力発電所が止まっているために火力発電の燃料を大量に輸入していること、などが主な原因です。
サービス収支も赤字です。日本人が海外旅行に行く人数の方が外国人が日本に来る人数よりも多いことなどが原因です。
順番が少し変ですが、第二次所得収支というのは、昨年まで経常移転収支と呼ばれていたもので、日本が途上国に対して行なっている援助の事です。これも、当然赤字です。ちなみに、赤字というのは日本から御金が出て行っている、という事です。
4つ目の第一次所得収支というのは、昨年まで単に所得収支と呼ばれていたもので、海外から受け取った利子や配当と海外に支払った利子や配当の差額のことです。これは大幅な黒字になっています。黒字の理由は二つあります。
第一は、日本が過去に稼いできた黒字が海外に預けてあるので、日本全体としては外国に巨額の資産を持っていて、外国人が日本に持っている資産よりも遥かに多いのです。預けてある金額が多ければ、受け取れる利子や配当も多くなるのが自然でしょう。今ひとつの理由は、日本の金利は諸外国に比べて低いので、日本人が海外に預けてある預金などから受け取る金利は高い利率で計算されていて、日本が外国人から預かっているお金に対して支払う金利は低い利率で計算されているから、ということです。
貿易収支、サービス収支、第一次所得収支、第二次所得収支を合計したものが経常収支です。貿易収支、サービス収支、第二次所得収支はいずれも赤字ですが、第一次所得収支が大幅な黒字となっているので、経常収支は黒字となっています。
日本の経常収支は、リーマン・ショックまでは大幅な黒字でした。リーマン・ショックの後は、貿易収支の黒字が減り、東日本大震災以降、原子力発電所が止まったことで貿易収支が赤字になり、経常収支の黒字は大幅に縮小しました。最近も黒字は減り続けていて、月によっては赤字になることもあります。このまま行くと、年間を通して赤字になってしまうという人もいる程です。
経常収支は、家計簿の赤字黒字と似ています。貿易・サービス収支の輸出は、会社のために働いて給料を受け取っている部分です。貿易・サービス収支の輸入は、洋服を買ったりレストランで食事をしたりして支払いをしている部分です。第一次所得収支は、銀行預金の利子や持っている株の配当などを受け取っている部分です。第二次所得収支は、年末助け合いなどに募金した部分です。これらの合計が黒字であれば、財産が増えていて、赤字であれば財産が減っていることになるので、この数字は重要です。
貿易収支についても言いましたが、経常収支が赤字になる事自体は、それほど困ったことではありません。問題は、赤字になった理由です。
毎日忙しく働いている人が、自分へのご褒美として海外旅行に行ったため、家計が赤字になったというのであれば、楽しんだのですから、困ったと考える必要はないでしょうが、失業して給料がもらえなかったので家計が赤字だったのであれば、それは困ったことです。
経常収支も同じです。アベノミクスで贅沢品が売れるようになり、外国から宝石を買うので経常収支が赤字になった、というのであれば、構わないでしょう。国内で物が良く売れるので、輸出しなくても儲かっているという企業が多いのであれば、それも構わないでしょう。景気が回復し、失業者が減って来ているので、経常収支が赤字になったとしても、それほど問題だと考える必要はありません。
もっとも、遠い将来の事を考えると、心配な事もあります。これから少子高齢化で労働力が不足する時代になり、国内で作った物だけでは足りないので海外から輸入する、という時代が来るでしょう。そうなると、これまで稼いだ経常収支黒字を外国に預けてある資金を取り崩して輸入代金の支払いに充てる必要が出て来ます。経常収支の赤字が続くと、いつかは蓄えが底をついてしまうかもしれないのです。
しかし、日本には莫大な蓄えがありますから、これは小さな心配事だと考えてよいでしょう。少なくとも、経常収支が赤字になったら直に困った事が起きるという事はありません。何十年か先に困った事になる可能性がある、という程度の話ですから、頭の片隅にでもしまっておいていただければ十分だと思います。

まとめ: 日本は、貿易収支とサービス収支と第二次所得収支がいずれも赤字ですが、第一次所得収支が大幅な黒字であるため、4項目の合計である経常収支は黒字となっています。もっとも、過去に比べれば黒字は小さく、月によっては赤字になる事もあります。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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