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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > ビッグデータ (産業政策、通信政策、通信経済学/実積寿也)

ビッグデータ

実積寿也 産業政策、通信政策、通信経済学

14/05/05


ビッグデータが今日のトピックです。
ビッグデータとは、社会経済活動を通じて生成される様々な情報やデータを、進歩した情報通信技術の力を活用して、大量に集積したものです。企業や行政は、集めたデータを分析することで、異変の察知や近未来の予測を行い、利用者ひとりひとりのニーズに即したサービスの提供や、業務運営の効率化を行うことができます。あるいは、データを活かした新産業の創出なども期待できます。

ビッグデータの活用は、また、日本政府の政策でもあります。昨年6月に安倍内閣で閣議決定された世界最先端IT国家創造宣言では、「ビッグデータ利活用による新事業・新サービス創出の促進」が「目指すべき社会・姿を実現するための取組」のひとつとして掲げられています。

ところで、ビッグデータという言葉でまず念頭に浮かぶのは、グーグル、アマゾン、フェイスブックといったウェブサービス分野や、あるいは、携帯電話各社、さらには、スマートメータの導入が検討されている電力分野などですが、ビッグデータの活用範囲はそれらに限定されるものではありません。どの産業分野であっても膨大なデータは存在します。それを眠らせて置くことなく、積極的に活用することで、生産性を抜本的に高めることができるとともに、新たな付加価値を創出することが期待されています。

なかでも、医療・ヘルスケア分野は、データを活用する余地がきわめて大きな分野であると考えられており、雇用者数で500万人に達するわが国の医療・ヘルスケア分野で、ビッグデータを活用して生産性を高め、付加価値を創出することは、成長戦略にとっても重要なテーマです。加えてこの分野は、急速な高齢化が見込まれるわが国において、数少ない成長分野でもあります。

さて、医療分野でビッグデータを活用することで期待されるメリットの一つは、効率性改善効果です。これは、逆から言えば、現在の医療システムには非効率性があることを意味します。

医療システムにおける非効率性は、「医療行為を行う上で避けることができない本質的なもの」と、「医療行為にとどまらずビジネス一般に関連するもの」に大きく二分することができます。「医療行為を行う上で避けることができない本質的なもの」とは医療ミスに由来するものです。たとえば、「医療行為が不要な人に医療行為を施してしまう」という過剰診療に関して、経団連の21世紀政策研究所は、過剰診療を防止すれば、風邪だけでも1,800億円~2,000億円程度の医療費が削減できるという試算を紹介しています。同じように、「医療行為が必要な人に医療行為を施さないと決定してしまう」という過少診療でも経済コストは発生します。糖尿病患者に適切な治療を行わなかった場合、生涯医療費は平均の3.2倍になるという報告もあります。

治療段階のミスについてはさらに深刻です。この件について、米国では1970年代から研究が進められていますが、そこでの推計結果を2006年度のわが国に当てはめれば、医療ミスによって、病院コストについては790億円から1,203億円、外来診療については305億円程度のコスト増がもたらされていることになります。

こういった問題に対し、ビッグデータを活用することで、より正確かつ精密な治療行為の選択が可能になり、治癒効果の改善が期待できます。と同時に、過大あるいは過少な医療行為の発生を抑制することを通じ医療費の削減が期待されます。一方、患者にとっても、医療サービスに伴う経済的負担が軽減するとともに、治癒成績が改善することにより、QOL(Quality of Life)と呼ばれる生活の質的向上が実現できます。さらに、早期の職場復帰により、生産活動への貢献も可能となります。これまで存在しなかった効果的な治療手段・医療技術が実用化されることを通じた効率化による医療者および患者へのメリット、さらには新規産業の創出を通じた経済効果への期待も大きいです。

もう一つの非効率性、つまり、医療行為にとどまらずビジネス一般に関連する非効率性とは、ビッグデータの活用が不十分であるために、医療に関わるホワイトカラー業務が望ましい効率性水準を達成していないことに由来するものです。これについては、米国市場を対象にMcKinsey & Companyというシンクタンクが推計を行っていますが、その推計を2010年の日本市場に機械的に当てはめるとすれば、ビッグデータをうまく活用すれば最大で年間14.2兆円に相当する大きな経済効果が発生することになります。加えて、すでに存在する医療・ヘルスケア分野を効率化するだけではなく、新しい産業育成も期待できます。個人の健康情報・遺伝情報などによってテイラーメイド化された先進医療産業や遺伝子創薬産業などがその候補として想定されます。

このように強力なパワーをもったビッグデータですが、その分、利用する上で気をつけなければいけない点も多々存在します。なかでも、個人情報を取扱う場合に不可避なプライバシー問題に関しては、対象が医療情報であるだけに細心の配慮が求められることも事実です。本人が知らないところで悪用されたりすれば取り返しがつきません。ただ、一方で、超高齢社会に突入したわが国にとって、医療・ヘルスケアの効率性を改善し、その費用を抑制することは喫緊の課題でもあります。マイナス面に十分な配慮をしながらも、積極的にビッグデータを活用していくべきだというのが私の考えです。

今回のまとめ
ビッグデータの活用は、ウェブサービス分野や携帯電話産業、電力産業にとどまらず広範な産業で大きな経済的価値を生む可能性があります。しかしながら、その利用を促進するための政府介入のあり方は、市場メカニズムの存在を前提として慎重に構築される必要があります。

分野: 産業政策・通信経済学 |スピーカー: 実積寿也

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