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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > イノベーション・システム(2)「イノベーションの統計的把握」 (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

イノベーション・システム(2)「イノベーションの統計的把握」

永田晃也 技術経営、科学技術政策

14/05/29

前回は、「ナショナル・イノベーション・システム」という概念について解説しました。この概念の意義は、イノベーションを生み出す一国の制度的な仕組みを、企業、大学、政府といった個々のアクターの役割に対する部分的な理解に止まらず、それらアクター間の相互作用からなるものとして理解することにあります。
 提唱者の一人であるクリストファー・フリーマンは、1987年に刊行された著書の中で、この概念を日本のイノベーション・システムに対する理解に適用してみせました。日本のイノベーション・システムの特徴がどのように理解できるかという点については、いずれお話するつもりですが、今回は、そもそも一国のイノベーション・システムの特徴を把握する上での拠り所となる統計的な方法について説明しておきたいと思います。

 イノベーションを生み出す一国の制度的な仕組みをシステムとして理解するというアプローチは、次第に国際機関での政策論議に影響を及ぼすようになりました。OECD(経済協力開発機構)では、科学技術政策委員会の事業として1993年に「イノベーション・技術政策ワーキンググループ」を設置し、イノベーション・システムの分析や、システムを活性化させるための政策の検討などを開始しました。その検討の結果は、1999年に刊行されたManaging National Innovation Systemという報告書にまとめられています。この報告書の中では、例えばイノベーションに関する政府の役割については、研究開発費の総額を増加させるといった施策を講じることだけではなく、研究開発の効率性を妨げている要因--情報ネットワークの格差や、人材の流動性が不足している点などを、システム的欠陥と呼び、それらを是正することなどが提言されています。

 OECDでは、こうした検討と並行して、イノベーションに関する標準化された定量的指標の開発と、それに基づく各国のイノベーション・システムの比較を目的とするプロジェクトが推進されました。
各国間で比較可能な統計指標を整備するためには、調査統計で使用される用語の定義、調査方法、調査対象、調査単位、分類基準などを標準化しておかなければなりません。こうした標準化の課題は、統計指標の専門家会合で検討され、マニュアルとしてまとめられました。このマニュアルは最終案を決定した会合の開催地がノルウェーのオスロであったことから、「オスロ・マニュアル」と通称されており、第1版は1992年に公表されています。
 因みに、イノベーションを構成する主要な活動である研究開発については、イノベーション全体よりも早い時期に統計調査の標準化が行われており、そのマニュアルの第1版は1963年に公刊されています。こちらの方は、イタリアのフラスカチで開催された会合で最終案が決定されたため、「フラスカチ・マニュアル」と呼ばれています。

 OECDメンバー国は、これらマニュアルで勧告された方法に準拠して、統計調査を行うことが求められているわけです。
 日本では「フラスカチ・マニュアル」に準拠した研究開発関連統計は、総務省統計局が毎年実施している基幹統計調査である「科学技術研究調査」によって把握されています。この統計によって、例えば我が国の企業、大学、研究機関で支出されている研究開発費や、研究者数の規模が分かり、またそれを他の先進国と比較することもできるわけです。
 一方、「オスロ・マニュアル」に準拠したイノベーションの統計調査は、文部科学省の科学技術・学術政策研究所によって過去2回実施されてきました。この調査は「全国イノベーション調査」という名称で、その第2回調査は、2006年から2008年までの3年間を調査対象期間と、15,137社の企業を調査標本として抽出しています。有効回答数は4,579社、回収率は30%と報告されています。
 この調査で使用されているイノベーション活動の定義は国際的に標準化されているわけですが、それは次のように書かれています。すなわち「革新的な製品・サービスまたは業務の改善を目的としたプロセスの開発に必要とされる設計、研究開発、市場調査などの取り組みを指す」というものです。また、新製品の投入を意味する「プロダクト・イノベーション」と、新製法の導入を意味する「プロセス・イノベーション」の定義が与えられています。

 さて、第2回調査の結果によれば、調査対象期間の3年間にプロダクト・イノベーションのみを実現した企業は10.3%、プロセス・イノベーションのみを実現した企業は16.6%、両方を実現した企業は21.1%で、これらを合わせると48.1%、つまり全体の約半数の企業が、何らかのイノベーションを実現しています。
 次回は、こうした調査結果を具体的にみていきたいと思います。

まとめ:イノベーションや研究開発の実態を統計的に把握する方法の国際的な標準化は、OECDによってリードされてきました。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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