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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 英国における異文化(15):博物館と美術館 (英文法理論、コンピュータによる英語教育/鈴木右文)

英国における異文化(15):博物館と美術館

鈴木右文 英文法理論、コンピュータによる英語教育

14/05/12

「英国における異文化」というシリーズでお送りしてきましたが、15回目の今回は「イギリスの博物館と美術館」についてのお話です。

イギリスと言えば、まずロンドンを訪れる方が多いと思いますが、ロンドンには"定番"と言われる名所が数多くあります。今日はその中から3か所を取り上げ、日本との違いについてお話したいと思います。

今回注目する3か所は、「大英博物館」「ナショナルギャラリー」、そしてあまり有名ではないかもしれませんが「ヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアム(以下:ヴィクトリア・アルバート博物館)」です。
この3か所は、「外せない名所」と言われています。特に最初の2か所は「博物館の代表」、「美術館の代表」として取り沙汰されるところです。

「大英博物館」というと、皆さん様々な印象を持たれると思います。「大英帝国の時代に世界からかき集め、半ば強引に持ってきた品物だ」という言い方をしたりもしますが、今でこそ骨董的価値や歴史的価値のあるものが集められ、非常に壮大なコレクションになっています。
「ナショナルギャラリー」は絵画が専門で、特に中世以降の作品(私たちが一般的に絵画と言われて思い浮かべるもの)が展示されています。

どちらも"1日では見きれない"というようなことが様々なソースで言われています。
私も一度、大英博物館にどんな作品が展示されているのか、小走りしながら見るとどのくらいかかるかを試したことがありますが、2時間近くかかりました。時折足を止めたりしますので、そういった時間も含めたおおよその数字ですが、本当にきちんと見ようとすると、一週間程かかると言われています。ナショナルギャラリーも同様に、想像をふくらませながら鑑賞すると、大英博物館と同じくらいの時間がかかると思います。色々な枝葉を切り捨てて、自分の好きな所だけを何とか見たとしても、やはり数時間単位の時間がかかると言われています。
これらのいわゆる博物館・美術館の代表と言われている2つに共通する、日本と一番違うところと言えば、もちろん規模もずいぶん違いますが、なんといっても"無料で見られる"というところです。しかも、現地の人々だけでなく、外からやってきた我々のような人達も同じように"無料"と差別がありません。

日本でこれだけの収蔵量・コレクションを一般公開をしたら一体いくらになるでしょう。
おそらく、私であれば八千円や一万円などという値段を付けるだろうと思いますが、そこがイギリスと日本(あるいは欧米と日本と言ってもいいかもしれませんが)の考え方の違うところです。

以前、国民1人あたりのいわゆる文化予算、"国家の文化予算"がどのくらいあるのかを調査したことがあります。日本とイギリスでは、その予算額には大きな差がありました。細かなことは忘れてしまいましたが、例えば私の興味のある映画の分野で言うと、随分昔の話にはなりますが、当時日本が映画に関して支払う国家予算が年間一億円なかった頃、諸外国では年間数百億という予算がつけられていました。

このような違いがあると当然、美術館・博物館を無料で運営できるかどうかという点でも違いが出てくるわけです。ただし、もちろんイギリスでもご多分に漏れず苦しいので、寄付をくださいというようなことは随分言われるわけです。募金ボックスの中に世界各国の通貨のコインがたくさん入っていて、多くの人が寄付をしているように見せていますが、"見せガネ"と言うと申し訳ないですが、寄付への期待を込めて、博物館側の人が入れているというようなことも多い様です。それにしても、原則無料で行けるというのは、とても嬉しい話です。

"無料"というのは、ただお金がかからないから良いというだけではなく、"お金を払った分だけしっかり見なければ"と慌てる必要がないため、今日はここからここまでじっくり見ればあとはいつでも来られるから別の日に見よう、というこの「心の余裕」を生み出します。この「心の余裕」が美術・芸術に対する鑑賞の態度に大きな違いをもたらします。こういった点でも無料であるかどうかというのは、百円か千円かの差ではなく、とても大きな差があるのです。
日本でこれと同様のことをやろうとすると、税金を引き上げなければならなくなり難しいと思いますが、ここはひとつヨーロッパの良いところ、今回の話で言えば「イギリスの良いところ」だと思います。

もうひとつご紹介した「ヴィクトリア・アルバート博物館」は、中国の陶磁器などを中心にした美術品がとても充実している所です。ここは昔は有料だったのですが、途中で無料になりました。国家予算がつぎ込まれるようになったわけです。その背景にある考え方というのが、(イギリスの場合は特にそうなのですが)「国の所有物は国民の所有物である。国民の所有物を自分で見たい時に見るのは当然だろう」という考え方です。「国家がお金を取るのはおかしいではないか」という考え方が背景にあるわけです。特にイギリスの博物館・美術館というのは、お金持ちがコレクションでかき集めてきたけれども、"世の中に還元しよう""皆に見てもらおう"ということで私的に始めたものがベースになっていることが多いため、そういう思想からも繋がっている「無料政策」なのです。

もうひとつ驚くのは、その開放的な陳列の仕方です。東京ではガラスで囲われてしまうようなゴッホやミロの作品が、本当に手の届くところ、手が触れるような所に無造作に置いてあるのです。これがやはりイギリス、欧州のすごいところであり、芸術が身近になる所以です。

今日は、イギリスの博物館・美術館は無料で見ることができ、その背景には「国の所有物は国民の所有物であり、国民が自由に見ることが出来るべきだ」という考え方があること、非常に開放的で美術にふれるすばらしい機会が与えられているというこの2点についてお話しました。

分野: 異文化コミュニケーション |スピーカー: 鈴木右文

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