QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > イノベーション・システム(1)「ナショナル・イノベーション・システムとは」 (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

イノベーション・システム(1)「ナショナル・イノベーション・システムとは」

永田晃也 技術経営、科学技術政策

14/05/28

これから何回かに亘って、イノベーションが発生する制度的な仕組みをシステムとして捉えるということ、また、そのようにして捉えられたイノベーション・システムを国ごと、地域ごとに比較し、それらの特徴を理解するということについてお話してみたいと思います。はじめに、何故このようなテーマを取り上げるのかについて、触れておきます。

 この放送でも度々言及されてきたと思いますが、一般的にイノベーションとは、新たな価値の創出に結びつく「革新」を意味しています。その中でも、新しい製品の開発をプロダクト・イノベーション、新しい製法、工程の導入をプロセス・イノベーションと言い、これらを併せて「技術革新」と言っています。
 この他、イノベーションの中には、新たな市場の開拓、原材料などの新たな供給源の獲得、そして新たな産業組織の実現が含まれますが、特に技術革新は一国経済の発展の原動力になるものとして注目されてきました。
 しかし、かつて技術革新の源泉となる発明行為は、産業部門による経済活動の外部で、大学の研究者や個人発明家が行うものであり、またその意味で経済成長にとっては「外生的」な要因として捉えられていた時代が長く続いていたのです。
 先進国の大企業が、自ら技術革新を連続的に生み出していくために研究開発に組織的に取り組むようになったのは、戦間期--両世界大戦の間からとみられています。第2次世界大戦後、この取組は一層活発化しました。また、技術革新を効果的に経済成長に結び付けるための政策、すなわち科学技術政策が、先進国で策定・実行されるようになりました。
 こうして、一国においてイノベーションが生み出される仕組みは、企業、大学、政府という3つのアクターによるインタラクション(相互作用)として形成されることになったわけです。このようなインタラクションを全体像として捉えた概念が、「ナショナル・イノベーション・システム」(NIS)です。

 ここで「システム」という語が使われていることに注意してください。この語は、日常的に曖昧な概念で使われることも多いのですが、ナショナル・イノベーション・システムなどと言うときには、本来、「一般システム論」という科学理論によって提唱された重要な命題が踏まえられています。
 その一つは、「全体としてのシステムは部分的な要素の総和以上のものである」ということです。これは、部分に関する知識を寄せ集めるだけでは、全体を理解することはできないということを意味しており、「全体は部分に還元できない」(元となる部分に置き換え戻すことができない)という命題に言い換えられています。
 何故、そうなるのかと言うと、全体としてのシステムを構成している要素は、単に寄り集まっているのではなく、互いに作用を及ぼし合っているからです。つまり、イノベーションを生み出す一国全体の制度的な仕組みを「システム」として理解するということは、構成要素である企業、大学、政府といったアクター間の相互作用に着目する見方を踏まえているわけです。

 このような「ナショナル・イノベーション・システム」の概念は、1980年代の後半に、クリストファー・フリーマン、リチャード・ネルソンといったイノベーション研究者らに提唱されました。フリーマンは1987年に刊行された著書の中で、NISを「新しい技術の開発、導入、普及に関連する私的・公的セクターのネットワーク」と定義しています。
 ところで、このフリーマンの著書『技術政策と経済パフォーマンス』には、Lessons from Japan(日本の教訓)という副題が付けられているのです。フリーマンは、この著書の中で、自ら提唱した枠組みを、まず日本のイノベーション・システムを理解するために適用しました。それは、戦後イノベーションによって高度成長を達成してきた日本に対する関心の高さを反映していますが、同時に欧米の研究者にとって日本のイノベーションは、分析的なアプローチだけでは理解することが困難であったということも反映されていると言えるでしょう。

 長らくデフレ不況に喘いできた今日の日本の状況からみると、隔世の感がある話かも知れませんが、では日本のイノベーション・システムはかつて持っていた機能を失ってしまったのでしょうか。そうであるとすれば、イノベーションを創出するための新たな機能は、いかにして獲得できるのでしょうか。これからのお話の中では、こうした点についても考えていきたいと思います。

まとめ: 「ナショナル・イノベーション・システム」の概念とは、企業、大学、政府といったアクター間の相互作用からなるイノベーション・プロセスの全体像です。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ