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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 知的財産権(13)「経済連携協定の知財交渉項目(その1)」 (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

知的財産権(13)「経済連携協定の知財交渉項目(その1)」

永田晃也 技術経営、科学技術政策

14/04/15

 昨年から12回に亘って知的財産権に関するお話をしてきましたが、今回と次回では、知財に関する最近のトピックを取り上げてみたいと思います。
 現在、TPP(環太平洋経済連携協定)という経済協定が交渉されていることは、ご存じかと思います。
 TPPは、APEC(アジア太平洋経済協力会議)に属するシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国が2006年に締結した自由貿易協定を、より広域的な協定に拡大することを目的に、2010年3月に米国、オーストラリア、ペルー、ベトナムが加わって交渉が開始されたものです。同年10月にはマレーシアが参加し、その後、さらにカナダ、メキシコ、日本が交渉に参加することになりました。
 この協定は、物品の関税撤廃ばかりでなく、政府調達、競争政策、知的財産権、環境基準などに関する新しいルール作りを目指しており、その点で新興国ないし発展途上国の投資環境を向上させるものとして注目されてきました。
 しかし、交渉は容易に進まず、昨年12月と本年2月にシンガポールで開催された閣僚会合では大枠合意を断念し、決着が先送りされました。
 このように交渉が不調に終わった主な理由は、しばしば指摘されているように、日本が米国の要求する全農産品の関税撤廃に抵抗する一方、米国は自動車関税の撤廃時期の明示など日本の要求する事項に抵抗していることにあるわけですが、知的財産権をめぐる交渉項目について先進国と新興国が対立していることも、理由として挙げられています。
 では、どのような交渉項目が知財をめぐる論点となっているのでしょうか。

 伝えられるところによると、TPP交渉における知的財産関連の章では、知財の「国際消尽」というものを認めるか否かで、先進国と新興国が対立しているということです。知財の国際消尽とは、知的財産権の効力は、それを実施した製品が市場で販売された時点で消耗し尽くされているという考え方に立っており、そのため外国で販売された製品が、購入業者により正規代理店以外のルートで自国に輸入されても--これを並行輸入と言いますがー特許侵害には当たらないとする見方です。
 世界貿易機関(WTO)を設立するマラケシュ協定の付属書として、「知的財産権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS協定)というものが1995年1月に発効しているのですが、この協定の中では国際消尽に関する合意が形成されておらず、その扱い方は各国に委ねられています。このためTPP交渉参加国の中でも、例えば米国は並行輸入を禁止しており、シンガポールやニュージーランドは並行輸入を認めているといった相違が生じたのです。
 このような通商政策上の立場の相違は、自国の産業を保護する上で考慮すべき要因--例えば、独自の技術やブランドを構築できる企業が産業の主要な担い手になっているのかどうかといった条件の違いに起因するのですから、いずれの政策が正しいとか間違っているとか言えるものではないのです。ここに経済連携協定の交渉が常に難航する理由のひとつがあります。

 国際消尽は、総則に関するアジェンダに含まれるものですが、次に具体的な交渉項目をみておきましょう。
 やはり先進国と新興国・途上国の間で意見が対立している交渉項目に、医薬品関連のデータ保護があります。これも伝えられるところによると、新規医薬品のデータは5年以上、農薬化学品のデータは10年以上保護することが提案されています。しかし、治験データの独占を長期に亘って認めると、安価な後発医薬品の発売を遅れさせることになるため、このような交渉項目に対しては医療団体などが反対しています。
 かつてHIV感染症治療薬が高価であるため、アフリカの患者に使えないという事態が生じ、倫理的な問題となったことがあります。そうした事態が再び生じる可能性に鑑みれば、これも医薬品産業を保護しようとする観点からみれば良いも悪いもないと言って済ませられる問題ではないでしょう。
 矛盾したことを言っているように聞こえるかも知れませんが、ブランド品の並行輸入と医薬品の普及では、同じテーブルの交渉項目でも明らかに社会的なインパクトの次元が異なると私は思います。
 TPPは、その交渉項目の包括性ゆえに、こうした次元の異なる問題を同じテーブルで扱っているという点に注意を要します。これも、交渉が難航する理由のひとつとみてよいでしょう。
 次回、さらに具体的な交渉項目をみておきたいと思います。

今回のまとめ: TPPの交渉では、社会的なインパクトの次元が異なる多様な知財関連項目が扱われています。

分野: 知的財産 |スピーカー: 永田晃也

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