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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > グーグルによる東大発ベンチャーの買収(その2) (産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ/高田 仁)

グーグルによる東大発ベンチャーの買収(その2)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

14/03/27

【本文】
・前回は、東大発ロボット・ベンチャーSCHAFTをグーグルが買収し、それを経済産業省幹部が問題視しているという報道があったことについて話した。今日は、この問題についてさらに考えていきたい。

・ポイントは、国費を投じたにも関わらず、その企業が米国企業の手に渡るという事実をどう受け止めるべきかという点だ。

・納税者、あるいは経済産業省の視点からすると、「国の経済に貢献するという目論見で国費を投じたのだから、簡単に海外に流出してもらっては困る」という見方には一理ある。本来的には、日本で生まれた技術が日本国内で活用され、その結果、雇用が生まれ、納税されることが、国費を投じる際の期待として普通だ。

・一方、ベンチャー創業者としては、「国内で投資先を探したけれども資金調達が実現しなかったので、やむなく国境を越えて価値を認めてくれる投資企業を探した結果だ」と主張したいだろう。国内で「干上がって」しまうよりは、国境を超えて生存の道を探すべきという考えは、企業活動として至極真っ当だ。

・ここで、実は国費を投じた研究成果の取り扱いについて、日米で重要な法律の違いがある。それは、「バイ・ドール法」と呼ばれる法律だ。産学連携の分野ではよく知られている。バイ・ドール法のポイントは、「政府資金による研究開発から生じた発明について、その事業化の促進を図るため、(国は権利を主張せず)その特許権を発明者が所属する民間企業や大学等に帰属させる」というもの。

・かつては、国費を投じて得られた発明は国が所有していたのだが、それでは十分かつ柔軟な活用が図られないという理由で、米国では1980年に、日本では米国をモデルとして1999年に「日本版バイ・ドール規定」として成立した。

・この「バイ・ドール法」だが、日米でひとつ決定的な違いがある。米国のバイ・ドール法は、「ライセンスを受ける企業は、米国内で相当程度の生産活動を行わない場合、独占的な権利を持てない」という条件を付けているのだ(ただし、努力をしても米国内で生産するライセンシー企業を見つけられなかった場合などは、外国企業に独占権を与えることが可能)。つまり、米国のバイ・ドール法では、国費から得られた特許は、まずは米国内で活用させ、米国内の産業振興を図る(雇用や税収につなげる)ことが義務付けられているのだ。

・この点について、日本で「日本版バイ・ドール規定」の導入が検討された時期に、文部科学省や経済産業省でも「日本でも、米国と同様の条件を付す必要は無いのか?」という確認がされたが、最終的にそのような条件は付されなかった。

・では、仮に「日本版バイ・ドール規定」にそのような条件が付されていたら、SCHAFTのグーグル買収はどうなっていただろうか?グーグルが資金提供しなければ、SCHAFTの技術開発がそこで途絶えていたかもしれない。

・そもそも、近年益々影響を増す経済活動のグローバル化によって、技術拡散のスピードも加速している。そのような環境下で、技術を国内に留め置こうと努力しても、所詮時間の問題で、遅かれ早かれ技術は国境を越えてしまう。

・今回のグーグルによるSCHAFT買収が、世界で戦える実力を持つベンチャーのロールモデルとして広く知られ、そのような実力を発揮しようという意欲に燃える研究者や起業家が後を追うように出てくることのほうが、より大きく国益に資するのではないだろうか。

【今回のまとめ】
・経済活動のグローバル化が進んだ現在では、国費を投じた技術を国内に留め置こうとしても、限界があるだろう。むしろ、国費の投入によって優れた研究者やベンチャー企業が多数生まれ、彼らの活躍が人材育成や経済の裾野を広げる役割に期待するほうが望ましい。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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