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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 日本の貿易(総論) (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

日本の貿易(総論)

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

14/03/20

2008年にリーマン・ショックが起きるまで、日本の貿易収支は大幅な黒字が続いていました。かつては、日本が黒字を稼ぎ過ぎると言う事でアメリカなどから苦情を言われ、貿易摩擦として問題となっていた時期もあったほどです。日本製品は品質が良いので、若干割高でも世界中で人気があり、良く売れていたのです。
しかし、リーマン・ショックによって輸出が減り、黒字がほとんど無くなりました。輸出が減った理由は二つあります。第一は、外国の景気が悪くなって、外国人が物を買わなくなった事です。世界中で自動車が売れなくなったので、日本車の輸出も減った、というわけです。理由の第二は、リーマン・ショックによってドル安円高になった事です。ドル安円高になると、外国人から見て日本製品の値段が高くなったように見えますから、日本製品を買っていた外国人が米国などの製品を買うようになった、というわけです。
その後、2011年に東日本大震災があり、相次いで国内の原子力発電所の稼働が止まったため、電力各社は必要な電力を確保するために火力発電所をフル稼働させました。そのために天然ガスなどの燃料を大量に輸入したのです。そのための輸入代金が巨額に上ったことから、日本の貿易収支は赤字となりました。
貿易収支の統計は二つ出ています。一つは通関統計で、今一つは国際収支統計です。統計の作り方が若干違うので、数字も若干違うのですが、通関統計の方が内訳が詳しくわかるので、そちらを見てみましょう。2013年の輸出は70兆円、輸入は81兆円で、差し引きすると11兆円の赤字となっています。
11兆円と言われてもピンと来ない、という方は、一兆円というのは日本人の大人一人当たり1万円だと考えて下さい。日本人の大人は大体1億人いますので、割り算すると大体一万円になるのです。つまり日本は、大人一人当たり1年間に70万円輸出し、81万円輸入し、差額の11万円だけ貿易赤字だ、という事になります。
日本のGDPは480兆円ですから、輸出はGDPの15%弱という事になります。貿易立国と言われているわりには、高くないと感じる方もおられるかもしれませんが、四方を海に囲まれていている事を考えると、この比率は決して低くはないと思います。ドイツやフランスではこの比率がもっと高いのですが、ドイツとフランスは陸続きで通貨も同じですから、福岡県の産物を佐賀県で売ったら輸出になる、といった感覚で輸出比率を計算しているわけです。比べるわけにはいかないでしょう。
今後、再び貿易収支が黒字になるのか否かは、両方の説があります。「少子高齢化が進むと、日本は労働力が不足するので外国からの輸入が増えて、貿易収支は赤字が増えて行く」、という考え方もあります。もっとも、今の日本は失業が問題なので、すぐに製造業が人手不足になって必要な物が作れなくなる、といった事は考えにくいでしょう。「日本の製造業は海外に工場を建てているので、日本からの輸出は増えない。したがって貿易収支は黒字にならない」という考え方もあります。しかし、アベノミクスによってドル高円安になっていますから、海外で作るより日本で作った方が安く作れるものも増えているはずです。海外に工場を作る会社は減って来るでしょうから、いつかは輸出がまた増える、という考え方もあります。私は、いつか黒字になるような気がしています。
もっとも、貿易収支が赤字でも、その事自体が困った事だと考える必要はありません。第一に、日本は海外に莫大な資産を持っていて、そこから巨額の利子などが入って来ますから、貿易収支が赤字でもお金が足りないことは無いのです。これは国際収支統計の経常収支という数字をみるとわかるのですが、その話は後日あらためてすることにしましょう。
第二に、貿易収支の赤字は企業決算の赤字と違って、必ずしも困った事ではないのです。家計の赤字と同じです。仕事をしたいのに仕事が無くて、収入が無くて家計が赤字であれば、それは困った事です。しかし、たとえば一所懸命働いて貯金もしてきた人が定年で退職し、記念に海外旅行に行ったとします。当然家計は赤字ですが、それは困った事ではありません。その分だけ楽しい思いをしたのですし、貯金も充分残っているのですから、それは「よかった事」だと考えてよいでしょう。
日本の場合、輸出したいのに買ってくれる人がいないので、工場が動かせず、失業している人が大勢いるのであれば、それは問題です。リーマン・ショック後は、そういう状態でした。しかし今は、アベノミクスのおかげで国内での売上が伸びているため、輸出できなくても失業者は増えません。そうした時に、株高で潤った御金持ちが海外から高級品を買って貿易収支が赤字になったとしても、その事自体は困った事と考える必要はないでしょう。その意味では、貿易収支は赤字ですが、リーマン・ショック直後に貿易収支がゼロであった時よりも、今の方がはるかに「良い状態」だと考えてよいのです。

まとめ: リーマン・ショックまでの貿易収支は巨額の黒字でした。しかし、リーマン・ショック後に輸出が落ち込んだこと、東日本大震災以降、全国の原子力発電所が停止し、発電用燃料の輸入が増えたこと、などによって貿易収支は赤字になりました。最近の円安で貿易収支がどうなるか、要注目です。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

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