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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 知的財産権(12)「知的財産権と産学連携(その2)」 (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

知的財産権(12)「知的財産権と産学連携(その2)」

永田晃也 技術経営、科学技術政策

14/02/25


 前回は、知的財産権が産学連携において果たす役割について考えるため、米国に導入されたバイ=ドール法を取り上げました。この法律は、連邦政府の資金で大学が研究した結果、得られた特許について、大学への帰属を認めるもので、大学では、その特許を民間企業等に実施許諾し、ライセンス収入を研究費に還元させることが期待された訳です。しかし、米国のイノベーション研究者らが、その政策効果について行った分析の多くは、否定的な結果を示すものだったのです。今回は、日本での技術移転政策についてお話します。

 日本では、米国に約20年遅れて、類似の施策が導入されました。米国で盛んに政策効果の分析が行われていた頃です。1998年には「大学等技術移転促進法」が施行され、各地に大学の特許手続きなどを支援するTLO(技術移転機関)が設置されるようになりました。現在、政府の承認を受けたTLOは38機関あります。九大TLOと呼ばれる「産学連携機構九州」は、そのひとつです。
 1999年には日本版バイ=ドール法と呼ばれる「産業活力再生特別措置法」が制定されました。

 私は、日本版バイ=ドール法が制定される以前の90年代半ばに実施された調査データを用いて、日本企業による産学連携の実態を分析し、米国の調査データと比較したことがあります。その結果、日本企業が大学の知識をイノベーションに活用する頻度は米国企業よりも高いこと、特許ライセンスを介した大学からの技術移転の効果は米国企業と同様に限定的であることなどが分かりました。どのような方法が日本企業では重視されているのかと言うと、それは大学の研究者とのインフォーマルな情報交換なのです。しかし、インフォーマルな情報交換は、必ずしもイノベーションに結びつく方法にはなっていませんでした。一方、大学との連携がイノベーションに効果的に結びついているケースでは、既に成立している特許の実施許諾を受けるのではなく、まず共同研究契約が行われていることが分かりました。

 ところで、産学連携を阻む要因は、しばしば「死の谷」というメタファーを用いて語られてきました。これは、もともと企業の研究部門の成果をイノベーションに結びつける過程で発生する障碍について使われてきた表現ですが、要するに大学による研究成果は、企業によって実用化されるまでの橋渡しの過程で、しばしば死の谷に落ち込んでしまうというわけです。しかし、そもそも大学の知識を戦略的に活用しようとしている企業は、大学で生み出された知識が提供されるのを待っているわけではありません。そのような企業は、自ら大学の知識にアクセスしているのですから、「死の谷」などと言われても、おそらくピンとこないでしょう。

 さて、先に述べた分析結果からみると、日本に導入された技術移転政策も米国と同様に効果を持たなかったのではないかという点が懸念されるところです。しかし、日本のTLOは、特許による技術移転だけを行っているわけではありません。例えば、九大TLOでは包括的な地域連携に取り組んだり、独自の研究部門を発足させるなど、一種のシンクタンク機能を備えるに至っています。
 日本版バイ=ドールが制定されてから15年が経過しようとしている今日、日本でも技術移転政策の効果について本格的な実証分析が行われるべき時期に差し掛かっています。その評価プロセスで、日本のTLOによる独自の取り組みの成果が検証されることを期待したいところです。

今回のまとめは以下の通りです。
大学の知識を活用しようとしている企業は、大学からの技術移転を待っているのではなく、共同研究契約から戦略的に仕掛けています。

分野: 知的財産 |スピーカー: 永田晃也

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