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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 知的財産権(9)「企業の特許戦略(その3)」 (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

知的財産権(9)「企業の特許戦略(その3)」

永田晃也 技術経営、科学技術政策

14/01/29

前回は、特許出願戦略にも、競争戦略論で言うところの「ポジショニング・アプローチ」的な戦略と、「資源ベース・アプローチ」的な戦略があるという話をしました。前者は、競合他社が保有している特許を意識して特許出願を行う方法であり、後者は他社が容易に模倣できない特許群を構築するため、特定の技術分野に集中的な特許出願を行う方法ですが、このいずれが効果的な戦略になるのかは、製品技術の成長段階によって異なると言いました。まだ製品技術の標準が確立される前の流動的な段階では資源ベース・アプローチ的な出願戦略が効果的ですが、技術が安定した段階になると、逆にポジショニング・アプローチ的な戦略が効果的になります。
 したがって、製品技術の流動期から安定期までを通じて、自社製品の競争優位を持続させるためには、技術の成長段階の節目に特許戦略を切り換えなければならないわけです。けれども、戦略の切り換えは、そう簡単にできるものではありません。それは、いかにして可能になるのでしょうか。

 この点についても、私は以前、日本企業を対象に実施した質問票調査のデータを用いて分析を行い、ひとつの結論を得ました。それを一言でいえば、「戦略のダイナミックな切り換えは、知財マネジメントの集中と分散を同時追求できる組織によって可能になる」というものです。順を追って説明しましょう。
 企業の知財部門の組織構造には、いくつかのタイプがあります。例えば、ある組織タイプは、全社的な知財部門を持ち、それとは別に研究開発部門や事業部門にも独立の知財部門があるというものです。また、別のタイプは、知財部門が全社的な組織としてひとつあり、そこに所属するスタッフが研究開発部門や事業部門に配置されているという構造をとっています。一方、知財業務のスタッフは、全社的な知財部門にだけ配置されているという組織タイプもあります。これとは逆に、全社的な知財部門が存在せず、研究開発部門や事業部門の側に知財部門があるというタイプもあります。最後に、そもそも独立した知財部門は設置しておらず、他の部門、例えば法務部門などの業務の一部として扱っているというタイプもあります。
 こうした組織タイプごとに、特許戦略目標の達成状況を分析したところ、全社的な部門による知財の集中的な管理と、研究開発部門や事業部門ごとの分散的な管理が同時に行われている組織、つまり最初にあげた2つの組織タイプの目標達成度が、概して他の組織タイプよりも高いことが分かりました。
 こういう組織構造をとっている企業では、流動的な技術に関する特許ポートフォリオの構築は、技術分野ごとに細分化された部門が中心となり、成熟した技術分野での特許出願やライセンス交渉などの業務は、全社的なセンターが集中的に担当するということが行われているのです。そして、これらの部門間において、技術のライフステージの変化に応じて、対象とする技術分野が移管されているわけです。このように、知財マネジメントの集中と分散を同時追求できる組織構造を導入している企業では、概して特許戦略の柔軟な切り替えが可能になっていることが分かりました。

 流動的な技術分野で独自開発した技術について、その実施権を特許によって保護することは知財マネジメントの重要な課題です。そうした分野でいち早く特許を取得することは、技術分野ごとに高度に専門分化した組織が有利に進めるでしょう。しかし、単に特許によって競合の参入を排除することだけが、自社事業の自由度を高める結果をもたらすとは限りません。企業が事業を展開する上で必要とする特許は、全て自給自足できるとは限らないのですから、多くの要素技術が必要となる製品分野ほど、競合企業間で特許ライセンスを相互に提供し合うことも必要になります。これをクロス・ライセンスと言いますが、その契約を結ぶための交渉は、技術分野別の部門などがバラバラに行うより、全社的なセンターが担当した方が効果的に進められるでしょう。集中と分散を同時追求できる組織は、こうした課題にも柔軟に対応できるわけです。

次回は、技術の成長段階に応じた戦略の切り換えについて、もう少し具体的にみておきたいと思います。

今回のまとめ: 特許戦略の柔軟な切り替えは、知財マネジメントの集中と分散を同時追求できる組織によって可能になります。

分野: 知的財産 |スピーカー: 永田晃也

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