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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 知的財産権(8)「企業の特許戦略(その2)」 (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

知的財産権(8)「企業の特許戦略(その2)」

永田晃也 技術経営、科学技術政策

14/01/09

前回、特許戦略は事業戦略および研究開発戦略と一体のものとして立案・実行されるべきであるという話しをしました。企業は、ただ無闇に特許を取得するのではなく、どのような事業を展開するのかという構想と、その事業に関連する技術を創出するための研究開発に関する構想に基づいて、資産として取得・保有すべき特許を選択することになります。通常、事業が立脚するのはただひとつの特許ではなく、相互に関連する複数の特許であり、そのような特許群を選択的に取得・保有することを、特許ポートフォリオの構築と言っています。
 前回も述べたように、特許を取得する方法には、既に成立している特許を外部から獲得する方法もあるのですが、自社の事業戦略に沿って一貫した特許ポートフォリオを構築する上では、独自の研究開発によって創出した技術を特許出願することが主要な方法になります。
 この特許出願の方策については、他社との競合関係の中で自社の特許ポートフォリオの相対的な優位性を確保するための様々な手法が考案されています。例えば、自社製品を守る特許防護壁を構築するための「クラスタリング」と呼ばれる方策や、他社製品に対する特許包囲網を構築するための「ブラッケティング」と呼ばれる方策です。
 ただ、こうした個別の出願方策は、戦略というよりも戦術レベルのオプションです。こうしたオプションをあやまたずに選択するには、特許出願に関する基本的な方針が戦略として打ち立てられていなければなりません。では、特許出願戦略には、どのような考え方があるのでしょうか。
 私は、かつて日本企業を対象に実施した質問票調査のデータを用いて、企業が採用している出願方策のパターンを分析し、その背景に2つの異なる戦略指向が存在することを見出しました。興味深いことに、それらは競争戦略論において支配的な2つの考え方に似たものでした。
 ひとつは、他社が保有している特許との相対的な位置関係を考慮して、特許出願を行う戦略です。例えば、他社が基本特許を保有している場合には、周辺特許を出願することによって、それを封じ込めるという方策の背景にあるのが、この戦略指向です。これは、自社に有利な位置取りを行うことを競争戦略の要諦とする「ポジショニング・アプローチ」の考え方に似ています。
 もうひとつは、他社が容易に模倣できない特許ポートフォリオを構築するため、特定の技術分野に集中的かつ系統的に特許出願を行う戦略です。これは、他社に対する持続的な競争優位を、模倣困難な経営資源によって構築しようとする「資源ベース・アプローチ」の考え方に似ています。

 次に私は、いずれの出願戦略が企業にとって望ましい結果をもたらすのかを、製品技術の成熟度との関連を考慮して分析してみました。その結果、製品のドミナント・デザインと呼ばれる標準が確立する前の、技術が流動的な段階では、資源ベース・アプローチ的な出願戦略が有効である一方、いったんドミナント・デザインが確立し、技術が安定した段階になると、逆にポジショニング・アプローチ的な出願戦略が効果的になるということが分かりました。
 この結果は、技術が流動的な段階では、ポジショニングを行おうにも基準となる支配的な技術が存在しないため、自社技術を支配的にするための特許出願に集中することが望ましく、一旦、他社技術によって標準が確立した後では、自社技術に拘り続けるのではなく、技術標準との関係の中で自社に有利な技術領域に位置取りしていくことが望ましいということを示すものと解釈できます。

 このように製品技術の成長段階によって、望ましい特許戦略が異なるということは、企業が製品技術のライフサイクルを通じて技術的な優位性を持続させるためには、技術の成長段階の節目に特許戦略を切り換えなければならないということを示唆しています。果たして、そのような戦略のシフトが可能なのでしょうか。次回は、この点について考えてみたいと思います。

今回のまとめ: 特許出願戦略には2つの異なる戦略指向があり、いずれが望ましい結果をもたらすのかは、製品技術の成熟度によって異なります。

分野: 知的財産 |スピーカー: 永田晃也

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